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2020.05.07

【フィリピン】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/《フィリピン編》第3回「現地法人の運営」 NEW
【フィリピン】第3回「現地法人の運営」
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を「進出」~「撤退」までの“シリーズ”で皆様にお届けします。
 
《フィリピン編》 第3回「現地法人の運営」
 
外国資本がフィリピンで事業を行う場合、進出の際の形態としては、株式会社が選択されることがほとんどです。
また、非公開会社か公開会社かの選択については、フィリピン市場での上場を目指している会社以外には公開会社を選択するメリットは少ないため、多くの会社は非公開会社を選択しています。もっとも、現地法人の議決権の3分の2以上を公開会社が保有する場合や、資源・金融・教育等公益に関わる事業分野を扱う会社については、公開会社とみなされ、公開会社として規律されます。そこで、本項では、株式会社形態のフィリピン現地法人を運営する上で重要と思われる規律について、非公開会社と公開会社で異なる点に触れながら検討します。なお、非公開会社の定義については、本項の「2.非公開会社の特則」に後述しているとおりです。
また、フィリピンの会社法は2019年に大改正が行われたため(2019年2月23日効力発生)、改正前後の内容についても適宜言及します。

1.機関及びその構成員
フィリピンの株式会社の主な機関は、①株主総会、②取締役会、③財務役(Treasurer)、及び④秘書役(Secretary)です。以下では、これらの機関とその構成員に関する規律を検討します。
 
1-1.株主
(1) 最低株主数
株主が1名のみの一人会社を設立することが可能です。但し、当該株主が法人である場合には、法人株主とは別に自然人取締役が最低1株保有する必要があるため、その結果として株主が2名となります。
なお、2019年改正前については、5名以上の株主が必要であると解されていましたが、2019年改正により最低人数の制限は撤廃されました。
 
(2) 株主の権利
株主の基本的な権利としては、①株主総会に出席し議決権を行使する権利、及び、②配当及び清算時の残余財産の分配を受ける権利が与えられています。
 
1-2.株主総会
(1) 株主総会の種類
株主総会とは、株主によって構成される会社の最高意思決定機関です。フィリピンの会社法には、定時株主総会及び臨時株主総会の定めがあります。
 
(2) 定時株主総会
定時株主総会は、附属定款に開催日の定めがある場合にはその日に開催しなければならず、附属定款に定めがない場合には、取締役会等が指定した4月15日以降の任意の日に開催しなければなりません。
 
定時株主総会の招集通知は、開催日の21日前までに発送することが必要です。かかる招集通知は、電子メール等の手段による送付も可能です。ただし、招集通知の送付を明示又は黙示に放棄した株主への送付は不要です。
なお、2019年改正前は、附属定款に別段の定めがない限り、開催日の2週間前までに招集通知を発送すれば足りていましたが、他方で、電子メール等の手段による送付は認められていませんでした。
 
(3) 臨時株主総会 
臨時株主総会は、必要なときにいつでも開催することができます。
 
臨時株主総会の招集通知の発送は、附属定款に別段の定めがない限り、開催日の1週間前までに取締役によって行われなければなりません。定時株主総会同様、招集通知の送付を明示又は黙示に放棄した株主への送付は不要です。
 
(4) 株主の招集権 
臨時株主総会の招集請求については、2019年改正により、全株主が招集請求権及び議題の提案権を有することになりました。
 
(5) 開催場所
株主総会の開催場所は、基本定款に定められた本店所在地でなければならず、本店所在地での開催が困難である場合には、本店が所在する都市または地方自治体の域内でなければなりません。
 
(6) 株主総会の議長
株主総会は、附属定款に別段の定めがない限り、議長が務め、議長が不在の場合は会社代表者が務めなければなりません。
 
(7) 議決権の行使
株主総会における議決権の行使は、委任状を有する代理人によっても行うことができます。委任状は、株主が署名した上で、総会開催前の合理的な期間内に秘書役に提出しなければなりません。また、2019年改正により、附属定款に定めがある場合には、遠隔的な通信手段により株主総会に出席することが可能となりました。
また、フィリピンには、議決権信託(Voting Trusts)という制度があり、最長で5年間、第三者に議決権やその他の株主としての権利を委託することができます。この制度を利用するためには、書面での契約締結、公証人の認証、契約書謄本の会社及び証券取引委員会への提出が必要です。
 
