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2026.07.01

【日本】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第37回/「フィリピン側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ⑥)NEW
【日本】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第37回/「フィリピン側での留意点」(日本から海外への輸出シリーズ⑥)
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。

「日本からの輸出」応用編⑤(対フィリピン輸出) −フィリピン側での留意点−

1.総論

 日本からフィリピンへの輸出に際しては、日本法上の規制(輸出サイドの規制)の他に、フィリピンにおける輸入関連規制への対応が必要です。増加傾向にある日本からフィリピンへの輸出について、読者のアウトバウンドビジネス検討の一助とされるよう、本稿ではフィリピンの輸入規制及び実務上の留意点の概要を紹介します。
 
2.輸入規制(禁止・規制品目)

 フィリピンの税関現代化・関税法(CMTA)等により、輸入禁止・規制品目が定められています。

(1) 輸入規制品目
 該当する物品の輸入には、現地政府機関からの事前許可等が必要です。
 
 主な規制品目:無水酢酸、コメ、シアン化物・シアン化合物、クロロフルオロカーボン等のオゾン層破壊物質、石炭及びその派生物、精製石油製品、特定の印刷機、爆発物製造用化学薬品、農業用の殺虫剤、樹木・植物の種子・苗木、自動車(新車)、自動車部品(中古品。後述)、放射性物質、リサイクル品・金属の廃品・金属を含む汚泥・プラスチックの廃品及び電子組立品の廃品、塩、牛乳、肉類・肉製品 など

 また、製品標準局(BPS)が定めるフィリピン国家規格の対象品目(特定の家電、建築資材、機械、化学品等)に該当する場合、BPSより輸入商品許可証の発給を受ける必要があります。

 化学物質については、輸入規制品目のリストに記載がない場合でも規制対象となる可能性があるため、個別確認が推奨されます。
 
 飲料、食品、サプリメント、化粧品、医療機器等をフィリピンへ輸出する場合には、現地の輸入業者が保健省食品医薬品局(FDA)から営業許可と製品登録証明書を取得していなければ輸入通関ができない点に注意が必要です。なお、医療用でなくとも、放射線を発する機器等であれば、FDAの許可が必要です。
 
 セメント等については、国内産業保護のためのセーフガード措置等が発動されている、あるいは発動される可能性があるため、フィリピンへの輸出時には最新の適用状況につき特別な留意が必要です。

(2) 輸入禁止品目
 CMTA118条等により、以下の物品は原則として輸入が禁止されています。
 
 主な輸入禁止物品:ダイナマイト、火薬、弾丸その他の爆発物、戦闘用火器・兵器/フィリピン政府に対する反逆・反乱・暴動・転覆を主張・扇動する内容を含む文書等/わいせつ又は非道徳的な内容を含む文書等/非合法な中絶用の器具・薬品、及び非合法な中絶の情報を提供する文書等/正確な純度が示されていない金・銀等の貴金属製品/食品医薬品法に違反した混合物、不適切な表示をした食品及び薬品/ギャンブル用品/マリファナ・アヘン・ヘロイン等の習慣性薬物、アヘン吸引用のパイプ等/古着及びぼろ/おもちゃの銃/生きたピラニア・エビ/知的財産権を侵害する商品/中古車(後述)/有害廃棄物/ハード型界面活性剤を含む洗濯洗剤及び工業洗剤、PCB など
 
3.輸入通関の留意点

(1) 輸入通関時には、輸入・内国歳入税申告様式、船荷証券・航空運送状、商業インボイス、パッキングリスト、原産地証明書(必要な場合。後述)、政府機関の許可を受けたことを示す書類(必要な場合)等を関税局(BOC)に提出します。

 輸入通関にあたっては、関税委員会から事前教示を得ることでスムーズな通関が可能となりますが、同制度の利用申請は原則として輸入申告の90日前までに行う必要がある点に注意が必要です。

(2) 商業用貨物については、FOB価格又はFCA価格が5万ペソ未満の場合、通常の一般通関に代えて簡易通関の手続によることが認められています。なお、FOB価格又はFCA価格で1万ペソ以下の貨物を輸入する場合は、関税その他の輸入税が免除されます。

(3) すべての輸入業者及び通関業者は、原則としてライセンスを得ていることが必要です。
 また、フィリピンでは、オンライン通関システムが導入されているところ(E2M等)、法律上は輸入者本人や授権された代理人による輸入申告も認められていますが、実務上はオンライン通関システムへの登録や手続の専門性等から、現地でライセンスを持つ通関士を起用するのが安全です。

(4) 原木材からできた木製の梱包材(ベニヤ等の加工済み木製梱包材は対象外)について、国際規格(ISPM No.15)に沿った検疫規制が実施されており、熱処理又は薫蒸処理と、消毒済みマーク表示が義務付けられています。

(5) 関税局(BOC)は、特別経済特区入居企業を含むすべての輸入者に対し、過去3年間に遡って事後調査を行う権限を有しており、輸入者は輸入から3年間、輸入関連書類を保管する義務があります。過去の対応に不備があった場合等には高額な追徴課税や罰金等のリスクがあるため、注意が必要です。

(6) 2024年11月より、CREATE MORE法に基づく付加価値税(VAT)の現金還付の制度が実施されています。税務署は申立てから90日以内に還付の可否を決定することとされ、また、還付申請の却下に対する裁判前の再審請求制度の新設や、免税・還付の対象となる輸入品の基準の緩和がなされるなど、輸入を促進し得る制度改正となっています。

