2026.07.31
- 【日本】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第38回/「マレーシア側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ⑦)

- 【日本】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第38回/「マレーシア側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ⑦)
-
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。
「日本からの輸出」応用編⑥(対マレーシア輸出) −マレーシア側での留意点−
1 総論
⑴ 輸入規制
日本からマレーシアに輸出を行う場合には、輸入地であるマレーシアの輸入規制が適用されます。そのため、対マレーシア輸出に当たっては、マレーシア法上、当該物品が輸入禁止品目に当たるのか、輸入ライセンスや個別許可・証明書等が必要であるのか、又は一定の輸入方法・認証等が必要であるのかを事前に確認する必要があります。
マレーシアの輸入規制は、主に1967年関税法(Customs Act 1967)と、2023年関税(輸入禁止)令(Customs (Prohibition of Imports) Order 2023)とその後の改定令によって規律されています。実務上は、①完全に輸入が禁止される品目、②輸入ライセンスを要する品目、③所定の輸入方法に従うことを要する品目、④承認された規格への適合及び所定の輸入方法に従うことを要する品目、という形で整理されています。
⑵ 輸入規制品目への該当性の確認
輸入規制品目への該当性は、品目名だけでなく、HSコード(関税番号)、材質・成分、用途・機能、仕様及び原産地・積送地を前提として確認するのが基本です。マレーシア税関(Royal Malaysian Customs Department)の「JKDM HS Explorer」により、物品の名称又は関税番号から、輸出入許可の要否、ライセンスの有無、所管官庁などを調べることができます。
⑶ 監督官庁
マレーシア側の輸入管理は、一つの官庁だけで完結するわけではありません。税関が通関・徴税・輸入禁止令の運用の中心を担う一方、工業製品は投資貿易産業省(Ministry of Investment, Trade and Industry :MITI)、農産品・食品は農業・食糧安全保障省(Ministry of Agriculture and Food Security :MAFS)やマレーシア検疫・検査サービス局(Malaysian Quarantine and Inspection Services :MAQIS)、食品安全は保健省(Ministry of Health)、医薬品・化粧品は国家医薬品規制庁(National Pharmaceutical Regulatory Agency :NPRA)、医療機器は医療機器庁(Medical Device Authority :MDA)、電気機器はエネルギー委員会(Suruhanjaya Tenaga :ST)など、品目ごとに所管官庁が分かれています。
2 輸入品目規制
マレーシアの輸入品目規制は、「輸入そのものが禁止されるもの」と、「条件付きで輸入できるもの」とに分かれます。そして、条件付きで輸入できるものの中には、輸入ライセンスが必要なものと、所管官庁の許可・証明書、検査又は登録が必要なもの、及びマレーシア規格等への適合や所定の輸入方法の順守が必要なものがあります。
⑴ 主な輸入禁止・条件付き禁止品目
マレーシアでは、2023年関税(輸入禁止)令に基づき、特定品目の輸入が禁止又は条件付きで禁止されています。個々の品目は同令の別表で管理されており、実務上は、物品の名称やHSコード単位だけでなく、材質・成分、用途、仕様、原産地・積送地及び輸入地域等により確認することが重要です。規制対象には、動植物及びその由来製品、薬物前駆物質その他の化学物質、廃棄物、自動車・車両関係品、一部の工業製品等が含まれます。
⑵ 主な輸入ライセンス対象品目
代表例として、自動車等の輸入には輸入許可証(Approved Permit :AP)が必要とされています。また、農産品、植物、動物、魚類、農産加工品、食品などについては、マレーシア検疫・検査サービス局や農業・食品関係機関、保健省などの関与のもとで、品目に応じて輸入許可、証明書、検査又は登録が必要となることがあります。食品分野では、保健省の食品輸入手続、農畜水産分野では農業・食糧安全保障省やマレーシア検疫・検査サービス局の手続が用意されており、同じ「食品」でも品目により窓口が異なる可能性があります。
MAQIS法(Malaysian Quarantine and Inspection Services Act 2011)では、植物、動物、魚類、農産物、土壌又は微生物の輸入等について、ライセンス・証明書・許可等が必要であると定められています。そのため、日本からの輸出品が農林水産物や検疫対象物を含む場合には、単なる通関書類だけでなく、検疫・衛生関係書類等が必要になる可能性がある点に注意が必要です。
⑶ 主な認証・輸入方法条件付き品目
マレーシアでは、輸入ライセンスとは別に、一定の品目について、輸入前又は輸入時に認証・適合確認等を要する制度があります。
典型例が電気製品であり、規制対象となる家庭用電気機器の輸入には、エネルギー委員会のCertificate of Approval(COA)が必要です。申請はe-Permit経由で行われ、必要書類が整っていればエネルギー委員会がCOAを発行する仕組みです。
また、一定の鉄鋼製品・アルミ製品、建設資材及びプラスチック廃棄物等についても、COA又はこれに類する適合確認が要求されることがあります。したがって、工業製品については「輸入禁止ではないからそのまま送れる」と考えるのではなく、マレーシア国内の安全・品質・標準適合規制の対象であるかを確認する必要があります。
⑷ 戦略物資等
軍民両用品や安全保障上センシティブな物品については、2010年戦略物資法(Strategic Trade Act 2010)にも注意が必要です。一般的には、精密機器、特殊材料、化学関連物質等では、通常の通関規制に加え、戦略物資規制の観点も問題になり得ることに留意が必要です。もっとも、同法の中心的な規制対象は、戦略物資及び非リスト品目の輸出、積替え、通過ならびに戦略物資に関する仲介等であり、日本からマレーシア国内への単純な輸入それ自体を一般的に規制する法律ではありません。
3 輸入地域規制
マレーシアには、物品の原産国、製造国又は積送国に応じた輸入地域規制も存在します。
