アジアUPDATE

HOME > アジアUPDATE

アジアUPDATE

2025.11.04

【インドネシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第120回「労働法制に関する近時の憲法裁判所判断」NEW
【インドネシア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第120回「労働法制に関する近時の憲法裁判所判断」
◇インドネシア

1. 解雇関連訴訟の出訴期限の起算日に関する判断
 
インドネシア憲法裁判所は、2025年9月3日、不当解雇訴訟等、解雇関連訴訟に関する出訴期間を「解雇通知受領日から1年以内」と規定する労使紛争解決法(2004年法律2号)82条について、「調停又は斡旋が不調に終わった日から1年以内」と解釈しない限り違憲無効とする判断を下しました(No. 132/PUU-XXIII/2025)。
 
従前、労使紛争解決法82条の文言上は、解雇関連訴訟について、労働者が解雇通知を受領した日から1年以内に提訴しなければならないと規定されていました。他方で、解雇された労働者が不当解雇等を争いたい場合、解雇通知受領後、訴訟提起に先立ち、労使二者間協議及び労働省による調停・斡旋といった手続を経る必要があります。しかし、使用者側の対応の遅れ等が原因で、(法令上予定されている各手続期間を超えて)前置される各種手続に時間を要する結果、これらの手続が不調に終わる頃には、既に解雇通知受領日から1年を経過しており、裁判所に提訴ができない事案も実務上は生じていました(なお、この問題を踏まえ、本決定における申立人は、憲法裁判所に対し、出訴期間を解雇通知受領日から3年とするよう求めていました。)。
 
これに対し憲法裁判所は、使用者・労働者双方の権利保護・法的安定性の確保等の観点から、出訴期間自体は1年を維持しつつ、その起算日を、「労働者の解雇通知受領日」ではなく、「調停・斡旋が不調に終わった日」とすべきと判断し、結果として、実質的な出訴期限の延長を認めました。 

2. 住宅貯蓄制度(Tapera)に関する判断

インドネシア憲法裁判所は、2025年9月29日、住宅貯蓄制度(「Tapera」)を定める法律(2016年法4号:「本法」)全体を違憲とする判断を下しました(No. 96/PUU-XXII/2024:「本決定」)。
 
従前、本法の下位規則である政令2024年21号により、民間企業に勤める、20歳以上又は婚姻済みであり、かつ、最低賃金以上の給与を受給している全ての従業員(インドネシアで6か月以上就労する外国人労働者を含む。)を対象に、2027年5月20日までにTaperaに加入することが義務付けられていました。また、政令2024年21号では、民間企業の雇用主・従業員の社会保障拠出額が給与の3%(雇用主負担0.5%、従業員負担2.5%)と定めていたため、経済的負担の増加について企業側・労働者側の双方から懸念が示されていました。
 
憲法裁判所は、本決定において、貯蓄は本来強制ではなく任意に行われるべきものであること、Taperaが既存の社会保障制度(BPJS Ketenagakerjaan)と重複し、二重負担を課していること等を指摘の上、本法を違憲と判断しました。
 
本決定は、本決定日から2年以内に、制度そのものを見直した上で、本法及び関連する下位規則を改正することを求めています。


 本記事掲載URL
https://www.morihamada.com/ja/insights/newsletters/126121



(直近記事)
第117回【ベトナム】個人データ保護法の制定
第118回【タイ】「労働者保護法改正案-出産休暇の拡充及び配偶者育児休暇等の導入」
第119回【シンガポール】「詐欺対策法の施行」
【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

前のページへ戻る

  • セミナー&商談会のご案内
  • アジアUPDATE
  • 国別情報一覧

PAGETOP