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2019.12.05

インドインド【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/《インド編》第3回「インドの会社の種類・構成・設立」及び「株式」
【インド】第3回「インドの会社の種類・構成・設立」及び「株式」
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《インド編》 第3回「インドの会社の種類・構成・設立」及び「株式」
 
Ⅰ.会社の種類・構成・設立

1.会社の種類
(1)公開会社・非公開会社・一人会社(法第3条1項)
2013年インド会社法(以下「法」という。)は、会社の構成の見地から、①公開会社(public company)、②非公開会社(private company)、及び③一人会社(One Person Company)の3つの形態の会社を規定しています。

①公開会社(法第2条71項、3条1項 (a))
法第2条71項において、公開会社とは、非公開会社ではない会社を意味するものと定義されています。なお、会社法施行時において公開会社の最低資本金は50万ルピーとされていましたが、2015年改正によりこの要件は撤廃されました。
また、公開会社においては、その株主数の上限は規定されていませんが、7名以上の株主を要する旨が規定されています。

②非公開会社(法第2条68項、3条1項 (b))
法第2条68項において、非公開会社は、その附属定款に以下の事項が規定されている会社を意味するものと定義されています。

・株式譲渡の制限
・株主数が200名以下
・有価証券の公募の禁止

なお、会社法施行時において非公開会社の最低資本金は10万ルピーとされていましたが、2015年改正によりこの要件は撤廃されました。
また、非公開会社の株主数については、上記のとおり上限を規定するとともに、その下限を2名とする旨が規定されています。

③一人会社(法第2条62項、3条1項 (c))
一人会社とは、2013年インド会社法において新設された会社の種類であり、法第2条62項において、株主が1名のみの会社を意味するものと定義されています。一人会社が認められたことにより、完全子会社の設立の可能性が期待されましたが、一人会社における株主は自然人を想定しており、会社を唯一の株主とする完全子会社の設立は現状では認められていません。

(2)有限会社・無限会社(法第3条2項)
また同法は、上記の種類の会社につき、以下のいずれかの種類をとり得る旨を規定しています。

(a)株式有限責任会社(company limited by shares)
株式有限責任会社とは、会社の基本定款により、株主が保有する株式につき未払部分があればその未払額まで株主の責任が制限されている会社を意味すると定義されています(法第2条22項)。

(b)保証有限責任会社(company limited by guarantee)
保証有限責任会社とは、会社の基本定款により、会社清算の際に会社資産への寄与を約する額まで社員の責任が制限されている会社を意味すると定義されています(法第2条21項)。

(c)無限責任会社(unlimited company)
無限責任会社とは、社員の責任に制限がない会社を意味すると定義されています(法第2条92項)。

2.会社の設立
インド会社法に従った会社設立手続きの概要は以下のとおりです。

(1)電子署名認証(DSC: Digital Signature Certificate)の取得
会社設立の登記申請はオンラインにおいて行われるため、そのオンライン申請において必要となる署名はDSCによって行われます。したがって、まず事前の準備としてDSCの取得が必要となります。なお、従前は取締役識別番号(DIN: Director Identification Number)の取得も事前に必要でしたが、会社設立手続の簡素化に伴い、設立時取締役のDINについては、会社設立時に割り当てられることになりました。

(2)商号承認申請
設立する会社の名称として使用を予定する商号は、会社設立申請前に会社登記局に申請する必要があります(法第4条4項)。そして、商号が会社登記局によって承認された場合、当該商号は申請日から60日間は保持されますので(法第4条5項 (i))、この期間中に会社設立申請を行う必要があり、会社設立申請を行わないままこの期間が徒過してしまった場合、再度商号承認申請を行わなければならない点には注意が必要です。
なお、商号選定に関する主な要件は以下のとおりです。

