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2023.11.15

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第70回「「企業中長期外債審査登記管理弁法」及び関連文書の検討」
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第70回
 「企業中長期外債審査登記管理弁法」及び関連文書の検討 』

Q:国家発展改革委員会(以下「発展改革委員会」という)は2023年1月5日に『企業中長期外債審査登記管理弁法』(国家発展改革委員会令第56号、以下『56号文』という)を公布し、『企業外債発行届出登記制管理改革の推進に関する国家発展改革委員会の通知』(発改外資(2015)2044号、以下『2044号文』という)を廃止した。『56号文』は2023年2月1日より施行されている。

2023年2月9日、発展改革委員会は、企業による中長期外債の借用に関する問題の解答及び『企業による中長期外債の借用に関する審査認可事務マニュアル』(以下『56号文関連文書』と総称する)を公表した。『56号文』及び『56号文関連文書』の主な内容と変化点について検討する。
 
『分析』:


A:『56号文』及び『56号文関連文書』は発展改革委員会が企業の中長期外債に対する主要な監督管理文書であり、監督管理の関連規則と審査登記の関連事項を明確にした。その主な内容と変更点は以下の通りである。

1、企業外債審査登記の監督管理方式の明確化

『56号文』によると、外債リスクを効果的に防止するために、企業は外債を発行する前に、企業による中長期外債発行の審査登記手続を行い、かつ約定通りに初回の預金引出前に審査登記手続を完了し、『企業による外債借用の審査登記証明書』を取得しなければならない。さもなければ、外債を発行してはならない。

発展改革委員会は企業による外債発行に対して中間・事後の監督管理を実施する。つまり、企業は毎回外債を発行してから10営業日までに、発行した外債の情報を報告しなければならない。『企業による外債借用の審査登記証明書』の有効期間(発行日から1年間とする)が満了してから10営業日までに、相応の外債発行状況を報告しなければならない。毎年1月末と7月末前の5営業日までに、外債資金の使用状況、元利の支払状況と計画、主要な経営指標などを報告しなければならない。

2、企業外債審査登記の申請主体の範囲の明確化

『56号文』及び『56号文関連文書』によると、企業外債審査登記の申請主体は「中華人民共和国国内企業及びその支配する海外企業又は支店」であり、具体的な申請主体は『2044号文』に規定された「中央管理企業と金融機関のグループ本部(本社、本店)、地方企業(金融機関を含む)」から「国内持株企業本部(本社、本店)」に調整されており、海外企業は申請主体としてはならない。

3、企業外債審査登記の申請主体の資格の明確化

『56号文』によると、企業中長期外債登記の申請資格は以下の通りである。企業は外債を発行するには、以下の基本条件を満たす必要がある。

(1)法に基づいて設立され、合法的に存続して経営し、健全かつ運営が良好な組織機構を備えている。
(2)合理的な外債資金の需要があり、用途が上述の規定に適合し、信用状況が良好で、債務返済能力と健
    全な外債リスク防止メカニズムを備えている。
(3)企業およびその支配株主、実際の支配者は直近三年間、汚職、賄賂、財産横領、財産流用や社会主義
    市場経済秩序を破壊する刑事犯罪、或いは犯罪や重大な違法行為・規律違反行為の疑いで法により立
    件調査された事実が存在しない。

4、企業外債審査登記の「債務ツール」の範囲の具体化 

企業による外債借用登記の申告範囲は「海外から借り入れ、人民元建て又は外貨建てとし、約定通りに元金返済・利息支払を行う1年期以上(1年期を含まない)債務ツール」であり、その中の「債務ツール」の範囲は、『2044号文』に規定された「海外発行債券、中長期国際商業貸付」よりも具体的であり、「優先債、永久債、出資社債、中期手形、転換社債、他社株転換可能債、ファイナンスリース、商業ローンなど」を含むが、これらに限らない。1年期以内の外債業務は国家外貨管理局が直接管理している。

5、国内企業が間接的に海外で外債を発行する場合にも『56号文』を適用する

『56号文』によると、当該文書は、国内企業が間接的に海外で外債を発行する場合にも適用される。つまり、国内で主な経営活動を行っている企業が、海外に登録された企業の名義で、国内企業の持分、資産、収益またはその他の類似する権益に基づいて、海外で債券を発行したり、商業ローンを借り入れたりする場合は、『56号文』を適用する。

『56号文関連文書』によると、「国内で主な経営活動を行っている企業」の定義については、形式より実質を重視する原則に従い、財務指標、経営状況などから判断する。例えば、国内企業の営業収入、純利益、総資産または純資産のいずれかの指標が、発行者/借主の同期監査済み連結財務諸表の関連データに占める割合が50%を超え、かつ経営活動の主要な一環が国内で展開されているか、または主要な場所が国内にある場合(或いは経営管理を担当する高級管理者の多くが中国公民または経常居住地が国内にある場合)は、規定に従い申請しなければならない。   

6、企業による外債発行の用途の関連規定

『56号文』によると、企業は自身の信用状況と実際の需要に基づき、国内外で外債資金を使用することを自主的に決定することができ、その用途は以下の条件を満たすべきである。
(1)中国の法律法規に違反しない。
(2)中国の国家利益と経済、情報データなどのセキュリティを脅かさず、損害しない。
(3)中国のマクロ経済調整目標に違反しない。
(4)中国の関連発展計画と産業政策に違反せず、地方政府の隠れた債務を新たに追加しない。
(5)投機的売買、価格吊り上げなどの行為に使用してはならない。又、銀行系金融企業を除き、他人に転
    貸してはならない。但し、外債審査登記申請書類において関連状況を記載し、且つ承認を得た場合を
    除く。

これは、『56号文』では「損失を填補してはならない」という用途の制限を削除する一方、外債審査登記申請書類において用途を貸出と明記し、かつ承認を得た場合に、企業の借用した外債を他人への貸出に用いる可能性が高まることを意味している。

企業による中長期外債の発行に対する審査期限も大幅に延長され、『2044号文』に規定された「受理日から7営業日以内」から「受理日から3か月以内」に調整された。そのため、企業は外債を発行する前に、企業による中長期外債借用の審査登記手続を完了する期間に十分余裕があることを確保しなければならない。 


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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。

[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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