2026.08.31
- 【日本】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第39回/「インド側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ⑧)

- 【日本】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第39回/「インド側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ⑧)
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◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報をシリーズで皆様にお届けします。
「日本からの輸出」応用編⑦(対インド輸出) −インド側での留意点−
⑴ 輸入規制の全体像
インドの輸入規制の基本法は、1992年インド対外貿易(開発及び規制)法(Foreign Trade (Development and Regulation) Act, 1992)であり、これに基づきインド商工省(Ministry of Commerce and Industry)傘下の対外貿易総局(DGFT:Directorate General of Foreign Trade)が「外国貿易政策」(FTP:Foreign Trade Policy、現行は2023年4月1日発効のFTP 2023)を制定・運用しています。FTP及びこれに付属するITC(HS)品目表(Schedule I:Import Policy)では、HSコードごとに、①自由(Free)、②制限(Restricted:DGFTの輸入許可(Authorisation)が必要)、③禁止(Prohibited)、④STE品目(State Trading Enterprise:指定されたState Trading Enterpriseを通じた輸入に限定される品目)の4類型に区分されています。
⑵ 輸入規制品目への該当性の確認
輸入規制品目への該当性は、品目名だけでなく、HSコード、材質・成分、用途・機能、仕様及び原産地を前提として確認するのが基本です。DGFTのウェブサイトでは、ITC(HS)コードから輸入政策区分を検索することができるほか、品目によっては所管官庁ごとの許可・登録要否も併せて確認する必要があります。
⑶ 監督官庁
インド側の輸入管理は、一つの官庁だけで完結するものではありません。DGFTが輸入政策の中心を担う一方、通関実務は財務省歳入局傘下の中央間接税関税庁(CBIC:Central Board of Indirect Taxes and Customs)及び各地の税関が担当します。これに加え、工業製品の規格認証はインド規格局(BIS:Bureau of Indian Standards)、食品はインド食品安全基準局(FSSAI:Food Safety and Standards Authority of India)、医薬品・化粧品・医療機器は中央医薬品基準管理機構(CDSCO:Central Drugs Standard Control Organisation)、為替関係はインド準備銀行(RBI:Reserve Bank of India)というように、品目・分野ごとに所管官庁が分かれています。
2 輸入品目規制
インドの輸入品目規制は、「輸入そのものが禁止されるもの」と、「条件付きで輸入できるもの」とに分かれます。そして、条件付きで輸入できるものの中には、DGFTの輸入ライセンス(Authorisation)が必要なものと、所管官庁の登録・認証・検査が必要なものがあります。
⑴ 主な輸入禁止品目
FTP及びITC(HS)品目表上、輸入が禁止される品目としては、牛肉及び牛肉を含有する製品、一定の象牙その他の野生動植物由来製品(なお、ワシントン条約対象品については、対象種・附属書等に応じて輸入禁止又は許可制等の規制が適用されます。)、電子タバコ等の電子ニコチン送出システム、処分目的の一定の有害廃棄物等が挙げられます(同じ有害廃棄物であっても、リサイクル・再利用目的の輸入は認められる場合があります)。また、パキスタンを原産地とする物品又はパキスタンから輸出される物品については、直接・間接の輸入又は通過(transit)が、原則として禁止されています。個々についての該当性の有無は、品目名やHSコードだけでなく、材質・成分、用途、仕様及び原産地・積送地等により確認することが重要です。
⑵ 主な輸入制限品目(要ライセンス)
代表例として、一部の農産品(コメ・小麦・豆類等については、品目・時期等に応じ輸入制限が設けられることがあり、国内需給事情等により政策変更が頻繁な分野です。)、一定の有害化学物質、種子・植物材料、金・銀等の貴金属、一部の武器・弾薬類似品等については、DGFTの輸入ライセンス(Authorisation)を事前に取得しない限り輸入できません。中古・使用済みタイヤも一律に禁止されるわけではなく、用途・状態・HSコードに応じて、Restricted(Authorisation要)として扱われる場合や、環境関係法令上の規制対象となる場合があり、個別の確認が必要です。