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2019.03.29

ベトナムベトナム【ベトナム】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第41回『投資法の改正案の公表』
【ベトナム】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第41回
このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights96号(20193月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
 
◇ベトナム:投資法の改正案の公表
 
ベトナム法上、外資規制を定める重要な法令の1つとして、投資法(Law No.67/2014/QH13:「現行投資法」)が存在します。この現行投資法に関して、2019年1月、ベトナム計画投資省(Ministry of Planning and Investment)より改正草案(「本改正案」)が公表されました。本改正案においては、外資規制の適用対象となる外国投資企業の範囲について、従来とは異なる枠組みが示されています。そこで、本稿では、現行投資法に基づく従来の外国投資企業に関する枠組みを説明した上で、本改正案における外国投資企業に関する枠組みをご紹介します。なお、本改正案はあくまで2019年1月時点の改正草案であり、パブリックコメントや更なる検討等の結果、投資法の実際の改正内容が以下で紹介する内容とは異なる可能性がある点、ご留意ください。
 
(1) 現行投資法上の外国投資企業に関する規制枠組み
 
現行投資法上、外資規制の適用対象となる外国投資企業に関する枠組みを画する概念として、以下の定義が定められています。


●「外国投資家」:外国籍を有する個人又は外国法人
●「外国投資企業」:外国投資家が1名でも株主又は持分権者となっているベトナム法人

このうち、外国投資家が新たにベトナム法人を設立する場合や既存のベトナム法人に投資する等(「ベトナム法人の設立・投資等」)の場合には、原則として外資規制が適用され、その結果、現行投資法の定める条件付投資分野への投資について一定の制約が及び、また、一定の法定手続を履践すること等が必要となります。
他方、外国投資企業については、全ての外国投資企業がベトナム法人の設立・投資等を行う場合に外資規制の適用対象となるわけではなく、以下のいずれかの外国投資企業についてのみ、ベトナム法人の設立・投資等に関して、外国投資家と同様の外資規制が適用されます。

(a) 外国投資家の出資比率の合計が51%以上である外国投資企業
(b) 上記(a)の外国投資企業の出資比率の合計が51%以上である外国投資企業
(c) 外国投資家及び上記(a)の外国投資企業の出資比率の合計が51%以上である外国投資企業
 
換言すれば、外国投資企業に対する外国投資家(及び/又は外国投資家が51%以上出資する外国投資企業)の出資比率の合計が51%未満であれば、当該外国投資企業がベトナム法人の設立・投資等を行う場合には、外資規制は原則として適用されないこととなります(下記図参照)。

 
 
 
 
 
 
 
(2) 本改正案上の外国投資企業に関する規制枠組み
 
本改正案においては、外資規制の適用対象となる外国投資企業の範囲を大きく変更することが提案されています。具体的には、外資規制の適用範囲を画する新たな概念として、「外国支配企業」(foreign controlled enterprises)という定義が新設され、以下のいずれかの要件に該当するベトナム法人については、他のベトナム法人の設立・投資等を行う場合に外国投資家と同様の外資規制を受けることとされています。

(a) 外国投資家がその持分又は普通株式の50%以上を所有するベトナム法人
(b) 外国投資家が直接又は間接的に(i)取締役会の構成員又は(ii)法定代表者の過半数を選任する権限を有するベトナム法人
(c) 外国投資家が定款の変更・追加の決定権限を有するベトナム法人

[表]ベトナム法人の設立・投資等につき外資規制を受ける外国投資企業の範囲の変更

現行投資法 本改正案
以下のいずれかに該当するベトナム法人
  1. 外国投資家の出資比率51%以上
  2. 上記①の外国投資企業の出資比率51%以上
  3. 外国投資家及び上記①の外国投資企業の出資比率51%以上
 
以下のいずれかに該当するベトナム法人
  1. 外国投資家の出資比率50%以上
  2. 外国投資家が直接又は間接的に(i)取締役会の構成員又は(ii)法定代表者の過半数を選任する権限を有する
  3. 外国投資家が定款の変更・追加の決定権限を有する
 
以上のとおり、本改正案においては、外国投資家(及び/又は外国投資家が51%以上出資する外国投資企業)の出資比率の合計が51%未満か否かという現行投資法上の枠組みは適用されず、(i)外国投資家が持分・普通株式の50%以上を所有するか否かという出資比率基準に加えて、(ii)外国投資家の出資比率が50%未満であっても、外国投資家が取締役会の構成員・法定代表者の過半数の選任権限、又は定款の変更・追加の決定権限を有するか否かという実質的な基準も考慮して、ベトナム法人への外資規制の適用の有無を判断することとされています。
そのため、上記(1)の図のように、日本企業の出資比率の合計が51%未満である外国投資企業がベトナム法人の設立・投資等を行う場合については、現行投資法上は原則として外資規制の適用対象外となるのに対して、本改正案に基づけば、まず、出資比率の合計が51%未満であっても50%以上である場合には外資規制の適用対象となり、また、50%未満であっても、当該日本企業が有する取締役会の構成員等の選任権限や定款変更等の決定権限の内容次第では、外資規制の適用対象となりうる点に留意が必要です。
また、現時点で外国投資家の出資比率の合計が51%未満であるものの50%を超えているベトナム法人について、本改正案がそのまま施行された場合に外資規制が事後的に適用されるか等についても留意が必要と考えられます。
 
以上のとおり、本改正案の内容は外資規制の適用対象範囲を変更するものであり、少なくとも今後進出する全ての日本企業に関係する重要な法改正の提案であると考えられます。但し、冒頭でも述べたとおり、本改正案は2019年1月時点の改正草案であり、今後その内容が変更される可能性もあるため、引き続き動向を注視していく必要があります。

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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