2022.02.14

中国【中国】陳弁護士の法律事件簿／第55回「値札の付け間違いを理由にタイムセール商品の発送を拒否できるか」

【中国】陳弁護士の法律事件簿／第55回

『値札の付け間違いを理由にタイムセール商品の発送を拒否できるか』

年に1 度のタイムセール祭りにあたって、李さんはあるブランドの高級な掃除機を購入するつもりであり、その晩、幸運に恵まれ、1999 元に値する集塵機をたった169.9 元でオンライン注文できた。しかし、商品はずっと発送されない。最初に李さんは「オーダーが多すぎたため、人手不足が起きているのではないか」と判断し、発送を催促した。

店は「タイムセール祭りにより臨時に雇用した店員が、ネットワークプラットフォームの操作に不慣れで、値札を間違えた。補償として、利用制限のない100 元のクーポンを与える。」と返事した一方、李さんに対して自主的に注文を取り消すよう求めた。李さんはこれを拒否し、依然として注文した商品の発送を要求した。

『分析』：

1、李さんの注文は有効で、店は注文の通りに発送しなければならない。
『中華人民共和国電子商取引法』第49 条には、「電子商取引事業者が掲載した商品又はサービスの情報が申し込みの条件を満たし、ユーザーが当該商品又はサービスを選択し注文に成功した場合、契約は成立する。」と規定している。李さんが注文した掃除機のウェブページには掃除機の価格、数量、仕様、機能、外観が詳しく表示されていることからして、注文成功、契約成立になる。店は注文による拘束を受け、注文の通りに掃除機を発送すべきである。

2、店は「真実の売価ではない」ことを理由に、注文取り消し・発送拒否をしてはならない。
『民法典』第577 条には、「当事者の一方が契約上の義務を履行せず、又は契約上の義務の履行が約定に合致しない場合は、履行の追完、救済措置の実施、又は損害賠償などの違約責任を負わなければならない。」と規定している。李さんと店との掃除機売買契約が成立した後、売主である店は掃除機を引き渡す義務を負うものとし、「値札の間違いで、真実の意思表示ではない」ことを理由に、李さんに注文取り消しを要求してはならない。

3、店が「重大な誤解」を理由に注文を取り消す場合は、必ずしも裁判所に認められるとは限らない。
「王さんがあるネット通販プラットフォームを訴える紛争案件<(2019)京0491 民初37237 号>」において、買主である王さんは、あるネット通販プラットフォームにより、700 元以上の書籍を49.9 元で買えた。その後、店は王さんの同意を得ずに、運送中の書籍を強制的にリコールした。王さんは訴訟を提起し、店に違約責任を負うよう請求した。店は「店員の操作ミスで値札のつけ間違えとなった。」ことを主張し、商品仕入れのコストテーブルを提示し、反訴で注文取り消しを請求した。
裁判所は、「重大な誤解とは、行為者が行為の性質、相手方当事者、目的物の種類・品質・仕様・数量などに対して誤認識を持ち、これによって行為の結果と自分の意思が一致せず、大きな損失をもたらすことを指す。操作ミスによる値札のつけ間違いという店の主張は重大な誤解に該当せず、双方間の書籍売買契約は取り消し可能な契約に該当しない。」と認定した。

以上のことから、掃除機の店は値札のつけ間違いの場合に、重大な誤解を理由に、裁判所又は仲裁機関に対して注文取り消しを請求することができる。しかし、法律では重大な誤解に対して厳格な制限を行っている。成立した注文の無断取り消しが可能な場合は、取引の不確定性は大きくなる。従って、紛争を減らすために、店は商品の情報を掲載するときに、仕様・品質・価格に対して厳格な設定を行うべきである。
 
【直近記事】
〇陳弁護士の法律事件簿第52回「外相投資企業が投資総額を設定する必要の有無」
○陳弁護士の法律事件簿第53回「実行すべきセクハラ防止対策」
○陳弁護士の法律事件簿第54回「出前の食品に異物混入を発見した場合は誰を被告とすべきか」

前のページへ戻る