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2023.09.04

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第68回「有限公司の取締役は如何に合法的に辞任するべきか」
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第68回
『有限公司の取締役は如何に合法的に辞任するべきか』

『会社定款』により、有限公司であるA社の取締役は計3名いる。最近、取締役会において、取締役の張さんは他の取締役と経営理念の違いで口論になり、怒りのあまり「辞める」と言った。他の取締役は、「張さんが腹立ちまぎれに言った言葉だ」と判断し、気にしなかった。

考慮の上、張さんは取締役を辞任すると決定し、電子メール、ウィーチャットグループ、郵送で会社の法定代表者、他の取締役に対して、取締役を辞任することを通知した。その後、張さんはすぐにB社に入社して総経理を務めている。

A社はそれを知った後、「張さんによる取締役辞任は効力が生じていない。A社とB社は同種の業務を行っている」ことを理由に、訴訟を提起し、「張さんが取締役職務の履行を継続し、B社からの所得をA社に帰属させる」ことを請求した。では、A社の請求は法的根拠があるのでしょうか。  

 
『分析』:


現行の『会社法』には、取締役と会社との関係について明確な規定がなく、司法実務における主流の考え方は、取締役と会社との関係は法的性質において委託契約関係に属し、『民法典』第933条の「委託者と受託者はいずれも委託契約を随時解除することができる。」の規定を適用し、取締役に任意解除権、即ち随時退職の権利を付与すべきであるというものである。  

1、取締役辞任通知を誰に出すべきか?

司法実務における主流の考え方により、取締役と会社は委託契約関係に該当する以上、取締役は一方的に委託契約関係を解除する場合、会社に通知することが当然である。会社は法律によって制定される法人であり、法定代表者は会社を代表するので、取締役が法定代表者を兼任していない場合に、取締役は会社の法定代表者に辞任通知を直接出すことができる。取締役が法定代表者を兼任している場合は、取締役会、即ち他の取締役に対して辞任通知を出すべきである。当然、会社定款や社内規定で指定者を規定し、会社を代表して正式に通知情報を受け取ることを明確にした場合は、当該指定者に対して辞任通知を出すこともできる。  
2、取締役の辞任はどのような形式をとるべきか?

取締役会は会社の執行機関であり、会社に対して具体的な経営管理を行う。取締役の変更は会社の内部管理と対外取引に関係し、取締役の変更が発生した場合は、通常、会社決議と会社外部登記変更手続を行わなければならない。従って、取締役の辞任は書面で行うのが最善である。

3、取締役の辞任は会社の承認が必要であるか?

取締役と会社は委託契約関係にあるため、取締役の辞任権は形成権に属し、司法実務における主流の考え方は「到達主義」を原則とし、通常、取締役辞任通知は会社に届いた時から法的効力が生じ、会社の承認は必要ではない。但し、法律と会社定款に別途規定がある場合、又は会社と辞任予定者である取締役が当該取締役による辞任届の撤回に合意した場合を除く。  

4、取締役辞任は制限があるか?

取締役会は会社の正常な運営にとって重要であるため、法律は取締役の辞任に対して制限を加えている。
『会社法』第45条第2項には、「取締役の任期満了時に直ちに改選しない場合、 又は取締役の在任期間中の辞任により取締役会メンバーが法定人数を下回った場合は、改選により選ばれた取締役が就任するまでに、元の取締役は依然として法律、行政法規及び会社定款に従い、取締役の職務を履行しなければならない。」と規定している。当該規定によると、取締役の辞任により取締役会メンバーが法定人数(3人)を下回った場合、取締役辞任通知は会社に届いたとしても直ちに発効せず、後任の取締役が就任し、かつ取締役会メンバーが最低人数に達するまで待つ必要がある。

本件において、張さんが取締役を辞任する場合は、取締役の辞任を制限する状況が発生するので、張さんの取締役辞任通知は効力が発生しない。A社の新しい取締役が就任するまでに、張さんは依然として法律と規則に従い取締役の職務を履行しなければならず、かつこの期間中に依然として競業避止義務を負う。従って、張さんがA社と同種の業務を行うB社の総経理を務めることは、競業避止義務に違反し、張さんは法により相応の法的責任を負うべきである。


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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。

[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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