また、ノートパソコン、タブレット、オールインワンPC、Ultra Small Form Factor Computer、サーバー等(HSコード8471関連品目)は、現在も政策区分上「制限」(Restricted)に分類されており、輸入に当たっては、個別の従来型ライセンス申請に代えて、DGFTの「輸入管理システム」(IMS:Import Management System)を通じた「輸入認可」(Import Authorisation)の取得が必要です。認可の申請受付期間・有効期限は年度ごとに定められる運用であるため、単なる事前登録で足りると誤解せず、輸出の都度、その時点でのIMSの運用を確認する必要があります。なお、これらの品目は、別途、2012年インド電子・情報技術製品(強制登録要件)命令(Electronics and Information Technology Goods (Requirement for Compulsory Registration) Order, 2012)に基づくBISの強制登録(後記3のCRS)の対象でもあり、DGFTのIMS認可とBIS登録は、いずれか一方で足りるものではなく、双方を満たす必要がある点にも注意が必要です。
⑶ 中古品の輸入
インドでは、中古資本財は、FTP上、原則として「自由」に輸入できる取扱いとされています。もっとも、これは輸入自体が自由という政策区分の話であり、これとは別に、通関に際しては、原則として、輸出国における検査を経て、輸出国の公認エンジニア(Chartered Engineer)又はこれに準ずる専門家が発行する検査・評価証明書の提出が必要とされます。また、FTP上の「自由」の原則にも品目による例外があり、デスクトップパソコン、一定のリファービッシュ品(PC・ノートパソコン部品を含む。)、エアコン、ディーゼル発電機等は「制限」(Restricted)品目とされ、インド規格局(BIS)の強制登録スキーム(CRS:Compulsory Registration Scheme)対象となる中古電子・IT製品は、輸入認可に加えCRS適合も別途必要で、これを満たさない場合は禁止(Prohibited)として扱われ得ます。中古自動車については、年式・排ガス基準・輸入港の限定・高率関税等の観点から極めて厳格な要件が課されており、事実上、通常の商業ベースでの中古車輸入は困難です。中古品を輸出しようとする場合には、品目ごとの規制を事前に確認することが不可欠です。
3 強制規格認証制度(BIS登録・QCO)
インド向け輸出において近時特に重要性を増しているのが、インド規格局(BIS)による強制認証制度です。2016年インド規格局法(Bureau of Indian Standards Act, 2016)に基づき、電気・電子・IT製品については、2021年インド電子・IT製品(強制登録要件)命令(Electronics and Information Technology Goods (Requirement of Compulsory Registration) Order, 2021)に基づく強制登録スキーム(CRS)により、対象品目ごとにBIS登録を経なければ輸入・販売ができません(ノートパソコン等、現行の対象品目リストは随時更新されます。)。これに加え、近年は品質管理命令(QCO:Quality Control Order)により、鉄鋼製品、化学品、繊維製品、玩具、家電製品、建材等、幅広い分野で対象品目が急速に拡大しています。もっとも、品質管理命令による強制認証化の内容は品目ごとに一様ではなく、当該品質管理命令が指定するBISの適合性評価スキーム(製品認証、登録、適合証明等。スキームI・II・IV・X等)に従い、所定のBISライセンス・登録又は適合証明等を取得し、製品にStandard Mark(多くの場合ISマーク)を表示することが求められます。一律に「ISマークの取得」とのみ理解せず、対象の品質管理命令がどのスキームによっているかを確認する必要があります。品質管理命令は追加・改正が頻繁であるため、該当性はBISのウェブサイト等で都度確認する必要があります。「禁止品目でないからそのまま送れる」と考えるのではなく、規格認証規制の対象であるかどうかを必ず確認する必要があります。
4 個別の品目ごとの留意点
⑴ 医薬品・医療機器・化粧品
医薬品をインドに輸入する場合には、1940年インド薬事・化粧品法(Drugs and Cosmetics Act, 1940)及び1945年インド薬事規則(Drugs Rules, 1945)に基づき、原則として、対象医薬品及び外国製造所についてRegistration Certificate(Form 41)を取得した上で、CDSCOから輸入ライセンス(通常の医薬品についてはForm 10、Schedule X対象医薬品についてはForm 10A)の発給を受ける必要があります。申請は、インド国内の認可された代理人等を通じてSUGAMポータル上で行われます。これに対し、医療機器については、2017年インド医療機器規則(Medical Device Rules, 2017)により、リスクに応じてクラスA(低リスク)からクラスD(高リスク)に分類されており、輸入については原則としてForm MD-14により申請し、Form MD-15の輸入ライセンスを取得します(医薬品用のForm 10等とは別のフォームです。非滅菌・非計測の一部クラスA機器等は、より簡易な手続で足りる場合があります。)。化粧品については、2020年化粧品規則に基づき、CDSCOに所定の様式による申請を行い、輸入登録証明書(Import Registration Certificate)の発給を受ける必要があります。いずれも、通関手続とは別に、インド国内での製品登録及び現地パートナーの確保が実務上重要です。
