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2025.12.25

【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第122回「会社法及び会計法(改正)法案の可決」NEW
【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第122回「会社法及び会計法(改正)法案の可決」
◇シンガポール

2025年11月5日、シンガポールの国会において、会社法及び会計法(改正)法案(Corporate and Accounting Laws (Amendment) Bill:「本法案」)が可決されました。本法案は、取締役の義務違反に対する罰則の強化、企業に対する規制負担の軽減、企業の不正利用に対する規制強化、株主の利益保護、公認会計士に対する規制体制の強化等幅広い項目に関する改正を目的として可決されたものです。Asian Legal Insights 2025年12月号(Vol.183)では、本法案のうち、取締役に対する規制強化及び企業に対する規制負担の軽減に関する改正に絞って、その概要をご紹介します。

1. 取締役の義務違反に対する罰則の強化
 
シンガポール会社法上、取締役は、常に誠実に行動し合理的な注意を払って職務を遂行すべき義務を負います。当該義務に違反した場合、現行法では最大5,000シンガポールドル(約60万円)の罰金若しくは12か月以下の禁錮又はこれらが併科される可能性があります。
 
本法案は、罰金額を最大20,000シンガポールドル(約240万円)まで引き上げ、併せて年次報告書の未提出や会計帳簿の未整備等のコーポレートガバナンスに関する義務違反についても罰則を強化しています。
 
シンガポール高裁は、今年の初め、有償で名義貸しを行い300社以上の取締役に就任した結果、実質的な監督を行わなかった取締役に対し、実刑判決を下しています。このような実務の趨勢も踏まえると、シンガポールがコーポレートガバナンスの不正に対して厳格な姿勢を取っていることが窺われます。 

2. 企業の規制負担の軽減

シンガポール会社法上、企業は、閲覧権限を有する者に対して記録や資料の閲覧機会を確保するため、登録された事務所を、営業日のうち少なくとも3時間は営業する必要があります(最低営業時間)。当該規定は、シンガポール会社法が制定された1967年以来、変更されてきませんでした。
 
本法案では、企業の負担を軽減するため、当該最低営業時間が廃止されています。他方で、最低営業時間の廃止に伴い、企業の記録や資料の閲覧可能性を確保するための方策が用意されました。すなわち、閲覧権限を有する者は、閲覧の意思を合理的な期間の前に通知する必要があり、当該通知を受けた企業は対象となる営業日ごと9時~18時の間に少なくとも2時間の閲覧時間を確保することが義務づけられました。当該改正により、企業は柔軟に営業時間を決定することができるようになります。
 
上記は一例ですが、このようにシンガポールではコーポレートガバナンスの強化や企業に対する規制の見直しが継続的に行われており、今後の動向が注目されます。
 
※当事務所は、シンガポールにおいて外国法律事務を行う資格を有しています。シンガポール法に関するアドバイスをご依頼いただく場合、必要に応じて資格を有するシンガポール法律事務所と協働して対応させていただきます。

 本記事掲載URL
https://www.morihamada.com/ja/insights/newsletters/129476


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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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