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2025.02.10

【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第25回/「労働法⑤」(インド編⑭)
【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第25回/「労働法⑤」(インド編⑭)
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。

労働法⑤

Ⅳ.女性労働者に関する法規①

2013年インド職場におけるセクシャル・ハラスメント(予防、禁止、及び救済)法(Sexual Harassment of Women at Workplace (Prevention, Prohibition and Redressal) Act, 2013)及びこれに基づいて規定された規則

1.規定内容

2013年インド職場におけるセクシャル・ハラスメント(予防、禁止、及び救済)法(以下「セクシャル・ハラスメント法」)は、職場における女性へのセクシャル・ハラスメントから女性を保護することを目的とする法律です。具体的には、職場における女性へのセクシャル・ハラスメントの予防及びその被害の救済を規定しています。

2.適用対象
 
セクシャル・ハラスメント法は、同法に定義される「職場(workplace)」において雇用されているすべての従業員に対して適用されます。「職場」の定義は広範にわたり、特に、公的及び民間組織の部局、組織、施設、事務所、支店等の他、スポーツ施設、病院、Society又はTrustがこれに含まれます。さらに同法によると、業務中又は業務から生じた理由のため従業員が訪れた場所(通勤のために雇用主によって提供された移動手段も含まれます)もその対象となります(同法第2条 (o))。

なお、「雇用主」とは、当該職場の長、又は当該職場のマネジメント、監督、及び管理につき責任を負う者と定義されており(同法第2条 (g))、また「従業員」とは、職場において雇用されているすべての者を意味し、正規、臨時、日雇い等を問わず、直接雇用されているか、エージェントを通じて雇用されているかを問わず、報酬が発生しているかどうかを問わず、契約社員、研修生、その他同様の呼称の者を含むと定義されています(同法第2条 (f))。

「セクシャル・ハラスメント」には、身体的な接触及び誘い、性的好意の要求、性的な意味を持つ言動、ポルノを見せること、もしくはその他一切の性的な意図を有する迷惑行為(直接的か比喩的か否かを問わない)が含まれると定義されています(同法第2条 (n))。

3.救済機関

(1)社内セクシャル・ハラスメント委員会(Internal Complains Committee)
セクシャル・ハラスメントの被害を受けた従業員からの被害申告を受け付けるため、セクシャル・ハラスメント法は、10名以上の従業員を雇用しているすべての管理ユニット又は事務所に社内セクシャル・ハラスメント委員会(Internal Complains Committee)の設置を義務付けています(同法第4条)

(2)地域セクシャル・ハラスメント委員会(Local Complains Committee)
従業員が 10 人未満であることを理由に社内セクシャル・ハラスメント委員会が設置されていない場合、又は社内セクシャル・ハラスメント委員会は設置されているものの、被害申告が雇用主自身に対して申立てられた場合、地区およびブロック単位で設置される地域セクシャル・ハラスメント委員会が、セクシャル・ハラスメントの被害を受けた従業員からの被害申告を受け付けることになります(同法第6条)。

4.セクシャル・ハラスメント委員会による調査

セクシャル・ハラスメントの被害を受けた従業員から被害申告を受けた社内セクシャル・ハラスメント委員会/地域セクシャル・ハラスメント委員会は、被害事実の有無を調査し、その結果、被害申告が事実であるとの心象に至った場合、委員会は雇用主(地域セクシャル・ハラスメント委員会の場合は、地域担当官(District Officer))に対し、加害者に対する処分や被害を受けた従業員への補償等について勧告しなければならないとされています。 
このような勧告を受けた雇用主は、一定の期間内に当該勧告に従った処分をしなければなりません。

5.雇用主の義務

上記の他、セクシャル・ハラスメント法は、雇用主の義務として以下を規定しています(同法第19条)。

(a)職場における安全な労働環境(職場で接する者からの安全を含む)を提供すること
(b)職場の目立つ場所に、セクシャル・ハラスメント行為に対する刑事上の責任、及び社内セクシャル・ハラスメント委員会を設置する命令を掲示すること
(c)セクシャル・ハラスメント法の規定に関する従業員向けの講習会および啓蒙活動を定期的に実施すること、及び別途規則により規定される方法で社内セクシャル・ハラスメント委員会の委員向けのオリエンテーションを実施すること
(d)被害申告に対する対応、及び調査のために必要な設備を社内セクシャル・ハラスメント委員会/地域セクシャル・ハラスメント委員会に提供すること
(e)加害者および目撃者が社内セクシャル・ハラスメント委員会/地域セクシャル・ハラスメント委員会へ出席できるように支援すること
(f)必要とされる情報を社内セクシャル・ハラスメント委員会/地域セクシャル・ハラスメント委員会が利用できるようにすること
(g)被害女性が1860年インド刑法又はその他の法律違反に関する刑事告訴をする場合には、それを支援すること
(h)加害者が当該セクシャル・ハラスメント事件の発生した職場の従業員ではない場合で被害女性が望む場合、1860年インド刑法又はその他の法律違反に基づき加害者に対して刑事上の訴訟を提起すること
(i)職務規定上、セクシャル・ハラスメントを不法行為として取り扱い、そのような不法行為に対する処分を行うこと
(j)社内セクシャル・ハラスメント委員会による報告書の適時提出をチェックすること

6.罰則

雇用主がセクシャル・ハラスメント法に基づく社内セクシャル・ハラスメント委員会を設置しない場合、又は同法の所定の規定に違反した場合、50,000ルピー以下の罰金が科される可能性があります。また再犯の場合、2倍の額の罰金、事業遂行に必要なライセンスの取消し、登録の抹消または更新拒絶等の処分が科される可能性もあります(同法第26条)。
以上
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。
   第15回に続きます。
【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  制作

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