⑵ 食品
加工食品をインドに輸入・販売するには、2006年インド食品安全基準法(Food Safety and Standards Act, 2006)に基づき、輸入者がFSSAIのFood Business Operator(FBO)として、Importer categoryのCentral Licenceを取得した上で、輸入通関時にはFood Import Clearance System(FICS)を通じてFSSAIの審査・クリアランスを受ける必要があります。輸入食品は、FSSAIが定める規格・添加物基準に適合していることに加え、原則として、輸入時点において、賞味期限の60%以上又は賞味期限まで3か月以上のいずれか短い期間に相当する残存賞味期限を有していることが求められており、これを満たさない食品は通関段階でのNo Objection Certificate (NOC)取得が困難になり得ます。表示についても、原産国、輸入者名・完全な住所、成分表示、FSSAIのロゴ及びライセンス番号等につき、原則として英語又はヒンディー語による表示が求められます。
5 表示規制(Legal Metrology)
予め包装された商品(Pre-packaged Commodity)をインドで販売する場合には、2009年インド計量法(Legal Metrology Act, 2009)及び2011年計量(包装商品)規則(Legal Metrology (Packaged Commodities) Rules, 2011)の規則第6条等に基づき、輸入者の名称・住所、商品の一般名称、正味量、製造、包装又は輸入の月及び年、最高小売価格(MRP。すべての税を含む価格)、単位販売価格(適用される場合)、原産国、消費者相談窓口等、所定の事項を包装に表示することが義務付けられています。これらの表示は、輸入品について認められる追加表示(stickering等)の取扱いも踏まえ、所定の時点までに適切に付されている必要があり、表示の欠如・不備は通関又はインド国内での販売上の支障につながり得ます。なお、産業用・機関向け消費者向けの物品等、同規則上適用が除外される場合もあるため、対象品目該当性を個別に確認する必要があります。
6 通関手続きの留意点
インドで輸入を行う事業者は、あらかじめDGFTから輸入者輸出者コード(IEC)の発給を受けている必要があります。通関申告は、CBICが運用する電子的な通関システム(ICEGATE)を通じて、輸入申告書(Bill of Entry)を提出することにより行われます。通常、インボイス、パッキングリスト、船荷証券又は航空貨物運送状、必要に応じた輸入ライセンス・登録証明書、原産地証明書等の提出が求められます。
インド税関は、リスク管理システム(RMS:Risk Management System)により申告データを自動的に評価し、書類審査のみで引取りが認められる貨物と、現物検査を要する貨物とに振り分けています。認定事業者(AEO:Authorized Economic Operator)の認定を受けた輸入者は、通関手続の簡素化・迅速化等の便益を受けることができます。もっとも、輸入手続は輸入者又は通関業者が行うのが通常であり、日本側の輸出者としては、インボイス上の品名、材質・成分、数量、価格、原産地、型番、仕様等を正確に記載し、梱包明細書・運送書類・許認可書類等との間に不整合が生じないようにすることが重要です。
7 関税制度と日印CEPAの活用
インドの輸入関税は、大きく分けて、①基本関税(BCD:Basic Customs Duty)、②社会福祉税(Social Welfare Surcharge:原則としてBCD額の10%相当。品目・免税措置により減免される場合があります。)、③統合物品サービス税(IGST: Integrated GST:)から構成されます。基本関税は、関税評価関係法令(Customs Valuation Rules)に基づく課税価格(Assessable Value。実務上はCIF価格を基礎に算定されることが多い金額)を課税標準として計算され、IGSTは、原則として当該課税価格に基本関税等を加算した額を課税標準として、国内のGST税率に対応した税率により計算されます。品目によっては、これらに加えてアンチダンピング関税、相殺関税又はセーフガード関税等の貿易救済措置が課される場合があるため、対象品目・原産国について、インド貿易救済総局(DGTR:Directorate General of Trade Remedies)の指定状況を確認する必要があります。
他方で、日本とインドの間では、、2011年8月に発効した日印包括的経済連携協定(CEPA)を活用することができ、対象品目については関税の削減・撤廃を受けることが可能です。CEPAを利用して特恵税率の適用を受けるには、経済産業大臣の指定発給機関である日本商工会議所が発行する第一種特定原産地証明書の添付が必要です。もっとも、品目によってはCEPA特恵税率よりも、その時点で適用される最恵国待遇税率等の方が低い場合もあり得るため、輸出の都度、最も有利な適用税率を確認することが実務上重要です。
8 その他
⑴ 為替決済(FEMA)
