国別情報一覧

HOME > 国別情報一覧 > シンガポール > 詳細

国別情報一覧

2022.07.07

シンガポールシンガポール【シンガポール】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第2回「不動産規制」
【シンガポール】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第2回「不動産規制」
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。
 
シンガポール編第2回「不動産規制」

シンガポールにおいては、終局的には土地は国に帰属するとされ、国は個人・企業に対して不動産権(Estate)を付与しています。大別すると、Freehold Estate、Leasehold Estate、Estate in perpetuityの3種類がある。このうちLeasehold Estateと呼ばれる不動産権が、主として不動産取引の対象となっています。

これを踏まえて、本稿では、1. シンガポールの不動産法制の概略を紹介し、2.シンガポールの不動産登記制度(その沿革から2種類の異なる制度が併存しているという特色があります)について説明し、3.外国人・外国法人による不動産取得規制について検討を加えた後、4. 実際上、日本企業がシンガポールに進出する場合に締結することになるであろう賃貸借契約についても若干述べることとします。
 
1.不動産法制
1Freehold Estate
Freehold Estateには、Fee simpleと、Life estate の2種類があります。Fee simpleとは、無条件かつ無期限の保有権であり、相続も可能とされます。一方で、Life estate とは、権利者が存命中に限って不動産を保有する権利であり、相続はされません。

(2)Leasehold Estate
Leasehold Estateとは、国が付与した不動産に対する有期の排他的支配権/使用権であり、リース期間が満了すれば当該不動産は国に返還されることになります。

リース期間は99年又は999年と設定されることが多いですが、JTCコーポレーションや住宅開発局(Housing and Development Board:HDB)によって付与されるLeasehold Estateの場合は、リース期間が30年又は60年に短縮される場合があります。

3Estates in perpetuity
 Estates in perpetuityとは、1920年に施行された土地法(State Lands Act)に定められた特定の条件に従って、不動産を無期限に保有する権利です。
 
2.不動産登記制度
シンガポールにおける不動産の登記制度は、従前は、証書登記法(Registration of Deed Act )等に基づく証書登記制度(Register of Deed)が採用されていました。この制度の下では、一定の不動産上の権利の設定及び譲渡は捺印証書(Deed)を用いて行わなければならず、かかる捺印証書自体を登記する証書登記(Registry of Deed)と呼ばれる方法が採られていました。

その後、土地権原法(Land Titles Act )及びストラタ土地権原法(Land Titles (Strata) Act)が制定され、2002年には、トーレンス制度(Torrens System)に基づく土地権原登記(Registry of Land Titles)と呼ばれる不動産登記制度 が導入されました。その後、現在に至るまで、シンガポール国土庁(Singapore Land Authority: SLA)は、トーレンス制度に基づく土地権原登記への転換を進めています。

現在、シンガポールの大部分の土地は、土地権原登記がされていますが、なお証書登記の方法が用いられている土地も残存しており、2つの不動産登記制度が併存している状態にあるため、注意が必要です。

トーレンス制度においては、不動産に関する一定の権利の設定・移転については、不動産登記が効力要件とされており、適式な申請書により権利の設定・移転が登記された場合には、当該申請書が捺印証書とみなされます(実質的に、登記に公信力を認める制度であるということができます)。逆に、不動産売買契約書に正式に署名したとしても、適式な申請書により不動産登記を経ない場合には、当該不動産取引は効力自体が発生せず、譲渡人の不動産に関する権利は、譲受人には移転しないため、注意が必要です。

なお、シンガポールにおける不動産登記情報は、土地の権利者による情報提供等の協力が必要なく、インターネットによって閲覧が可能であり、この限りにおいては極めて利便性が高く、透明性もあるということができます。
 
3. 外国人・外国法人等による不動産取得規制
シンガポールにおいては、外国人・外国法人等であっても、非居住用の不動産については、自由に取得・保有・処分することができます。これに対し、居住用不動産については、主として1973年に施行された居住用不動産法(Residential Property Act)により、外国人・外国法人等による取得に制限が課せられています。

1)外国人・外国法人等
居住用不動産法(Residential Property Act)における外国人・外国法人等とは、以下に掲げる者以外の者をいいます。 b) c) d)に関しては、その役員・構成員の全員がシンガポール人・シンガポール法人等であることが必要です。

a)シンガポール人
b)シンガポール法人
c)シンガポール有限責任組合(LLP)
d)シンガポール社団(society)

2)居住用不動産
外国人・外国法人による取得が制限される居住用不動産は、居住用不動産法(Residential Property Act)において定義されており、外国人・外国企業が取得するためには、法務大臣(Minister for Law)から事前承認を取得する必要があります(事前承認の判断にあたっては、外国人・外国法人のシンガポール居住年数や経済的貢献度等が考慮されます)。シンガポール国土庁(Singapore Land Authority: SLA)によれば、居住用不動産の具体例としては以下に掲げるような不動産が挙げられます。

a)居住用の更地
b)低層集合住宅(Terrace house)
c)二戸建住宅
d)バンガロー/戸建住宅
e)敷地付き分譲住宅(計画法(Planning Act)に基づき認可されたコンドミニアム外のもの)
f)ショップハウス(非商業用)
g)社団用の土地建物
h)礼拝場所
i)労働者用寮、サービス付きアパート、下宿(ホテル法(Hotels Act)に基づく登記がなされていないもの)

他方で、シンガポール国土庁(Singapore Land Authority: SLA)によれば、以下に掲げるような不動産は、外国人・外国法人等において前述の事前承認を得ずに取得することが可能であるとされています。

a)コンドミニアム・ユニット
b)フラット・ユニット
c)敷地付き分譲住宅(計画法(Planning Act)に基づき認可されたコンドミニアム内のもの)
d)7年を超えない期間の敷地付き居住用不動産の使用権(lease hold)
e)ショップハウス(商業用)
f)商業用・工業用不動産
g)ホテル法(Hotels Act)に基づいて登録されたホテル
h)エグゼクティブ・コンドミニアムユニット、HDBフラット及びHDBショップハウス
 
4. 賃貸借契約
賃貸借契約の内容については、日本における借地借家法のような賃借人保護を目的とする特別法は存在せず、賃貸借契約の更新拒絶等について、日本のように賃貸人側の正当事由が要求されるといったこともありません。一般的なバランスオブパワーとしては、賃貸人優位の契約関係となっていると評価することができます。賃料についても、期間満了に伴う再契約交渉において、突然大幅な増額を求められることもありますが、合意できない場合には退去し、移転先を探さねばならなくなるという事態も起きえます。

以上
 
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。

第3回に続きます。
 
【関連記事】
《シンガポール編》第1回「外資規制」
《シンガポール編》第2回「不動産規制」
《シンガポール編》第3回「拠点設立」
《シンガポール編》第4回「現地法人の運営」
《シンガポール編》第5回「労務管理」
【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル   制作

前のページへ戻る

  • セミナー&商談会のご案内
  • アジアUPDATE
  • 国別情報一覧

PAGETOP