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2014.04.09

その他のアジア【アジア】アジア通信/第29回 海外投資家から見た東京不動産の魅力③「東京不動産セミナー in シンガポール」
【アジア】アジア通信/第29回 
前回までのアジア通信(第27回第28回)では、データを基に、海外投資家の視点から、東京の不動産の魅力について考えてみました。
内容を要約すると以下の通りです。

<前回までの要約>
 ・「アベノミクス効果」や「東京オリンピック開催決定」による東京の不動産市場の活況が期待されている
 ・海外投資家からみると、東京の不動産は円建て資産であり、ドル下落時には東京の不動産のドル建て価格は上昇することになる。
    つまり、東京の不動産への投資により、ドル安リスクのヘッジが可能になる
 ・東京の不動産は他の先進諸国に比して、単位面積当たりの価格が低く、利回りが高い
 ・以上のことから、海外富裕層にとって、東京の不動産はその財産ポートフォリオの「守り」の中核として捉えることができる

では、実際に、海外投資家は東京の不動産に関心を持っているのでしょうか。結論は、「高い関心を持っている」です。

先日、弊社山田ビジネスコンサルティング(株)は、その兄弟会社山田不動産コンサルティング(株)と共に、シンガポールで、以上の東京不動産の魅力を説明するセミナーを開催いたしました。その参加者数・反響から、「海外投資家は東京の不動産に高い関心を持っている」との感触を得ることが出来ました。今回は、「東京不動産投資セミナー」の実録・海外投資家の生の声を紹介いたします。


1. 「東京不動産投資セミナー」概要
「東京不動産投資セミナー」の概要は以下の通りです。当初は100 名程度の参加を予想しておりましたが、実際には、約140 名が参加されました。参加者の多くが中華系のシンガポール人で、職業はプライベートバンカー、不動産業界関係者、不動産系ファンドなどです。
多くの参加者の方から「いい物件があったら、明日すぐに航空券を買って飛んでいきます!」、「日本によく行っている。不動産にも興味があるよ。」、「友人やクライアントが探しているから後で条件を伝えるね」、「(御社は)不動産ツアーをやっていませんか?」など、投資への高い関心を示すコメント・ご質問を頂きました。

(1) 演題
Tokyo Real Estate Investment Seminar
(2) 内容
アジア通信第27・28回をご参照ください。
(3) 開催日・回数
2014 年3 月12 日、13 日(2 回)
(4) 参加人数
約140 名
(5) 参加者の国籍
① シンガポール人 :約88%
② 日本人 :約10%
③ その他(インド・ベトナムなど) :約 2%
(6) 参加者の職業・属性等
① 富裕層を顧客に持つバンカー及び不動産エージェント :約65%
② 不動産系ファンド :約25%
③ 個人投資家・事業会社 :約10%

写真① 来場者の様子


写真② セミナー風景



2. 海外投資家の関心
(1) 投資対象エリア
関心の高いエリアは東京です(セミナーのテーマが「東京」であったからかもしれませんが)。
東京以外では、大阪・札幌が挙がりました。東京・大阪・札幌いずれも、シンガポール人が観光で訪れる場所です。
また、奥様が日本人(関西ご出身)というシンガポール人の方から「マーケットとしては東京が魅力的だが、奥様のことを考慮すると関西にも関心がある」とのコメントもありました。訪れたことのある場所や何らかの縁がある場所は身近に感じられ、投資に対する心理的ハードルも低くなっているのかもしれません。

(2) 投資対象物件
関心の中心は、マンション・オフィスビル・ホテルなどの一棟買いです。「実は新宿と上野のホテルに投資していて、次も東京のホテルへの投資を考えている」と言う方もおり、中小規模のホテルに投資したい・既に投資しているという方の多が印象的でした。また、「日本のヘルスケア施設に投資したい。公共性が高くいろいろな規制があると思うが、外国人でもできるのか。」という質問もありました。

(3) 投資目的
キャピタルゲイン狙いの方、長期に亘る財産価値の維持を考えている方など、投資目的は様々でした。


3. 海外投資家の抱く懸念
(1) ファイナンス環境
最も質問の多かった懸念事項が、日本の不動産に対する融資についてでした。
率直に「ファイナンスについても協力してくれるのか。」とのご相談が最も多かったように思います。
日本の金融機関は、非居住者を対象とした日本の不動産融資を行っていない、もしくは極めて取組みが困難、というのが現状です。不動産投資のためのSPC(特別目的会社)等を日本に設立し融資を受けるという方法もありますが、投資規模が小さければ、コスト倒れとなり、投資として成り立たなくなる場合もあります。
最近、シンガポールの地場銀行がシンガポール人を対象に、日本の不動産への融資を開始しています。担保価値・金利・投資不動産自体に関する制約など、良い条件とは言いがたいですが、サービス提供を開始した当初から反響が大きく、融資実績は堅調であるようです。

(2) 日本の税制
次に多かったのが不動産投資に関わる日本の税制です。
「何かにつけて、いちいち掛るんだな」と驚きのような、呆れたような表情で言われたのが印象的でした。
不動産投資には、登録免許税・固定資産税・譲渡益課税など、不動産を取得し、維持し、賃貸収益を得て、売却をするという一連のプロセスの中で、実に様々な税金が関わってきます。
比較的単純な税制に慣れているシンガポール人は、ストレスを感じるのかもしれません。
現状では、日本で非居住者投資家へ税務サポートを行っているのは、4 大監査法人系が中心であり、投資規模に見合わぬ報酬を払わざるを得ないという状況も投資家の懸念材料です。

(3) 原発問題と地震
「地震が多いから不動産投資は心配だな。」、「放射線は大丈夫か。」というような声が多く聞かれました。原発問題と地震に対する懸念には根強いものがあります。ネガティブなイメージの払しょくにはまだ時間がかかりそうです。


4. 他国への展開
今回のセミナーの盛況を受け、ジャカルタ(インドネシア)でも同様のセミナーを開催することになりました。その顛末も、適宜「アジア通信」にて報告いたします。

以上、「東京不動産投資セミナー」の実録とシンガポールの投資家の生の声でした。シンガポールの投資家の関心の高さ、感じて頂けましたでしょうか。

筆者がシンガポールに赴任してから3 年が経とうとしています。シンガポールや周辺国の方々の日本に対する関心は、安倍政権の発足以降、これまでになく高まっていると感じます。地元紙に取り上げられる日本関連の記事も、安倍政権前と比べて、格段に増えています。不動産以外の分野に対する関心も高まっているものと想像いたします。
東南アジアに関するビジネスチャンスは、東南アジアに進出することだけにあるわけではありません。また、不動産にだけあるわけでもありません。日本に関心を持っている東南アジアの方々や企業に向けたビジネスのチャンスが日本国内には沢山あると感じます。


※「アジア通信」過去記事は 国別情報一覧 に掲載しています。

【掲載元情報】
山田ビジネスコンサルティング株式会社 シンガポール支店 マネージャー 喜多 泰之
[略歴]
2007年4月山田ビジネスコンサルティング(株)入社。
日本国内の中堅中小企業の再生支援業務に携わる。
2011年6月にシンガポールへ渡り、シンガポール事務所立ち上げに従事。
2012年4月のシンガポール支店設立以降は、日系企業のASEAN各国への進出やM&A、
進出している日系企業のサポート業務などに携わり、経営の観点から日本企業の
アジア進出をサポートする。

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