2019.01.23
ベトナム【ベトナム】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第39回『サイバーセキュリティー法に関する政令案の公表』
- 【ベトナム】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第39回
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このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights第94号(2019年1月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
◇ ベトナム:サイバーセキュリティー法に関する政令案の公表
ベトナムでは、本レター第88号(2018年7月号)にてお伝えしたとおり、サイバーセキュリティー法案が2018年に可決され、2019年1月1日より施行されています。このサイバーセキュリティー法に関して、規定の細目を定める政令の第2次草案(「政令案」)が2018年10月31日に公表され、2019年1月2日までパブリックコメントの対象とされていました(いまだ政令として公布はされていません)。本稿では、サイバーセキュリティー法に基づく規制のうち、特に日系企業の関心が集まるサーバーへの情報保存・支店等の設置義務の概要を説明した上で、当該義務に関する政令案の規定内容を含め、ご紹介します。
(1) サーバーへの情報保存・支店等の設置義務
サイバーセキュリティー法上、ベトナムにおいてテレコムネットワークやインターネット上のサービス、サイバー空間上におけるサービス等を提供し、個人情報等を取り扱う企業(「インターネット企業」)は、(i) 内国企業か外国企業であるかを問わず、一定期間、ベトナム国内のサーバーに当該情報を保存しなければならず、また、(ii) 外国企業については、ベトナム国内に支店又は駐在員事務所を設置することが義務付けられています。
これらの義務に関して、サイバーセキュリティー法では、義務の対象となる企業の範囲を含む規制の詳細は別途政府が定めることとされ、同法上明らかではありませんでした。
(2) 政令案の規定内容
上記サーバーへの情報保存・支店等の設置義務に関して、政令案は、義務の対象となる企業の範囲の詳細及びその適用関係について以下のとおり規定しています。
(a) 対象企業の範囲
企業は、以下のすべての要件を満たした場合に限り、サーバーへの情報保存・支店等の設置義務を負うこととされています。
① テレコムネットワーク、データの保管・サイバー空間での共有、eコマース、オンラインペイメント、SNS、オンラインゲーム等のいずれかのサービスを提供すること
② 個人情報、ユーザーにより生み出された情報(例:ユーザーがサイトにアップロードした情報等)、又はユーザーの人間関係(例:友人情報等)を受領、利用、検証又は処理すること
③ 当該企業が提供するサービスによりユーザーがサイバーセキュリティー法で制限される一定の行為(例:サイバー攻撃等、反政府活動、虚偽情報の流布、犯罪を構成する情報の掲示等)を行うことができること
④ 当該企業がサイバーセキュリティー法上の規制(例:ユーザー情報の検証、情報の秘匿管理、当局の要請に基づく情報の提供・データの削除等)に違反すること
政令案では、上記①から④の要件を「すべて」満たす場合に限り、企業はサーバーへの情報保存・支店等の設置義務を負うとされているため、対象となる企業の範囲はある程度限定されるように思われます。
(b) サーバーへの情報保存・支店等の設置義務の履行についての猶予期間
さらに、政令案では、上記サーバーへの情報保存・支店等の設置義務については、当局(Minister of Public Security)から要請があった場合に、当該要請日から12か月以内に履行すればよいこととされています。
以上のとおり、政令案は、サイバーセキュリティー法の規制を把握する上で重要な意味合いを有するものといえます。サイバーセキュリティー法は2019年1月1日から施行されていますが、上記政令案の規定を踏まえれば、インターネット企業は施行日から直ちにサーバーに情報を保存し、支店等を設置することが必ずしも求められているわけではないと考えられます。但し、政令案はまだ草案段階のものであり、最終的な政令では上記の内容に変更が生じる可能性もあるため、引き続きその動向を注視する必要があります。
(ご参考)
本レター第88号(2018年7月号)
http://www.mhmjapan.com/content/files/00031764/20180720-022852.pdf
(直近記事)
〇第36回『シンガポール 2018年8月31日付けで施行された会社法改正の要点』
〇第37回『ベトナム 外国人労働者の社会保険加入に関する政令の施行』
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- 【掲載元情報】
- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 制作