2025.11.21
- 【タイ】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第121回「スタートアップ促進法案の公表」
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◇タイ
タイ政府は、スタートアップ企業の成長を阻害する法的障壁を取り除き、タイの会社法制を現代的な実務に整合させることを目的とする、スタートアップ促進法案(Start-up Promotion Act:「本法案」)を公表しました。
本法案は、タイ民商法(Civil and Commercial Code)上の制約があった資金調達手段をスタートアップ企業が利用できるようにするとともに、人材・税制・投資・知的財産等の分野におけるスタートアップ企業への優遇措置を導入するものです。
1. 本法案の対象
本法案の対象となるのは、一定の要件を満たし、国家イノベーション庁(National Innovation Agency:「NIA」)の登録を受けた企業(「登録スタートアップ」)であり、登録後5年(一定業種の場合は最長10年)の間、優遇措置を享受することができます。
主な要件は以下のとおりです。
・タイで設立された非公開会社であり、設立から10年以内であること
・過去3年間の平均年間売上高が3億バーツ(約14億3,000万円)以下であること(ただし、業種により追加の基準が設定される可能性あり。)
・過去に配当を行っておらず、他社の支配下にないこと(ただし、他の登録スタートアップの支配下である場合や、高等教育機関発の企業である場合等を除く。)
なお、登録スタートアップは、登録後2年以内に、業種別に定められたタイ人雇用比率の要件を満たす必要があり、違反の場合には登録取消しの対象となります。
2. 資金調達手段の緩和及び優遇措置
本法案により、民商法上非公開会社に認められていなかった又は明確に規定されていなかった以下の制度を、登録スタートアップが利用できることとなります。
・株式の公募及び社債の発行
・最大20%までの自己株式の保有
・株式の第三者割当による増資
・デット・エクイティ・スワップ
・優先株式から普通株式への転換
さらに、登録スタートアップは、以下の優遇措置を受けることができます。
・外国人専門人材のビザ・労働許可に関する優遇
・税制面での優遇
・政府調達における優先的取扱い
・知的財産の保護及び商業化の促進
・投資奨励法(Investment Promotion Act)・特定産業の競争力強化を目的とする法令・東部経済回廊(EEC)関連法令上の制度へのアクセス
・NIAを通じた補助金・融資・共同投資等の資金支援へのアクセス
3. 日系企業にとっての本法案の意味合い
登録スタートアップとなるためには、「他社の支配下にないこと」という要件があることから、日系企業のタイ子会社が本法案の制度を直接利用できる場面は限定的になると思われます。
もっとも、スタートアップ企業向けの環境が整備されることにより、日系企業を含む外国投資家にとって、タイのスタートアップ企業がより有望な投資先となることが期待されます。
本記事掲載URL
https://www.morihamada.com/ja/insights/newsletters/127871
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- 【掲載元情報】
- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 制作