インドネシアからの丸太などの木材の輸入規制、また、イスラエルからの多くの品目の輸入について輸入ライセンスを必要とする規制等があります。日本からの通常の輸出では直ちに問題にならない場面も多いですが、第三国産品の再販売や原産地・積送経路が複雑な案件では、輸入地域規制の確認も必要です。
4 輸入関連法
マレーシア向け輸出に関して、基本法は、1967年関税法です。これに加え、輸入禁止・条件付き輸入禁止の内容を定める2023年関税(輸入禁止)令及びその改定令が重要です。
さらに、品目によっては、2010年戦略貿易法(Strategic Trade Act 2010)、MAQIS法(Malaysian Quarantine and Inspection Services Act 2011)、1983年食品法(Food Act 1983)等が関係します。すなわち、マレーシア向け輸出では、「税関法だけの問題」ではなく、品目横断的に個別法が重なり合う構造であることに留意が必要です。
5 その他
⑴ 輸出入許可申請・通関書類
マレーシアの通関では、輸入申告を電子的な税関様式第1号、いわゆるK1フォームによって行います。通常、インボイス、梱包明細、航空貨物運送状又は船荷証券、必要に応じた輸入ライセンス・許可・証明書、原産地証明書等が求められます。
マレーシア側での輸入手続は、輸入者又は通関業者が行うのが通常ですが、日本側輸出者としても、インボイス上の品名、材質・成分、数量、価格、原産地、型番、仕様等を正確に記載し、梱包明細書、運送書類、許認可書類等との間に不整合が生じないようにすることが重要です。
⑵ 原産地・表示
マレーシアでは、関税法上、通関申告において、原産地を含む輸入物品に関する事項を正確に申告することが求められます。他方で、一般的・一律の「原産地表示義務」があるというよりは、食品、化粧品、医薬品等の分野ごとに、個別法令やガイドラインで表示義務が課される構造です。したがって、対マレーシア輸出では、原産地証明の有無だけでなく、品目別ラベル規制にも目配りが必要です。
⑶ ハラール規制
マレーシア向け輸出では、ハラール対応も重要な論点です。2011年取引表示(ハラールの認証及び表示)令(Trade Descriptions (Certification and Marking of Halal) Order 2011)上、輸入食品又は輸入物品をマレーシア国内で「ハラール」と表示し、また、イスラム教徒が消費・使用できる旨を表示・説明して流通させる場合には、同令に定める要件を満たす必要があります。
マレーシア・イスラーム開発庁(Jabatan Kemajuan Islam Malaysia :JAKIM)のハラールポータルでは、国内外事業者向けのハラール認証制度や、外国の認証機関に関する情報が公表されています。特に、食肉及び食肉由来製品(家禽を含む)をマレーシアに輸入する場合には、マレーシア・イスラーム開発庁が認めた外国ハラール認証機関による認証が必要とされており、さらにマレーシア・イスラーム開発庁及び獣医当局による承認が問題になります。食品分野では、法的義務の有無にとどまらず、商流上、ハラール適合性が重要な取引条件になることも少なくありません。
⑷ 小口輸入・越境EC
マレーシアでは、低価格貨物(Low Value Goods: LVG)に関する売上税制度も、越境EC事業者等にとって重要です。
LVGとは、国外からオンラインで販売され、陸路、海路又は空路でマレーシアに輸入される、販売価格がRM500以下の物品をいいます。
マレーシア国内外の販売者又はオンライン・マーケットプレイス運営者で、マレーシア向けLVGの売上総額が12か月間でRM500,000を超える者は、原則として登録が必要となります。登録販売者からの購入について、2024年1月1日以降、LVGの販売時に一律10%の売上税が賦課される制度となっています。
したがって、RM500以下の小口貨物であることだけを理由に税務・登録上の論点がないと判断することはできません。他方で、RM500以下の物品を販売するすべての日本事業者が直ちに登録義務を負うわけではないため、登録要件の該当性を確認する必要があります。
6 まとめ
以上のとおり、マレーシア向け輸出では、まず物品の名称、材質・成分、用途・機能、仕様、原産地・積送地及び輸入先地域を確認した上で、HSコードを特定し、税関のHS Explorerで規制・所管官庁を確認し、その上で、必要に応じて所管官庁等の個別制度を確認する、という流れが基本になります。輸入禁止令や個別規制は改定があり得るため、具体的な案件では必ず最新の税関・所管官庁の情報を確認する必要があります。
※ 参考文献(マレーシア政府機関及びJETROウェブサイト)
・ https://www.customs.gov.my/en/
・ https://www.jetro.go.jp/world/asia/my/trade_02.html
・ https://www.jetro.go.jp/world/qa/J-230401.html
・ https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-000967.html
・ https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-091104.html
・ https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2024/d5fea7ae44f7eadc/20240315_r.pdf
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。
第8回 応用編⑦「対インド輸出におけるインド側での留意点」に続きます。
【関連記事】
第1回「日本側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ①)
第2回「シンガポール側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ②)
第3回「タイ側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ③)
第4回「インドネシア側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ④)
第5回「ベトナム側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ⑤)
第6回「フィリピン側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ⑥)
- 【掲載元情報】
- 弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 制作