・商号の末尾は、公開会社の場合には「Limited」、非公開会社の場合には「Private Limited」としなければならない(法第4条1項)
・既存の会社の商号と同一又は極めて類似する商号であってはならず、また法律に違反するもの、中央政府が望ましくないと考えるものであってはならない(法第4条2項)
・中央政府の事前の承認がない限り、中央政府・州政府、これらが設立した機関等と関係を有する、又はこれらから支援されているとの印象をあたえる単語・表現を用いてはならない(法第4条3項)

(3)基本定款(Memorandum of Association)及び附属定款(Articles of Association)の作成
(a)基本定款
基本定款は、主に会社の目的の範囲を記載するものであり、併せて商号、登記事務所が所在する州、発起人名およびその引受株式数・額等が記載されます。

(b)附属定款
附属定款には、会社の運営に関する事項が記載されます。会社法には附属定款の標準モデルが規定され、附属定款において別段の定めがない限りこの標準モデル上の規定が適用されることには注意が必要です。

(4)会社設立申請
上記の基本定款・附属定款、その他必要な書類及び申請フォームと共に、登記事務所の所在予定地を管轄する会社登記局にオンラインで設立申請を行わなければなりません。
会社設立申請に不備がなければ会社が登記され、会社登記局から設立証明書(Certificate of Incorporation)が発行されます(法第7条2項)。このように登記された会社は、設立証明書に記載された日から法人格を有することになります(法第9条)。
なお、会社設立手続きの簡素化に伴い、従前は会社設立後に別途申請及び取得が必要であった恒久税務番号(PAN: Permanent Account Number)及び源泉徴収番号(TAN: Tax Deduction and Collection Number)についても、会社設立時に割り当てられることになりました。

(5)会社設立後の主な手続き
会社の設立後に行わなければならない主な手続きは以下のとおりです。

・第一回取締役会の開催(設立後30日以内)
・会社名義の銀行口座の開設
・発起人による資本金の払込み、及び発起人に対する株式の割当て
・各種税務番号の取得(GST番号等)
・各種許認可の取得、登録(店舗及び施設法、工場法等)

なお、2013年インド会社法は、発起人による払込みが完了し、払込株式資本が法定の最低資本金額以上となっている旨の宣誓書及び登記事務所確認書を会社登記局に提出しない限り事業を開始してはならない旨が規定されていましたが、2015年改正により該当条文は削除されました。
 
Ⅱ.株式

1.発行可能な株式の種類
インド会社法は、株式有限責任会社が発行可能な株式として、普通株式及び優先株式の2種類を規定しています(法第43条 (a) (b))

(a)普通株式(equity share capital)
普通株式とは、優先株式ではないすべての株式を意味すると定義されており、法はさらに①議決権を有する普通株式、及び②配当、議決権、又は別途規則に従ったその他の事項に関し異なる種類の権利を有する普通株式の発行を認めています。

(b)優先株式(preference share capital)
優先株式とは、利益配当、会社清算の際の残余財産の分配等に関して優先権を持つ株式を意味するものと規定されています。なお、優先株式はその償還を伴わなければならず、原則として発行日から20年以内に償還されなければなりません(法第55条1項・2項)。

2.株式譲渡
(1)公開会社
公開会社の株式は、原則として自由に譲渡することができます(法第58条2項)。
もっとも、法は、株主間において株式譲渡を制限する契約を締結することを認めているため、このような株主間契約において株式譲渡を制限することは可能となります(同条項但書)。

(2)非公開会社
非公開会社はその附属定款に株式譲渡を制限する旨が規定されている会社と定義されているため(法第2条68項)、非公開会社の株式を譲渡する場合は、会社の承認が必要となります。

3.新株発行
(1)新株発行方法
(a)公開会社
法は、公開会社における新株発行方法として、①公募(public offer)、②私募(private placement)、もしくは③株主割当(rights issue)又は株主無償割当(bonus issue)を規定しています(法第23条1項)。
①公募による新株発行は、目論見書(prospectus)を通じて一般に対して株式を発行する方法です。②私募による新株発行は、個別の募集通知の発行を通じて株式の引受を募集又は勧誘し、募集に応じた特定の者に対して株式を発行する方法です。また、③株主割当による新株発行は、既存株主に対し、その持株割合に応じた株式を割り当てる株式発行方法であり、株主無償割当による新株発行は、任意積立金、有価証券払込剰余金、又は資本償還準備金を財源とする既存株主に対する無償の株式発行方法です。

