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2020.03.13

【中国】「変化を遂げる中国越境EC市場への参入について~新制度施行により拡大する日本企業のビジネスチャンス~」第3回/全3回
【中国】「変化を遂げる中国越境EC市場への参入について~新制度施行により拡大する日本企業のビジネスチャンス~」第3回/全3回
第1~2回では、中国越境ECの概要、日本企業による越境ECへの参入について解説致しました。
最終回となる今回は、越境ECに関わる制度変遷、新制度について解説し、中国越境ECの活用にあたっての留意事項を考察致します。

■中国越境ECに関わる制度変遷
 中国ビジネスにおいては、中国政府の基本方針や関連法規変更等への的確な対応が商売の成否を大きく左右します。ここでは、中国越境ECに関わる制度の変遷を見ていきましょう。

 2000年代初頭、中国越境ECは「代購(注11)」により始められました。そして、2008年頃、中国の1人当たりGDPは、家電等の耐久消費財の普及率が高まる水準といわれる3000米ドルを突破しました。この頃からインターネットの普及率も20%を超過し、「代購」の増加も相まって越境EC市場が急速に拡大し始めます。
 そして、2014年7月、中国政府は拡大を続ける越境ECに関わる制度を公布(図表4A参照)し、越境ECというビジネスモデルを公認しました。この黎明期においては、政府が過度な規制を設けないことで、越境EC市場の拡大を後押ししてきました。
 それから、2016年3月及び4月、越境EC事業者にとって大きな負担となる規制が発表されました(図表4B参照)。税制面での優遇が開始された一方、輸入商品について、通関申告書の提示や一部指定商品に輸入許可証の提出が義務付けられたのです。しかしながら、通関や検疫の現場で大きな混乱(注12)を招いたことで、中国政府は施行開始からわずか1カ月で暫定的に規制を停止(図表4C参照)、最終的に2018年末まで煩雑な輸入手続きの停止措置は延長されました(図表4D参照)。
 
■中国越境ECに関わる新制度
 中国越境ECに関わる輸入手続きや優遇措置の動向に注目が集まる中、新制度となる「6部門通知」と「電子商務法」が2018年11月に発表され2019年1月に施行されました。本章では新制度の概要を解説します。

1.新制度における優遇措置(図表5参照)
 「6部門通知」において、以下5点の優遇措置が公布されました。
①越境EC輸入ポジティブリスト(注13)(以下、ポジティブリスト)の品目追加
 ポジティブリストに含まれる品目が1321件まで増加。消費者ニーズの高いゲーム機やトレーニングマシン、発泡性ワイン等もリストに加わりました。なお、当該ポジティブリストに記載される品目については、規定の取引金額(下記②)の範囲内で、各種優遇(下記③、④)が適用されます。
②取引金額の引上げ
 消費者1回当たりの取引額が5000元(約8.3万円)、年間取引額が2万6000元(約43万円)へ引上げられました。今後、高額の家電品や化粧品の取扱いの増加が見込まれます。
③輸入手続きの更なる簡素化
 法規に則した越境EC手続きにおいては通関申告書や輸入許可証の提出が不要である旨、明記されました。また、中国語表記の商品ラベルの貼付も不要となりました。
④優遇税制の据置
 越境ECに関わる関税0%、増値税と消費税70%掛けの税制優遇が据置されました。
⑤保税区の増設
 保税区の設置が15都市から37都市となりました。海外企業にとっては物流戦略の選択肢が増加することになります。

2.新制度における規制強化(図表5参照)
 「電子商務法」において、主に以下5点の規制が明記されました。

①税関における登記義務
 中国越境ECに関わる事業者は、法人・個人に関係なく中国税関における登記手続きが義務付けられました。その結果、海外に商品を輸出する海外企業や海外で商品を購入する個人の「代購」に対しても中国当局の監視が強化されることとなりました。
②消費者権益の保護義務
 消費者に関わる個人情報の管理強化や、抱き合わせ販売の制限等が明確化されました。また、サイト内に商品に関わる注意事項やリスク説明等を正確に告知することが義務付けられました。
③営業許可証等の公示義務
 サイト内の分かり易い箇所に営業許可証および事業ライセンスの情報を公示することが義務付けられました。
④虚偽広告等の禁止
 商品・サービスの内容や消費者の評価等について、虚偽情報発信の禁止が明確化されました。
⑤紛争対応義務
 海外企業であっても、輸出商品に大きな問題が発生した場合、モール事業者や「境内(きょうない)サービス事業者(注14)」等と連携し、中国当局から求められる資料の提出やリコール対応等、適切な処理を行わなければなりません。これまでは、物流業者や販売代理店等に商品を受け渡した時点で、海外企業は中国における法的責任について事実上責任を負うことはほぼありませんでしたが、今後は賠償責任に問われる可能性が高くなります。