輸入代金の対外送金は、1999年インド外国為替管理法(FEMA:Foreign Exchange Management Act, 1999)及びRBIの関連規則(Master Direction)に基づき、原則としてインド国内の認可代理銀行(AD銀行)を通じて行われます。通常の貿易決済は概ね自由に行うことができますが、前払送金については、金額・輸入品目・取引条件等に応じ、AD銀行から銀行保証状・取消不能信用状の提出その他のリスク軽減措置を求められる場合があり、具体的な要件はRBIのMaster Directionの改定により変動し得るため、案件ごとに最新の内容を確認する必要があります。
⑵ 電子廃棄物・拡大生産者責任(EPR)
電気電子機器について、自己ブランドでの上市等により2022年インド電子廃棄物(管理)規則(E-Waste (Management) Rules, 2022)上の「生産者(Producer)」に該当することとなる輸入者は、中央汚染防止委員会(CPCB:Central Pollution Control Board)が運営するポータルにおいて拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)登録を行う必要があります。単に電気電子機器を輸入するというだけで一律に登録義務を負うわけではなく、自らが同規則上の生産者に該当するかどうかを確認する必要があります。同様に、プラスチック包装材を用いる場合には、プラスチック廃棄物管理規則に基づくEPR登録も問題となり得ます。
⑶ ATAカルネ(一時輸入制度)及び越境EC
インドは、ATAカルネ制度を導入しており、インド商工会議所連盟(FICCI)が発給・保証団体として運用しています。商品見本、展示会出品貨物及び一定の職業用具等、条約及びインド国内実施規則上認められた範囲の物品を一時的にインドに持ち込む場合には、ATAカルネを利用することで、関税等の担保提供なしに一時輸入が可能となります(同一状態での再輸出が条件です。)。
他方、インドでは他国のような広範な少額免税制度は存在せず、商業目的の貨物は、原則として価額の多寡にかかわらず通常の関税・IGSTの対象となります(宅配便・郵便・贈答品・見本品等については、別途個別の規制・限定的な免税枠があるため、個別の確認が必要です。)。また、電子商取引プラットフォーム上で商品を販売する場合には、2020年インド消費者保護(電子商取引)規則(Consumer Protection (E-Commerce) Rules, 2020)等に基づき、購入前の画面において原産国その他所定の情報を表示することが義務付けられています。
9 まとめ
以上のとおり、インド向け輸出では、まず物品の名称、材質・成分、用途・機能、仕様及び原産地を確認した上で、HSコードを特定し、DGFTのITC(HS)区分並びにBIS・FSSAI・CDSCO等の所管官庁の個別規制の適用の有無を確認し、その上で通関書類及び表示規制への対応を整える、という流れが基本になります。もっとも、インドの輸入規制は、HSコード単位での例外や個別のPolicy Conditionが付されていることが多く、本稿で挙げた品目はあくまで代表例にとどまります。インドは、FTP・IMS・QCO等の規制改定が頻繁に行われる法域でもあるため、具体的な案件では、品目名や大まかな分類のみで判断せず、必ず対象HSコードごとに最新のDGFT・CBIC・BIS・FSSAI・CDSCO等の公表情報を確認する必要があります。とりわけ、本稿で例示した農産品、貴金属等は政策変更が生じやすく、また牛肉、電子タバコ、パキスタン原産・輸出品等を含む禁止品目についても制度改正の可能性があるため、公開直前には、当該時点のITC(HS)及び関連Notificationとの個別照合をお勧めします。
※ 参考文献(インド政府機関及びJETROウェブサイト)
・ https://www.dgft.gov.in/
・ https://www.cbic.gov.in/
・ https://www.bis.gov.in/
・ https://www.fssai.gov.in/
・ https://cdsco.gov.in/
・ https://www.jetro.go.jp/world/asia/in/trade_02.html
・ https://www.jetro.go.jp/world/asia/in/trade_05.html 以上
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。
今回で日本からの海外への輸出編は最終回となります。
【関連記事】
第1回「日本側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ①)
第2回「シンガポール側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ②)
第3回「タイ側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ③)
第4回「インドネシア側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ④)
第5回「ベトナム側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ⑤)
第6回「フィリピン側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ⑥)
第7回「マレーシア側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ⑦)
- 【掲載元情報】
- 弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 制作