(b)非公開会社
非公開会社はその附属定款に有価証券の公募を禁止する旨が規定されている会社と定義されているため(法第2条68項)、法は、非公開会社の新株発行方法として、公開会社のような公募は認めておらず、①私募(private placement)、もしくは②株主割当(rights issue)又は株主無償割当(bonus issue)のみを規定しています(法第23条2項)。

(2)新株発行の決定権限
新株発行の決定権限については、新株発行による増資に関する規定である法第62条がこれを規定しています。同条によると、既存株主に対しその持株比率に応じて割り当てる株主割当の場合は取締役会決議でこれを決定することができます。しかし、従業員ストック・オプション制度に基づいて従業員に対する新株発行、もしくは第三者割当発行(この第三者には、上記の既存株主や従業員を含むか否かを問いません)の場合には、既存株主の持株比率の希薄化を伴うため、既存株主の利益保護の見地より、株主総会の特別決議でこれを決定する必要があります。

4.株式譲渡・新株発行における注意点
(1)譲渡価格
日本企業がインド人株主から株式を譲り受ける場合のように、いわゆるインド居住者からインド非居住者への株式譲渡に該当する場合、このような株式譲渡は1999年インド外国為替管理法(the Foreign Exchange Management Act, 1999 )に基づいてインド準備銀行が発行するMaster Circular on Foreign Investment in Indiaにおいて規律されています。特に譲渡価格について同Master Circularは以下のように規定し、インド居住者の保護を図っています。

(a)上場会社の株式の場合
この場合、インド証券取引委員会のガイドラインに従って算定される価格以上を発行価格としなければなりません。

(b)非上場会社の株式の場合
この場合、独立当事者間取引に基づく株価評価として国際的に受け入れられている株価算定方法に従って算定され、インド勅許会計士又はインド証券取引委員会に登録されているマーチャント・バンカーによって認証された公正価格以上を譲渡価格としなければなりません。

(2)発行価格
子会社であるインドの現地法人から日本の親会社に対して新株発行による増資を行う場合のように、インドの会社の株式を「インド非居住者」に対して発行する場合、その発行価格に関しては以下のように規制されています。

(a)上場会社の株式の場合
この場合、インド証券取引委員会のガイドラインに従って算定される価格以上を発行価格としなければなりません。

(b)非上場会社の株式の場合
この場合、独立当事者間取引に基づく株価評価として国際的に受け入れられている株価算定方法に従って算定され、インド勅許会計士又はインド証券取引委員会に登録されているマーチャント・バンカーによって認証された公正価格以上を発行価格としなければなりません。
なお、インド会社法の規定に従って会社を設立する際に、インド非居住者が発起人としてその株式を引き受ける場合においては、その株価は券面額とすることができます。

(3)インド準備銀行への報告
(a)株式譲渡の場合
Master Circular on Foreign Investment in Indiaは、インド居住者に対し、株式譲渡の対価を受領した日から60日以内に、当該株式譲渡に関する内容を記載したForm FC-TRSをインド準備銀行が認定しているAD Category-I Bankに対して提出する義務を課していました。もっとも、2018年9月1日以降は、手続きが簡素化され、当該株式譲渡に関する内容は、SMF(Single Master Form)の形式で、オンラインによって報告すればよいことになりました。

(b)新株発行の場合
同Master Circularは、発行元のインド企業に対し、新株発行日から30日以内に、当該新株発行に関する内容を記載したForm FC-GPRをインド準備銀行が認定しているAD Category-I Bankに対して提出する義務を課していました。もっとも、2018年9月1日以降は、手続きが簡素化され、当該新株発行に関する内容は、SMF(Single Master Form)の形式で、オンラインによって報告すればよいことになりました。
 
以 上
 
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。
 
第4回に続きます。


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【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  作成

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