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2023.06.26

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿/第66回「自動運転による交通事故はどちらが責任を負うべきか」
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第66回
『自動運転による交通事故はどちらが責任を負うべきか

李さんは自動運転機能を搭載した最新型の車を購入した。ある夜、李さんは道に他の車も歩行者もいないのを見て、自動運転機能をオンにした。一定距離の自動運転をした後、前方に作業中の清掃車が現れ、自動運転中の李さんの車は自動的によけたり、ブレーキをかけたりしなかったため、交通事故が発生した。李さんは、「事故の根本的な原因は、自動運転機能が前方の車両を認識できなかったためである」と判断し、訴訟を提起し、車両メーカーに賠償責任を負わせるよう請求した。

『分析』:

中国の現在有効な『道路交通安全法』には、自動運転に関連する規定はない。2021年3月24日に公安部は『道路交通安全法(改正提案稿)」の公開意見募集公告を発表した。今回の改正提案稿では自動運転に関連する規定を追加した。 

改正提案稿によると、自動運転機能を搭載し、かつ人による直接操作モードを備えた自動車が路上テストを行い、又は道路を通行するときに、走行データをリアルタイムで記録する。運転手は運転席に座り、車両の運行状態と周囲の環境を監視し、いつでも車両制御ができるように準備をする。道路交通安全の違法行為又は交通事故が発生した場合は、法により運転手、自動運転システム開発業者の責任を確定し、関連法律、法規に従い損害賠償責任を確定する。犯罪になる場合は、法により刑事責任を追及する。 

現在、中国の国家基準では、自動車自動運転を低いものから高いものまでL0~L5の6つのレベルに分けている。この6つのレベルのうち、レベルの低い自動運転は運転補助の役割しか果たさず、運転の主体は依然として運転手である。レベルの高い自動運転は完全に運転手による制御から脱し、人間の代わりに運転任務を遂行でき、運転の主体は運転手ではなく、システムである。従って、運転手以外に、自動運転システムの開発業者も責任を負う主体になる可能性がある。 

どちらが交通事故について責任を負うべきかについては、権利侵害責任の視点からみて、因果関係及び過失から判断すべきである。まず、運転行為と損害との間に因果関係があるか否かを判断する。因果関係がある場合に、事故はどちらの過失によるものかを判定する。例えば、事故発生時に車両は運転手による制御中であるか、それとも自動運転中であるか、或いは運転手による制御と自動運転が並行しているのか。事故の原因は、運転手が法律や制御準則に従わなかったことによるか、それとも品質問題により自動運転システムが正常に作動しなかったことによるか。もちろん、様々な要因が存在する場合は、各当事者は過失の割合に応じて責任を分担する。

​以上のことから、飛行機の「ブラックボックス」のように運転データを記録・保存する機能を持つ車種を購入したほうがよい。そうすると、事故が発生すれば、関連データは保存され、責任確定にも役立つ。又、自動運転モードにおいても、道路状況を監視し、事故を防ぐべきである。
  
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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。

[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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