(7) 輸入通関にあたり、日本側での領事査証(領事認証)の取得は原則として不要です。
 中古品の輸入については、アポスティーユ(日本外務省の認証)が必要であるとする通達が存在しますが、実務上はこれらがなくとも輸入できた事例があるとの情報もあり、法制度と実際の運用に揺れがみられるため、あらかじめ現地輸入者等に最新の状況を確認することが推奨されます。

(8) 従前、バラ積貨物等の輸入については認定検査会社による船積前検査を受け、認定検査会社が発行する報告書を入港12時間前までに税関に提出する必要がありました。報告書がある場合は入港前の輸入申告及び関税支払によるスムーズな荷下ろしが可能ですが、報告書がない場合は、税関職員や本船船長、荷受人代表等が参加する船降し前会議が開催され、その後、現地での検査等が行われるなど、港湾滞留コストや煩雑な手続を要します。

 もっとも、2024年5月、全輸入品を対象とする「国境前技術検証及び国境を越えた電子インボイス発行のためのデジタル統合システム」が3段階(①農産物、②衛生・安全上のリスクがある非農産物、③その他の品目)で順次導入されることが決定され、現在、運用開始が順次進められています。

 この新制度の下、日本の輸出企業は、フィリピン政府のデジタルプラットフォームにアカウント登録をし、船積み・航空積み前に当該システム上で電子インボイスを発行するほか、輸出前に日本側で技術検証・検疫を受ける必要があります。これらの手続を満たした場合、入港前通関・優先引取りの対象となり、港湾滞留コストの削減等が期待されますが、他方で、満たさない場合は現地で全量検査の対象となる上、高額な罰金、輸入業者のライセンス取消し等の厳しい制裁の対象となるため、注意が必要です。

 本制度の全面導入に従い、上記のバラ積貨物等検査は吸収・統合されることになりますが、現在の移行過渡期においては新旧それぞれの制度に留意する必要があります。
 
4.貿易為替関係

 輸入時の決済に関して、フィリピンの認可代理銀行(AAB)を介して外貨を購入・送金する場合は、信用状(L/C)、支払渡し(D/P)、引受渡し(D/A)、交互計算(O/A)、直接送金(DR)、前払いといった主要な決済方法のいずれであっても、フィリピン中央銀行(BSP)の許可は原則不要とされており、また、AABを介さない決済であっても、フィリピン国内銀行からの外貨調達を伴わない輸入や、受託製造・加工のための輸入の場合は同様です。しかし、これら以外の場合については、マネーロンダリング防止等の観点から厳しく規制されており、原則としてBSPの事前許可を要します。

 また、税務上の留意点として、最近の制度改正により、課税所得・控除・付加価値税(VAT)の計算において、全ての外貨取引は、会計上の平均レートではなく、取引日の直物為替レート(スポットレート)を用いてフィリピンペソに換算することが義務付けられました。現地輸入者の税務コンプライアンスやコスト計算に直結する問題であるため、現地輸入者との取引条件の協議等にあたり注意が必要です。
 
5.関税制度

 日本からの輸入関税は、以下の4種類に分類され、品目ごとに最も有利な協定を都度選択することが実務上重要です(EPA税率とMFN税率が逆転するケースもあるため注意が必要です。)。

 ①最恵国待遇(MFN)税率
 ②日フィリピン経済連携協定(JPEPA)適用税率
 ③日ASEAN経済連携協定(AJCEP)適用税率
 ④地域的な包括的経済連携協定(RCEP)適用税率

 関税の課税基準は原則としてCIF価格(商品代金+運賃・保険料等)です。
 品目分類は、ASEAN統一関税品目分類コード(AHTN)2022年版に基づいていますが、品目分類の見解の相違を避けるため、前記のとおり、関税委員会から事前教示を得ることが安全です。
 
 また、輸入時には関税のほか、一律12%の付加価値税(VAT)が別途課されます。その他、たばこ、蒸留酒、ワイン、自動車、鉱物製品等には物品税も課されます。

 ②~④の特恵税率の適用を受けるには、各協定が定める原産地規則に基づき、当該物品が当該協定の適用対象となるか確認の上、日本商工会議所等が発行する原産地証明書を提出することが必要です。
 
6.その他

(1) ATAカルネ/一時輸入制度
 2024年7月より、フィリピンでもATAカルネ制度の利用が可能になりました。同制度により、商品サンプル、展示会出品貨物、職業用具等を海外へ一時的に持ち出す(一時的にフィリピンに送る)際に、関税・諸税が免除されます(携行品・別送品に利用可能で、郵便貨物及び通過貨物は対象外)。ATAカルネを利用して輸入された物品が同一の状態で再輸出されることが条件です。

 ATAカルネを利用しない場合でも、特定の展示会等であれば担保(デポジット)提供等による一時輸入免税制度がありますが(3か月以内の再輸出が条件)、税関の価格評価や申告内容の審査が厳格な上、再輸出時の担保返還手続が長期化する等のリスクがあるため、実務上はATAカルネの活用が推奨されます。

(2) 自動車・自動車部品
 フィリピンでは、国内産業保護のため、中古車の輸入は原則禁止されています(右ハンドル車は全面禁止)。例外的に、トラック(ピックアップトラックを除く)、バス、消防車・救急車等の特殊車両のみ、貿易産業省(DTI)の許可を取得することを条件に輸入が認められています。

 自動車部品については、新品は規制対象外ですが、中古部品は輸入規制品目に該当し、DTIの事前許可が必要です。
 
 また、新品・中古品を問わず、シートベルト・制御装置等の安全に関わる特定の部品(製品標準局(BPS)が定めるフィリピン国家規格に該当する品目)は、BPSから輸入商品許可証の発給を受ける必要があります。
                                               以上
【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  制作

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