2018.02.26
インドネシア【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第28回『インドネシア BKPM新規則の制定』
- 【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第28回
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このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights第82号(2018年2月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
◇ BKPM新規則の制定
インドネシア投資調整庁(BKPM)は、2017年12月4日に「投資ライセンス及びファシリティの指針及び手続についての2017年第13号規則」(BKPM新規則)を制定し、2018年1月2日よりBKPM本庁において施行されています。BKPM新規則は、外国投資を促進することを企図した改正であり、重要な点についての改正を含みますので、以下ご紹介いたします。
(1) 投資基本許可制度の廃止
BKPM新規則が制定されるまでは、外資系企業がインドネシアにおいて投資するためには、まず投資基本許可(Izin Prinsip)を申請・取得し、操業の準備が整った後にビジネス・ライセンス(Izin Usaha)を申請・取得するという二段階のプロセスを経る必要がありました。
BKPM新規則は、既存の投資基本許可を廃止し、これに代わるものとして、資本投資登録(Pendaftaran Penanaman Modal)を定め、かつ、これが必要となる事業の範囲を限定しました。すなわち、資本投資登録の取得が義務付けられる事業は、(a)建設のために時間を要する事業、(b)投資インセンティブを利用できる事業、(c)中・高度の環境汚染のリスクがある事業、(d)国防、天然資源、エネルギー及びインフラに関する事業、及び(e)その他適用法令により定められる事業に限定されています。
そのため、上記事業に該当しない場合は、資本投資登録を取得する必要はなく、直接ビジネス・ライセンスの取得を行うことが可能となっています。
会社がビジネス・ライセンスを取得するためには、(a)会社が適法に設立されていること、(b)納税者番号(NPWP)を取得していること、(c)事業の所在地を確保していることという3つの要件を充たしている必要があります。また、BKPM新規則の下では、ビジネス・ライセンスを取得した会社は、取得から1年以内にライセンスに記載された事業を営む必要があるとされています。
(2) ダイベストメント義務の免除
また、BKPM新規則では、いわゆるダイベストメント義務の免除が可能となりました。ダイベストメント義務とは、外資会社は商業的活動の開始から15年以内に株式の一部をインドネシア人に譲渡しなければならないとされるルールのことで、15年ルールとも呼ばれます。ダイベストメント義務は、2007年の新投資法施行時に廃止されたため、新投資法施行後に設立された会社には適用がありませんが、新投資法施行以前に設立された外資会社には適用があり、会社の投資基本許可に義務の具体的内容が記載されています。
BKPM新規則では、株主総会決議及びBKPMの承認を経ることによって、ダイベストメント義務の免除が可能である旨が規定されています。上記株主総会決議には、インドネシア人株主が存在するPMA会社(外資が一株でも出資する場合にはPMA会社とみなされます)については、インドネシア人株主によるダイベストメント義務の履行を求めない旨の宣誓、外国株主が100%保有するPMA会社については、すべての外国株主によるインドネシア人への株式譲渡に係る合意又は約束が存在しない旨の宣誓が含まれている必要があります。なお、採掘事業のように、株式のダイベストメントについて、その他の法令による義務が課されている場合には、BKPM新規則は適用されないので、留意する必要があります。
また、BKPM新規則では、外国株主が100%保有するPMA会社について、ダイベストメント義務が免除された場合でも、将来的にインドネシア人当事者が要求したときには、ダイベストメント義務が復活する旨定められています。この定めについては、法令上、インドネシア人当事者についての定義がなく、インドネシア人であればいかなる当事者も要求をできるように思われ、また、期間の制限や、第三者による要求のプロセスや要件等の詳細が定められておらず、今後どのように運用されるかは現時点では不明な点が残ります。
(3) その他
上記のほか、BKPM新規則では、不動産事業における最低投資額要件(100億ルピア)の計算方法が変更されました。通常の事業であれば、最低投資額は土地建物を除く投資総額を意味しますが、不動産開発業及び不動産管理業については、最低投資額の計算に際して、土地及び建物への投資も考慮に入れることができるようになりました。
また、BKPMにおける拡張許可(Izin Perluasan)が必要とされる範囲についても改正がなされ、産業部門に属する会社について、従前は、キャパシティを30%以上拡大する場合にのみ拡張許可を申請する必要がありましたが、BKPM新規則の下では、いかなる量のキャパシティの増加についても、拡張許可の申請が必要になりました。
BKPM新規則の実際の運用はこれから始まるところでもあるため、今後の運用方法について注視する必要があります。
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- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 作成