2024.09.09
- その他のアジア【ミャンマー】弁護士法人One Asia/第43回「ミャンマーの法定最低賃金の維持および特別手当の増加」
- 【ミャンマー】弁護士法人One Asia/第43回「ミャンマーの法定最低賃金の維持および特別手当の増加」
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◇ミャンマー
1. はじめに
ミャンマーにおいて、2024年8月に通達により、企業が法定最低賃金に上乗せして支払わなければならない特別手当を引き上げたと発表しており、その内容につき、概説させていただきます。
2.法定最低賃金の維持および特別手当の増加
ミャンマーにおいて、全国最低賃金委員会(the National Committee for Setting the Minimum Wage)は2024年8月9日に通達となるNotification No. 1/2024(以下「本通達」という。)を公表し、企業が法定最低賃金に上乗せして支払わなければならない特別手当を1日当たり1,000チャットから2,000チャットに引き上げたと発表した。
法定最低賃金は日額(8時間労働)4,800チャット(時給600チャット)で据え置かれており、法定最低賃金に特別手当を加算した支給額は日額6,800チャットとなった。総支給金額が増加したため、実質的な最低賃金の増額といえる。
3.法定最低賃金および特別手当の経緯
現行の法定最低賃金4,800チャット(日額)は、場所や職種に関係なく全ての労働者を対象に2018年5月に3,600チャットから引き上げられていた。
法定最低賃金は最低賃金法に基づいて2年ごとに最低賃金額を変更することができる制度になっているが、本通達では法定最低賃金自体に変更はなく、4,800チャットとして2018年から据え置かれている。
他方、2023年10月から支給を義務化した特別手当1,000チャットを本通達により2,000チャットに増額している。
その結果、2024年8月1日より、法定最低賃金4,800チャットと特別手当2,000チャットの合計6,800チャットを受け取る権利が与えられることとなった。
なお、従業員数が10人未満の零細企業や家族経営の企業などは、特別手当の支給義務が免除されている。
4.公務員向け特別手当
特別手当は、公務員向けにも付与されている。2024年7月26日には、公務員向けに2023年10月から月3万チャットを基本給に上乗せして支給してきた特別手当を6万チャットに増額していた。定年退職した職員にも毎月3万チャットを支払う旨、併せて公表されている。
5.特別手当増額の背景
本通達による特別手当の増額により、2018年から据え置かれていた最低賃金が、1年間に2度、実質的に増額されたと言える。マーケットでのチャットの価値は2021年2月1日のクーデター前から5分の1未満まで下がっており、今後も引き続き下落するおそれがある。法定最低賃金が6年前から据え置かれているにも関わらず、チャットが下落しており、このことは実質賃金の低下を意味している。また、チャットの下落に伴い、ガソリン価格をはじめとする物価上昇は著しく、生活に困窮した公務員や市民の不満を抑えるため特別手当を増額したものと推測される。
通貨安、輸入規制など事業活動に困難な状況が続いているが、今後の動向に注意が必要となる。
以 上
〈注記〉本資料に関し、以下の点ご了承ください。
・ 本資料は2024年8月16日時点の情報に基づき作成しています。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化、実務上の運用の変更に伴い、本資料は変更となる可能性がございます。
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(ご参考)
本ニュースレター(2024年8月19日号)
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〇第40回 【ラオス】「ラオスにおけるドライポートについて」
〇第41回 【シンガポール】「シンガポールにおけるFlexible Work Arrangement (FWA)の導入について(前編)」
〇第42回 【ベトナム】「ベトナム2023年電気通信法の注目すべき変更点」
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