2025.05.08
インドネシア【インドネシア】弁護士法人One Asia/第58回「法人の実質的支配者の検証と監督に関する法務大臣規則2025年2号の施行」
- 【インドネシア】弁護士法人One Asia/第58回「法人の実質的支配者の検証と監督に関する法務大臣規則2025年2号の施行」
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◇インドネシア
1. はじめに
法務大臣は、法人の実質的支配者(Beneficial Owner)の確認および監督に関する規則第2号(「MoLR 2/2025」)を発行し、法人の実質的支配者確認(Know-Your-Beneficial-Owner / KYBO)原則の適用における法人の責任を拡大しました。
本規則では、従前KYBOについて定めていた法務人権大臣規則2019年21号(以下、「MLHR21/2019」)と比べて、より明確に法人による義務が規定されております。
2. 実質的支配者とは?
MoLR 2/2025第1条2項では、「実質的支配者」とは、会社における取締役会、監査役会、経営陣、指導者、または監督者を任命または解任する権限を有し、会社を管理する能力があり、会社から直接または間接的に利益を受ける権利を有し、または実際に利益を受け、会社における資金または株式の実質的な支配者であり、および/または法律および規則の規定に定められた基準を満たす個人と定義されています。
3.法人の新たな義務
MoLHR 21/2019でも規定されていたように、法人は実質的支配者を特定する必要があります。これに加え、MoLR 2/2025は、KYBO原則の遵守を確保するために、下記のような新しい義務を規定しています。
a.KYBO原則の実施義務(3条1項)
・実質的支配者に関連する文書の管理・維持
・実質的支配者に関する質問への回答
b.KYBO手続きの実施(4条1項)
・実質的支配者の特定と検証
・誰が実質的支配者として適格かを決定
・法務大臣に実質的支配者情報を提出
4. 誰が実質的支配者の検証の実施に責任を持つのか?
MoLR 2/2025に基づき、実質的支配者の検証はマネーロンダリングやテロ資金供与に関するリスクなど、特定のリスク評価に基づいて実施されと規定されています(5条)。この検証の責任は以下の関係者にあるとされています。
・法人(6条)
法人は、特に法人設立、変更、年次更新を報告する場合には、添付書類を確認し、実質的支配者の情報が正確であることを確認しなければならない。
・公証人(第7条)
法人が公証人サービスを利用する場合、公証人はコーポレート・アクションを促進するために実質的支配者の検証プロセスにも関与する。
・法務大臣大臣(第8条)
法務省は、法人および/または公証人から提出された実質的支配者の情報を確認し、法人が記入した実質的支配者に関する質問票を審査することによって検証を行う。
・その他の政府機関(第9条)
他の機関も、それぞれの法的義務および規制当局に従って実質的支配者の検証を実施することができる。
5.実質的支配者に関する質問票の記入要件の拡大
MoLHR 21/2019において、法人の義務とされていた実質的支配者に関する調査票の記入について、MoLR 2/2025は、よりも広く公証人にも適用され旨を規定します(10条1項)。
上記、実質的支配者に関する質問票は、以下の場合に記入しなければならないと規定されておりいます(第10条第3項)。
・法人を設立、登録、認可する場合
・法人の定款を変更する場合
・法人データを更新する場合
・法人の実質的支配者に関する情報を報告、変更、更新する場合
6.実質的支配者の情報提出に対する監督
MoLR 2/2025は、KYBO原則の適用に関する法人の監督については、よりシンプルにこれを規定しています。法人による実質的支配者の情報の提出、変更、更新が含まれ、この監督は、KYBO原則の適用方法に応じて、電子的または非電子的な形で行われるとされております(18条〜21条)。
7.違反に対する処分
MoLR 2/2025では、法人が実質的支配者に関する情報の報告または更新義務を果たさない場合、大臣は行政制裁を科すことができるとしています。これらの制裁は以下のような法人に適用されます(22条1項、2項)。
・実質的支配者を報告しない法人
・虚偽尾情報を提供した法人
行政処分には以下が含まれます(22条3項)。
・文書による警告
・法務省のブラックリストへの法人名の掲載
・同省のオンライン法務管理システム(AHUオンライン)へのアクセスの遮断
この制裁措置は、法人が関係当局によって検証された完全かつ正確な実質的支配者の情報を適切に提出した場合にのみ解除されるとされております(25条)。
8.結論
上記のように、MoLR 2/2025は、法人の実質的支配者についての透明性の強化を趣旨として、従前より詳細な法人の義務や、行政制裁を規定しております。
これにより、インドネシアにける日系企業においても、実質的支配者の報告は、コーポレートガバナンスの重要な一部として、これまで以上に正確かつ適切な対応が必要となると考えられます。
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本ニュースレター(2025年4月14日号)
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