2023.02.21
- その他のアジア【マレーシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第88回「労働組合法の改正の動き」
- 【マレーシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第88回「労働組合法の改正の動き」
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このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights第148号(2023年2月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
※本レターに記載した円建て表記は、ご参照のために、各現地通貨を現在の為替レートで換算したものとなります。
◇マレーシア:労働組合法の改正の動き
マレーシアでは2022年10月5日に労働組合法の改正案が下院を通過しました。上院で可決されれば改正法として成立することとなります。改正点は労働組合の設立・登録の要件・手続、ストライキ等を実施できる場面の拡大、労働組合局長の権限の拡大及び労働組合の役職員の責任規定の創設等、多岐にわたりますが、現時点で想定される主要な改正点について以下のとおりご紹介いたします。
(1) 労働組合の組織の柔軟化
現行法のもとでは労働組合は「特定の組織、業界、職業及び産業における、又は類似の業界、職業及び産業における」組織と定義されているため、業界横断的な労働組合が組織されることは想定されていませんでした。改正法案においてはこの制限が撤廃されたため、業界横断的な労働組合が組織されることも可能になりました。またこれに伴い、一つの事業所において複数の労働組合が組織される可能性も生じています。
(2) 労働組合の登録拒絶・取消の事由の限定
現行法のもとでは、労働組合が登録を受けていない場合には、企業には労働組合の要求に対する対応の義務は生じないとされています。労働組合局長には労働組合の登録申請を拒絶する権限が与えられているのですが、改正法案においては、登録を拒絶できる事由が、①当該労働組合の目的、規則及び設立規約が労働組合法その他の法令に反していると判断できる場合、又は②当該労働組合の名称が既存の労働組合の名称と同一又は酷似しており、公衆又は当該労働組合若しくは既存の労働組合の構成員を欺く効果が生じると考えられる場合、又は異なる人種・宗教・国籍の間での悪意・敵意を助長すると考えられる場合(労働組合局長が認める名称への変更をした場合を除く)に限定されることとなり、拒絶の場合にはその理由を書面で通知することが求められることとなりました。
また、労働組合局長が労働組合の登録を取り消すことができる場合も、①労働組合の解散により労働組合自身から請求された場合、②詐欺又は誤りにより登録証が発行された場合等の労働組合局長が認める一定の場合、③労働組合の合併や任意清算の場合、④国家に対する犯罪、テロリズムに関する犯罪、組織犯罪等の一定の犯罪を理由に起訴された場合などに限定されることとなりました。
改正法案の内容は上院での議論を受けて変更になる可能性もありますが、大きな流れとしては労働組合を組織しやすくする方向の改正ということができ、マレーシアにおいて操業している日系企業の皆様としても注視をしておく必要があろうかと存じます。
(ご参考)
本レター第148号(2023年2月号)
20230220-020535.pdf (mhmjapan.com)
(直近記事)
○第85回【マレーシア】「労働法の最新動向」
○第86回【シンガポール】「暗号資産に関する規制案の公表」
○第87回【インド】「個人情報保護法の新法案の上程」
- 【掲載元情報】
- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 制作