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2023.09.04

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第69回「雇用企業がセクハラ防止義務をどのように履行すれば免責されるか」
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第69回
『雇用企業がセクハラ防止義務をどのように履行すれば免責されるか』

『民法典』第1010条第2項の規定によると、雇用企業はセクハラ防止義務があり、当該義務は法定の注意義務に属する。雇用企業が当該義務を尽くさない場合、過失があり、『民法典』第1165条第1項の規定により権利侵害責任を負う。

但し、『民法典』などの法令では、雇用企業がセクハラ防止義務をどのように履行すれば権利侵害責任を免除されるかを明確にしておらず、司法実務には、雇用企業がセクハラ損害賠償訴訟において免責された事例もなく、雇用企業はセクハラ防止義務の履行において多くの困惑に直面している。 
 
『分析』:


2023年3月8日、人力資源・社会保障部などの6部門は2つの内部統制システム参考文書を配布しており、女性従業員への保護及び職場におけるセクハラの防止に焦点を当てている。そのうち、『職場におけるセクハラ防止制度(参考文書)』は、雇用企業がセクハラ防止の法定義務を履行する指針となっている。『職場におけるセクハラ防止制度(参考文書)』は計7章あり、総則、公開承諾、宣伝教育、従業員の通報・クレーム、調査・処置、労働組合の監督への関与、附則を含む。これを参考にして、雇用企業は以下の方面によりセクハラ防止義務を履行すると考えられる。   

(1)公開承諾。雇用企業の上層部は、雇用企業も上層部もセクハラ行為に対してゼロトレランスの姿勢を取ることを全従業員に公開する。

(2)セクハラ防止規則制度の策定。規則制度においてセクハラの定義を明確にし、セクハラの範囲、構成、表現形式、主要なタイプを定義し、セクハラ行為者に対する懲戒措置を制定する。

(3)明確な内部クレーム処理制度を設立し、従業員のクレーム手順、受理、処理、結果通知などのプロセスを定める。

(4)報復禁止の措置。従業員がクレームをつけた後、クレームをつけた従業員とクレームをつけられた従業員に対して、物理的隔離と業務上の隔離を含む隔離措置を直ちに講じ、従業員からの人身保護請求に適時対応する。

(5)個人情報と人格権への保護措置。セクハラ事件に対して調査を行う時に、個人の人格権と個人情報を保護し、関連資料における秘密保持をしっかり行う。

(6)教育宣伝。セクハラ防止規則制度を日常の宣伝・徹底制度の範囲に入れ、教育宣伝により、セクハラとは何か、セクハラを如何に防止するか、セクハラを受けた後の救済措置を従業員に知らせる。

以上のことから、雇用企業は事前予防、適時制止、事後処理の3つの方面においてセクハラ防止義務を履行しなければならない。又、従業員が職権関係、従属関係を利用してセクハラを実施する行為に特に注意を払うべきである。セクハラの類似行為が発生した場合、雇用企業は被害者がセクハラを制止し、救済を求めるのに必要なサポートを与え、セクハラ行為者を厳しく処罰するべきである。


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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。

[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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