(8) 株主総会の決議要件
株主総会においては、原則として、出席した株主の過半数の賛成によって決議されます。もっとも、以下の事項の決議については、発行済株式総数の3分の2以上の賛成が必要です。
・取締役の解任
・附属定款の変更、廃止、新規採択する権限の取締役会への委任
 
また、さらに以下の事項の決議については、発行済株式総数の3分の2以上の賛成に加えて、取締役会における過半数の賛成が必要です。
・定款変更
・会社の存続期間の変更
・増資、減資、社債発行
・会社の全資産または実質的全資産の売却、賃貸、交換、担保権設定
・他社や他事業への資本投資〔非公開会社のみ適用〕
・合併
・債権者に影響を及ぼす解散
 
1-3.取締役
(1) 定数要件
取締役の人数は、15名以下です。2019年改正前は、5人以上15人以下であることが必要でしたが、2019年改正により最低人数の定めは撤廃されました。なお、取締役の人数を定款に記載する必要があります。
 
(2) 選任要件
2019年改正前は、取締役の過半数がフィリピン居住者であることが選任要件となっていましたが、2019年改正により、この要件は撤廃されました。
また、2019年改正前は、選任日以前の5年間に禁固6年以上の刑を言渡されていないこと、会社法に違反したことがないことが必要でしたが、2019年改正により、この要件は更に拡大され、選任日以前5年間に証券取引規則に違反した者、詐欺的行為により行政罰を受けた者、外国の裁判所で同様の非行があったとの判断を受けた者、その他証券取引委員会又はフィリピン競争委員会が定める事由がある者についても選任できないこととなりました。
 
(3) 選解任の方法
取締役は、株主総会の普通決議によって選任されます。任期は1年間です。取締役の解任には、株主総会において、発行済株式総数の3分の2以上の賛成が必要です。この取締役の解任を目的とする臨時株主総会は、秘書役が招集します。秘書役がこの招集を怠った場合には、一定の株主による直接招集が可能となります。
取締役の選任から30日以内に、選任された取締役の氏名、国籍及び住所を証券取引委員会に報告しなければなりません。取締役が死亡、辞職その他その職を離れた場合、7日以内に証券取引委員会に報告しなければなりません。
 
(4) 会社代表者の選任
取締役は、選任後直ちに取締役会を開催し、会社代表者(president)を選任しなければなりません。会社代表者は、秘書役、財務役を兼務することができません。
 
(5) 役員報酬の制限
フィリピンの会社法には、取締役全員の年間総報酬額は、会社の前年度税引前純利益の10%を超えてはならないという規定があります。また、2019年改正により、公益に関わる会社等に対し、取締役各自の年間報酬額を株主総会及び証券取引委員会に報告しなければならなくなりました。
 
(6) 損害賠償責任
取締役が、明らかに違法な会社の行為を知りながら故意に賛成した等の場合には、その行為によって会社、株主、その他の第三者が被った全ての損害について、連帯して責任を負います。重過失若しくは害意により会社の業務上の指示を出した取締役、又は、取締役としての義務と利益が相反する個人的な利益を取得した取締役についても同様です。
また、取締役がその地位を利用して、本来会社に帰属すべき事業の機会を取得し、それによって利益を得て、会社に損害を与えた場合には、当該取締役は、その利益の全てを返還しなければなりません。ただし、株主総会において発行済株式総数の3分の2の賛成で承認された場合には、この限りではありません。
 
1-4.取締役会
取締役会は、原則として、会社が有する権限を行使し、一切の事業を遂行し、会社の一切の資産を支配するものとされています。
 
(1) 決議事項
取締役会は以下の事項を決議します。
・配当の決定
・経営委員会(Executive committee)への権限委譲 
※附属定款に定めがある場合は、取締役3名以上で構成される経営委員会を設置することができ、この委員会に一定の取締役会の権限を委譲することができます。
 
(2) 取締役会の決議要件 
取締役会の決議要件は、全取締役の過半数の賛成が要求される役員の選任を除き、出席した定足数を構成する取締役の過半数の賛成です。
なお、非公開会社においては、取締役会の決議を経ずに行った取締役の行為も、他の取締役又は株主が明示又は黙示に当該行為を認識し、速やかに書面で異議を述べない限り、有効なものとみなされます。
 
