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2026.07.24

弁護士法人One Asia/第85回『2026年「商標法」全面改正ーー在中日系企業の対応ポイントー悪意出願規制の強化と、防御的商標に迫るリスクー』NEW
弁護士法人One Asia/第85回『2026年「商標法」全面改正ーー在中日系企業の対応ポイントー悪意出願規制の強化と、防御的商標に迫るリスクー』
◇中国
 
はじめに

  2026年6月26日、第十四期全国人民代表大会常務委員会第二十三回会議において、改正後の「中華人民共  
 和国商標法」(以下「新法」といいます。)が可決され、2027年1月1日より施行されます。本改正は、1983 
 年の施行以来4度の「修正」を経た同法について、初めて「修訂(全面改正)」の形式を採るものであり、
 部分的な調整から体系的な再構築へと立法上の性質そのものが変わる転換点となります。条文数も従来の8
 章73条から9章87条へと拡大されました(第87条)。

  本改正の立法方針は、従来の「登録重視・使用軽視」から「登録の厳格化、使用の実質化、権利行使の
 強化、全過程における監督管理」へと転換しています。中国で事業を継続する日系企業にとっては、商標権
 利者としての立場、市場参加者としての立場のいずれにおいても、実務上の影響は避けられません。以下、
 主な改正内容と日系企業への影響について述べます。
 
​  

 1 商標「使用」の定義がオンライン上の利用にも拡大

  新法は、「インターネット等の情報ネットワークを通じて行う使用行為」を商標の使用行為に明確に含め
 ることとし、デジタル経済時代のニーズに対応しました。ECプラットフォームの商品詳細ページ、ショー
 ト動画、ライブコマース等のオンライン上での商標使用も、法律上の「使用」に該当し得ることとなり、不
 使用取消し(いわゆる「撤三」)の抗弁や侵害認定等の手続において、オンライン上の使用証拠の証明力が
 明確に認められることとなりました(第2条)。
 
 2 登録対象の拡大:動態商標(動く商標)の登録が可能に

  新法は、「動態標識」(動くロゴ)を新たに法定の登録可能な商標対象として追加する一方、機能的な形
 状、色彩の組合せ、音、動的効果等については商標として登録できないことを明確化しました(第14条、
 第18条)。
  海外で既に動態商標を登録している日系企業は、当該商標について中国国内でも並行して出願することを
 検討されることをお勧めします。
 
 3 悪意による商標の先取り出願(冒認出願)規制の強化――日系企業にとって重要な追い風

  日系企業のブランドが悪意により先取り出願される問題は、従来から最も顕著な実務課題の一つでし
 た。本改正では、複数の側面からこの問題への対応が強化されています。
 (1)出願段階での直接拒絶
  新法は、使用を目的とせず、かつ通常の生産・経営上の必要性を明らかに超える商標登録出願について、 
 審査段階で直接不登録とすることを明文化しました(第19条)。
 (2)行政処罰規定の明確化
  悪意による出願行為があり、悪影響を及ぼした場合、執行部門は警告を行うとともに10万元以下の罰金
 を科すことができます。典型的な悪意行為として、①禁止規定に違反することを知りながら出願する行為、 
 ②使用を目的としない大量の買い占め出願、③他人の著名商標又は取引関係のある他人の商標を故意に先
 取り出願する行為の三類型が明文で列挙されています(第54条)。
 (3)「1年間の空白期間」ルールの適用範囲の明確化
  旧法では、商標が撤消(取消)・無効宣告・注銷(自主抹消)のいずれかの事由による場合または期間満
 了で更新されない場合は、1年間、商標局は第三者による同一・類似商標の出願を許可しないこととされて
 いましたが、新法はこの適用範囲を縮小し、商標権者が自ら登録を抹消した場合に限り、当該商標について
 1年間、第三者による同一・類似商標の出願が認められない旨を定めています。一方、悪意による出願を理
 由に取り消され又は無効宣告された商標については、この1年間の空白期間は適用されず、第三者は直ちに
 出願することが可能です。これにより、「悪意による先取り出願→無効化→再出願」という悪循環を断つこ
 とができ、日系企業が権利行使に成功した後、速やかに商標の空白を埋めることが可能となります(第49
 条)。
 
 4 商標使用義務の強化――防御的商標に職権取消のリスク

  旧法下では、登録商標を継続して3年間使用していない場合であっても、第三者による「撤三」(不使用
 取消し)申立てによってのみ取り消される仕組みでした。新法は、第三者による取消し申立ての仕組みを維
 持した上で、国務院商標管理部門が職権により自ら閑置商標(使用されていない商標)を取り消すことがで
 きる制度を新設しました(第57条第3項)。