3.優遇措置と規制強化の意義
 輸入手続き簡素化の明示や取扱可能商品の拡充等の優遇措置に加え、関連事業者に関わる登記の義務付けや消費者保護の強化等、越境ECビジネスモデルの規範化促進により、中国越境EC市場は更に活性化してくことが確実視されています。
 しかしながら、中国越境ECの勃興から実質的に市場拡大を支えてきた個人の「代購」については、法令遵守の強化措置によりグレーゾーンでの事業展開が難しくなるため、自然と減少していくこととなるでしょう。今まで「代購」に商品を販売することで、間接的に中国越境ECに参与してきた日本国内のディスカウントストアや百貨店等については、今後、中国越境ECへの直接参加の機運が高まってくることが予想されます。
 
■中国越境ECの活用にあたって
 2018年11月に上海で開催された第1回中国国際輸入博覧会(注15)において、習近平国家主席は「税制を見直し通関手続きの簡素化を図った上で、越境ECを更に拡大させる」と演説しました。それに呼応してフォーラムに登壇したアリババCEO張勇氏は「2000億ドルの海外製品を買い付ける」と表明しました。官民一体となった中国の強い姿勢は、越境EC市場の更なる成長を予見させます。
 そして、2019年1月に施行された越境ECに関わる新制度「6部門通知」及び「電子商務法」により、中国の国家情報化計画と対外開放政策の柱の一つとなる越境EC振興が本格的に稼働しました。
 今後、日系企業が中国越境EC市場の更なる拡大機運を活用し、販路開拓を進めていくにあたっては、①越境EC新制度を十分に把握した上で販売戦略を立てること、②中国越境ECに関わるパートナー(モール事業者・販売代理店・境内(きょうない)サービス事業者(注14)等)を正しく選択すること、③コンプライアンス遵守や知財保護のための法務対策を強化することが、重要になってくると考えます。
       
 新制度に関わる具体的な細則は、随時公布されて来るものと思われます。またアメリカの対中制裁によってアメリカ製部品の入った製品を輸出するのも今後は気をつける必要があります。中国越境ECに関わる情報は、今後もアップデートしていきますので、ご質問等ございましたらNCBリサーチ&コンサルティング(国際コンサル室)および西日本シティ銀行国際部までお問い合わせ下さい。
 
(注11)ビジネスや旅行等で海外へ出国し、友人知人に依頼された海外商品を代理購入する個人や専門業者のこと。インターネットの発達に伴い、購入した海外商品をインターネット上で一般消費者向けに販売する「代購」が増加。現在では、越境EC専門モールや小売ECモールで販売するケースが多い。
(注12)通関申告書発行に必要な輸入許可証や原産地証明の取得が出来ず、輸入手続きが途中停止する事案が大量に発生した。
(注13)規定金額の範囲内で享受できる各種優遇(輸入手続きの簡素化や軽減税率)の適用品目が記載されたリスト。2018年末までの等がリスト品目数は1293件だったが、今回の新制度改正で消費者ニーズの高い28品目が追加されている。リスト記載の主な商品は、スキンケア化粧品やベビー用品、衣料品、飲食料品、家電等となっている。
(注14)海外の越境EC事業者が果たすべき責任(①消費者保護対応、②当局対応、③納税対応等)を代行して請負う、香港、マカオ、台湾を除く中国国内の事業者。中国越境EC新制度にて、新たに設置された事業者だが、資格や業務内容の詳細はまだ公示されていない。
(注15)習近平国家主席の肝煎りで開催された世界最大級の輸入博覧会。中国の市場開放と貿易不均衡の是正を推進することを目的としたもの。





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【掲載元情報】
西日本シティ銀行 上海駐在員事務所  作成

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