(3) 開催場所
取締役会は、附属定款に別段の定めがない限り、毎月必ず開催しなければならず、開催場所は、フィリピン国外でも構いません。
 
(4) 招集通知
取締役会の招集通知は、附属定款においてより長期の定めがない限り、取締役会開催日の2日前までに送付する必要があります。但し、株主総会同様、招集通知の送付を明示又は黙示に放棄した取締役への送付は不要です。
 
1-5.財務役(Treasurer)
財務役は、会計分野についての管理責任役員です。
フィリピンの株式会社においては、1名以上の財務役の選任が義務付けられています。
財務役は、会社代表者(President)を兼務できませんが、それ以外の役員を兼務することは可能です。
 
1-6.秘書役(Secretary)
秘書役は、会社の様々な事務手続を所管し、取締役の氏名等の証券取引委員会への報告、取締役の解任を目的とする臨時株主総会の招集手続、株主総会の委任状の管理などを行います。
フィリピンの株式会社においては、1名以上の秘書役の選任が義務付けられています。
秘書役は、会社代表者(President)を兼務できませんが、それ以外の役員を兼務することは可能です。
 

2.非公開会社の特則
非公開会社の閉鎖的性質に照らし、一定の事項を定款に定めることが非公開会社の場合のみ認められています。
ここで、非公開会社の定義を整理します。
非公開会社とは、定款において以下の事項が定められた株式会社です。
・自己株式を除き、株主が20名以下であること
・全ての株式に譲渡制限の定めがあること
・株式上場または公募していないこと
ただし、現地法人の議決権の3分の2以上を公開会社が保有する場合や、資源・金融・教育等公益に関わる事業分野を扱う会社については、非公開会社となることはできません。
 
そして、この非公開会社に認められている定款記載事項は以下のとおりです。
・株式の保有資格及び譲渡制限
・特定の種類株式ごとに取締役を選任できること
・株主総会及び取締役会の定足数または決議要件の厳格化
・取締役会の会社経営権限を株主総会に委譲すること
 

3.資本金
フィリピンの株式会社において、資本金の額を増加又は減少するには、取締役会における過半数の決議により承認され、かつ、総会において発行済株式総数の3分の2の決議により承認される必要があります。
また、増加した資本金の額の少なくとも25%が引受けられ、かつ、払込がされる必要があります。ただし、設立時の引受株式数および払込に関しては、他の法律に定めがない限り、自由に設定可能です。なお、2019年改正前については、会社設立時にも、授権資本の上限の25%以上の額が現実に引受・払込がされていることが必要であるとされていましたが、2019年改正によりこの規制は撤廃されました。
 

4.株式
フィリピンにおいては、定款に定めることにより、以下のような株式の発行が可能です。
 
(1) 優先株式(Preferred shares)
優先株式とは、配当時や清算時に、優先的に配当等の分配を受けることができる株式です。
優先株式は、無議決権優先株式とすることが可能です。優先株式については、証券取引委員会への証明書の提出が必要です。
 
(2)償還株式(Redeemable shares)
償還株式とは、あらかじめ定められた期限が到来すると、定款及び株券に定められた条件に基づいて、会社が買い戻すことができる株式です。
無議決権の償還株式の発行も可能です。
 
(3) 創業者株式(Founders' shares)
創業者株式とは、創業者が保有する株式のうち、定款において、取締役の選任において独占的議決権が付与された種類株式です。ただし、独占的議決権は、最長で設立の日から5年間のみ認められます。
 
(4) 無議決権株式の制限
議決権のない株式の発行も可能ですが、以下の事項については、議決権を制限することはできません。
・基本定款・附属定款の変更
・会社の全資産または実質的全資産の売却、賃貸、交換、担保権設定
・社債の発行
・資本金の増減
・合併
・他社や他事業への資本投資
・会社の解散
 

5.利益処分
フィリピンの株式会社は、取締役会の決議によって、未処分利益額を限度として、株主に配当を行うことができます。
払込済資本金の100%に相当する額を超える以上の利益剰余金を留保することは禁止されています。ただし、例外的に、①取締役会が承認した事業拡張計画に基づく場合、②会社の融資契約において配当を行うには貸主の同意が必要とされており、かかる同意が得られない場合、又は、③特別な状況下において当該留保が必要であることが明確である場合には、上記金額を超える留保も認められます。

以上
 
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。   
   
第4回に続きます。


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【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  作成

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