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2026.10.15

【中国】陳弁護士の法律事件簿/第104回「典型事例を踏まえた人格権侵害禁止命令の申立条件と審査基準の検討」NEW
【中国】陳弁護士の法律事件簿/第104回
 「典型事例を踏まえた人格権侵害禁止命令の申立条件と審査基準の検討」
 
経緯

 李さん、張さん、胡さんはいずれもショート動画のインフルエンサーであり、張さんと胡さんのフォロワー数は計2000万人以上である。2023年7月から、張さんは、李さんが自分の恋愛に介入していることを理由に、インターネット上で李さんを対象とする誹謗中傷の文章を投稿し、さらに胡さんと共謀し、フォロワーを扇動して李さんに対する罵詈雑言、攻撃、告発などのネットいじめ行為を実施させた。その結果、李さんの業務提携の一部は解消された。2023年10月、李さんは名誉権侵害を理由に訴訟を提起した。しかし、審理期間中も、張さんと胡さんは依然としてネットいじめを扇動し続けた。2024年3月、李さんは裁判所に人格権侵害禁止令を申し立てた。
 
裁判結果

 裁判所は審理の上、「張さんと胡さんは李某に対し集団的なネットいじめという違法行為を行い、かつ審理期間中も当該行為を継続し、損害を拡大させた。張さんと胡さんの行為は李さんに精神的損害と経済的損失をもたらしており、速やかに制止しなければ、李さんの合法的権益に回復困難な損害を生じさせるおそれがあるので、人格権侵害禁止命令の適用要件を満たしている。」と判断し、張さんと胡さんに対して「侵害行為を直ちに停止するよう命令する。禁止命令の有効期間は6か月とする。禁止命令に違反した場合、裁判所は法により、情状に応じて過料または拘留に処する。犯罪になる場合は、法により刑事責任を追及する。」と裁定を下した。

申立条件

 人格権侵害禁止命令制度は『民法典』第997条によって新たに確立された制度である。具体的には、民事主体は、その人格権を侵害する違法行為を行為者が実施しているか、または実施しようとし、直ちに制止しなければ、その合法的権益に回復不能な損害をもたらすことを証明する証拠がある場合に、裁判所に対して行為者による関連行為の停止を命じることを請求する権利を指す。人格権侵害停止命令を申し立てるには、以下の実体的条件を満たす必要がある。(1)行為の緊急性。侵害行為が行われているか、または発生する蓋然性が非常に高いこと証明する証拠を提出する必要がある。侵害行為が発生しており、または現実的に発生する危険があることは禁止命令を適用するための前提条件である。(2)損害が不可逆的かつ回復不能である。速やかに制止しなければ、名誉毀損や精神的苦痛など、金銭賠償では回復困難な結果を招くことを立証する必要がある。(3)利益のバランス。禁止命令は合理的かつ適切な範囲内でなければならず、公共の利益または他人の合法的権益を損なってはならない。

審査基準

 民事主体は、人格権が侵害されつつあるか、または侵害されるおそれがあることを証明する初歩的な証拠がある限り、侵害行為発生地、侵害結果発生地、または被申立人の住所地を管轄する末端人民法院に対し、人格権侵害禁止命令を申し立てることができ、かつ民事訴訟の提起を前提としない。裁判所は法により審査する。本件では、人格権侵害禁止命令の適用に関する裁判所の審査基準を明確にした。具体的には、(1)速やかな制止を必要とする緊急性の有無を審査する。(2)損害が回復困難であるか否かを審査する。(3)禁止命令という措置の妥当性を審査し、必要な限度を超える行為を防止する。裁判所が法により禁止命令の裁定を下した後、当該禁止命令は強制力を持つようになり、被申立人はこれを遵守しなければならない。さもなければ、人民法院は『中華人民共和国民事訴訟法』第114条第6項の規定に基づき、情状に応じて被申立人に対し過料または拘留に処することができる。犯罪になる場合は、法により刑事責任を追及する。

まとめ

 人格権侵害禁止命令制度は人格権に対する独特な法的保護手段であり、従来の訴訟手続における事後救済の制限を回避する一方、裁判所が迅速に裁定を下した上で、より効率的かつ簡便な事前予防的保護措置となり、司法保護を「事後の責任追及」から「事前阻止」へと転換し、特にネットいじめ、プライバシー漏洩、家庭内紛争、恋愛・結婚トラブルなどに適用される。

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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。

[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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