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2019.11.25

インドインド【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/《インド編》第2回「インドへの進出形態」
【インド】》第2回「インドへの進出形態」
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。
 
《インド編》 第2回「インドへの進出形態」
 
1.進出形態の種類
インドの法規上、日系企業を含む外国企業がインドに設立することが許されている事業拠点の形態は、主に現地法人(会社)、支店、プロジェクト・オフィス、駐在員事務所の4つとなります。

2.具体的特徴
(1)現地法人
(a)事業活動の範囲
現地法人は、最も一般的な進出形態であり、多くの日本企業もインドに現地法人を設立して事業を行っています。現地法人の場合、外国直接投資規制の範囲内で、かつ基本定款(Memorandum of Association)に規定された事業目的の範囲内で自由に事業活動を行うことができます。

(b)資金調達
現地法人の資金調達手段としては、増資及び借入れという手段があります。
増資については、その使用目的に制限はないが、増資のためには取締役会決議に加え、場合によっては株主総会の特別決議が必要となります。借入れに関しては、インド国内の銀行からの借入れ及び日本の親会社からの借入れ(対外商業借入・ECB)が考えられます。銀行借入れに関しては、使用目的に制限はないが日本に比べて高金利であること、及び現地の銀行の多くは日本の親会社の信用ではなく現地法人自体の信用で融資の有無を決定することから、保証や担保提供なしに融資を受けることが困難な場合もあり得ると思われます。ECBに関しては、ECBによって調達した資金は原則として運転資金に利用できず、利用するためには厳しい要件を充たす必要があり、相対的に使い勝手のよいものではありませんでした。もっとも、近時の規制緩和により、ECBによって調達した資金を運転資金に利用するための要件等が緩和され、より利用しやすい制度となっています。

(c)法人税(2019会計年度)
現地法人に対する法人税(Income Tax)の税率は以下のとおりです。
■2017会計年度の総売上額又は総受領額が40億ルピー以下の場合
課税対象所得額 法人税率 サーチャージ 教育目的税 実効税率
1000万ルピー以下 25% --- 4% 26%
1000万ルピー超、
1億ルピー以下
25% 7% 4% 27.82%
1億ルピー超 25% 12% 4% 29.12%
 
■2017会計年度の総売上額又は総受領額が40億ルピー超の場合
課税対象所得額 法人税率 サーチャージ 教育目的税 実効税率
1000万ルピー以下 30% --- 4% 31.2%
1000万ルピー超、
1億ルピー以下
30% 7% 4% 33.38%
1億ルピー超 30% 12% 4% 34.94%

なお、2019年9月にインド政府は景気対策のための法人税率の引き下げを発表し、インセンティブやその他の税控除の制度を利用しないことを条件に、2019年度以降の法人税率が22%まで引き下げられました。また、2019年10月以降に新規設立された製造業を営む会社についても、インセンティブやその他の税控除の制度を利用しないこと、及び2023年3月31日までに製造を開始することを条件に、2019年度以降の法人税率が15%まで引き下げられました。

(d)撤退
現地法人を閉鎖してインドから撤退する方法として、主に2つの方法があります。

①国家会社法審判所による清算
債務不履行状態にある会社は、国家会社法審判所(National Company Law Tribunal)が主導するスキームによって清算手続を行わなければなりません。
もっとも、この場合、まずは会社再生のための手続が行われ、その手続が不調に終わった場合に限り清算手続に移行することに注意する必要があります。

②自主清算
債務不履行状態にない会社は、自主的に会社の清算手続を進めることができます。この方法は、その名称が示唆するように、株主の要請による会社の清算であり、国家会社法審判所の介入が最小限に抑えられている点にその特徴があります。

なお、上記の他に、会社の登記抹消申請という方法もありますが、2会計年度以上に渡って事業を行っていないことが要件となっていること、または債務超過の会社は利用できないことから、現地の日系企業が利用できる場面は限定されると思われます。
 
(2)支店(Branch Office)
(a)事業活動の範囲
支店は、インドの法令によって規定される一定の事業活動のみを行うことが許されています。具体的な事業活動内容は以下のとおりである。

・物品の輸出入
・専門サービス又はコンサルティングサービスの提供
・日本本社が行っている事業分野の調査活動
・日本本社又は海外グループ会社とインド企業間の技術的・財務的提携関係の促進
・インドにおける日本本社の代表行為、及び購入・販売代理としての活動
・インドにおける情報技術及びソフトウェア開発分野におけるサービス提供
・日本本社又はグル―プ会社によって供給された製品に対する技術的サポート提供
・外国の航空及び船舶会社

(b)資金調達
支店はそれ自体法人格を有しないため、インド国内の銀行から借入れを行うことはできません。しかし、日本の本社からの送金により資金調達を行うことができる。

(c)法人税(2019会計年度)
支店に対する法人税(Income Tax)の税率は、以下のとおりです。
課税対象所得額 法人税率 サーチャージ 教育目的税 実効税率
1000万ルピー以下 40% --- 4% 41.6%
1000万ルピー超、
1億ルピー以下
40% 2% 4% 42.43%
1億ルピー超 40% 5% 4% 43.68%

(d)撤退
支店を閉鎖する場合は、所定の必要書類をインド準備銀行が認定するAuthorized Dealer Bankを通じてインド準備銀行に提出しなければなりません。

(3)プロジェクト・オフィス(Project Office)
(a)事業活動の範囲
プロジェクト・オフィスは、インド国内のインフラ整備等、特定のプロジェクトの遂行に関する活動を行うことが認められています。

(b)資金調達
プロジェクト・オフィスは、そのプロジェクト資金が海外からの送金によって供給されることが設置条件の一つとされていることから、日本の本社からの送金により資金調達を行うことができます。

(c)法人税(2019会計年度)
プロジェクト・オフィスに対する法人税(Income Tax)の税率は、同じく外国法人とされる支店と同様です。

(d)撤退
プロジェクト・オフィスは、当該プロジェクトが終了すると閉鎖されることが予定されており、その場合、所定の必要書類をインド準備銀行が認定するAuthorized Dealer Bankを通じてインド準備銀行に提出する必要があります。

(4)駐在員事務所(Liaison Office)
(a)事業内容
駐在員事務所は、インドの法令によって規定される一定の事業活動(非営利活動)のみ行うことが許されています。具体的な事業活動内容は以下のとおりとなります。

・日本本社又はグループ会社のインドにおける代表行為
・インドとの間の輸出入の促進
・日本本社又はグループ会社とインド企業間の技術的・財務的提携関係の促進
・日本本社とインド企業間の連絡窓口としての活動

(b)資金調達
駐在員事務所は、それ自体が営利活動を行うことが許されておりませんので、その事務所維持のための経費等の活動費用については、日本の本社からの送金によってその全額を調達しなければなりません。

(c)法人税
駐在員事務所は営利活動を行うことが認められていないため、法人税(Income Tax)の課税対象となりません。

(d)撤退
駐在員事務所を閉鎖する場合、所定の必要書類をインド準備銀行が認定するAuthorized Dealer Bankを通じてインド準備銀行に提出する必要があります。
 
以 上
 
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。
 
第3回に続きます。

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【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  作成

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