  この点は日系企業にとって特に重要です――一部の日系企業は、これまで中国国内で多数の防御的商標を
 登録してきたものの、実際には使用していないケースが少なくないと思われます。新法施行後は、こうした
 商標が当局の職権により取り消される可能性があります。中国国内の商標ポートフォリオを速やかに整理 
 し、今後も使用予定がある防御的商標については、使用証拠(ECサイトへの掲載、販促資料、契約書等)
 を計画的に整備することをお勧めします。
 
 5 著名商標の保護――未登録著名商標の異種商品・役務間における保護範囲の拡大

  旧法下では、未登録著名商標の保護は、同一又は類似の商品における先取り出願行為に限定されていま
 した。新法はこのルールを統一し、未登録著名商標についても、公衆の誤認を招き、かつ権利者の利益を損
 なうものである限り、非類似の商品・役務についても不登録・使用禁止とされ、登録済み著名商標と同等の 
 異種間保護を受けられることとなりました(第21条)。

  さらに、新法は、不正競争行為の摘発案件及び不正競争訴訟においても商標の著名性を確認できることを
 明確化するとともに、国外における著名性確認手続を新設し、国内ブランドの海外での権利行使を後押しす
 る制度を整備しました(第63条、第69条)。
 
 6 懲罰的賠償の適用要件の緩和――主観的要件のハードルが低下

  新法は、懲罰的賠償の主観的適用要件を、旧法の「悪意」から「故意」へと変更し、権利者の立証負担を
 軽減しました。なお、懲罰的賠償の倍数(1~5倍)、法定賠償上限(500万元)、権利行使のための合理的支
 出を賠償範囲に含める規定等は、いずれも現行の規定であり(それぞれ2019年及び2013年の商標法改正に
 より施行済み)、本改正により新たに引き上げられ、又は新設されたものではありません(第77条)。

 7 悪意訴訟の規制――「言いがかり型」権利行使への牽制

  旧法下でも、悪意による商標訴訟の提起について人民法院が処罰を行いうる旨の簡潔な規定は存在してい
 ました(旧第68条第4項)。新法は、悪意による通謀や事実の一方的なねつ造等、悪意の内容を具体的な行
 為態様として明文化するとともに、相手方当事者に損害を与えた場合の民事賠償責任を新たに定めました。
 これにより、単なる処罰にとどまらず、被害を受けた当事者が損害賠償を求めることも制度上明確になって
 います。本条項は、日系企業を標的とした、いわゆる「言いがかり型」の商標権利行使行為に対して、従来
 よりも実効性のある牽制効果を持つものと考えられます(第81条)。
 
 8 商標代理機関に対する監督管理の強化

  新法は、商標代理機関及びその従業者に対し、国務院商標管理部門への届出を義務付けました(第65 
 条)。悪意による出願への加担等の違反行為については、従来の1万元~10万元の罰金枠を維持した上で、  
 「情状が重大な場合は10万元~20万元の罰金」という加重区分を新設し、違反の程度が悪質な場合には商標
 代理業務の受任停止処分を受ける可能性もあります(第67条)。

  中国国内の代理機関に商標関連業務を委託している日系企業は、委託先機関の届出状況及び信用状況を
 確認し、違反記録の有無を確認することをお勧めします。
 
 9 異議申立期間の短縮

  初歩審定公告後の異議申立期間が、3か月から2か月に短縮されました(第36条)。これにより権利確定ま
 での期間全体が圧縮されることとなります。日系企業の商標管理担当者は、この変化に留意し、商標モニタ 
 リング及び異議申立ての対応スケジュールを適時見直す必要があります。
 
むすびに:日系企業に求められる対応

  新法は2027年1月1日に施行される予定であり、現時点で残された準備期間は半年程度です。日系企業に
 おかれましては、以下の事項について重点的にご検討いただくことをお勧めいたします。

 ① 中国国内の商標ポートフォリオを全面的に見直し、長期未使用の防御的商標を洗い出した上で、将来
   の使用可能性や事業上の重要性を踏まえて対応の優先順位を整理する。
 
② オンライン上の使用証拠の保存体制を整備する(ECプラットフォーム、SNS等における使用記録を含
   む)。
 
③ 委託先代理機関の届出状況及び信用記録を確認する。
 
④ 動態商標等の新しい類型の商標について、早期に出願を計画する。
 ⑤ 中国国内で未登録ながら高い知名度を有する商標について評価し、著名商標としての認定要件を満たす
   か否かを検討の上、速やかに保護を求める。

 
  本件に関しさらにご質問等ございましたら、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
 
 ※本ニュースレターは中国法に関する一般的な法令情報を提供するものであり、具体的なアドバイスや法的
  意見を提供するものではありません。
 
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なお、本ニュースレターは、一般的な情報を提供することを目的としたものであり、当グループ・メンバーファームの法的アドバイスを構成するものではなく、また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当グループ・メンバーファームの見解ではございません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず各メンバーファーム・弁護士にご相談ください
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(ご参考)
本ニュースレター(2026年7月13日号)
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