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2019.09.18

その他のアジア【アラブ首長国連邦(UAE)】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/《アラブ首長国連邦(UAE)編》第4回「UAEの外資規制について」
【アラブ首長国連邦(UAE)】第4回「UAEの外資規制について」
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。
 
《UAE編》第4回「UAEの外資規制について」

概要
 本稿では、1.UAEの主な外資規制の内容について概説し、その後、2.出資比率規制が適用されない、いわゆるフリーゾーン会社の特徴と規制、及び、3.出資比率規制が適用されるオンショア法人における支配権の確保の方法について検討します。
 
1.UAEにおける外資規制の主な内容
(1)出資比率規制
 UAEで設立された会社は、原則としてその持分のうち51%以上を、UAE国民やUAE国民が100%出資する法人等によって保有されていなければなりません。換言すると、外国資本は、原則として、UAEの会社の49%までしか持分を保有することができません。出資比率規制は、業種・事業内容・法人規模などを問わず広く適用されますが、以下のいくつかの適用除外が定められています。
 まず、出資比率規制を定める会社法(UAE Commercial Companies Law)は、UAEのフリーゾーン内で設立されたいわゆるフリーゾーン会社には適用されず、それ以外の会社(オンショア法人と呼ばれます。)にのみ適用されます。したがって、フリーゾーン会社については、外国資本が100%出資をすることが可能です。
 また、UAE国外に本社を有する外国企業がUAE国内に支店や駐在員事務所を置く場合にも、出資比率規制は適用されません。ただし、この場合、UAE国民またはUAE国民が100%出資する法人を「Service Agent」(いわゆるスポンサー)として任命し、また、経済省(Ministry of Economy)に外国企業登記をする必要があります。
 さらに、2018年9月に公布された、連邦法第19号によって、外国直接投資委員会が定めるポジティブリストに合致する事業分野については、出資比率規制が撤廃されることとなりました。ポジティブリストの対象は下記の13分野のうち122業種となる予定ですが、本稿執筆時点において122業種全てが公表されておらず、今後の公表が待たれます。

                                  記

1.再生可能エネルギー(Renewable energy)
2.宇宙(Space)
3.農業(Agriculture)
4.製造業(Manufacturing industry)
5.輸送・倉庫業(Transport and storage)
6.ホスピタリティー・飲食サービス(Hospitality and food services)
7.情報通信(Information and communication)
8.専門的科学技術活動(Professional, scientific and technical activities)
9.行政/サポートサービス(Administrative and support services)
10.教育活動(Educational activities)
11.ヘルスケア(Healthcare)
12.芸術・エンターテインメント(Art and entertainment)
13.建設(Construction)
 
(2)規制業種
 (1)の出資比率規制を超え、外資による資本参加が一切認められていない業種が存在します。具体的には、商業代理店、労働者供給、高齢者及び障害者サービス、印刷出版業等の業種の一部がこれに該当し、UAE国民またはUAE国民が100%出資する法人が、当該事業を行う法人の100%の持分を保有することが求められています。
 また、医療サービス、情報通信、教育、石油・ガス、製造業等の業種については、外資が事業活動を行うにあたって、所轄官庁の承認や特別なライセンスの取得が求められる場合があります。
 
(3)最低資本金規制
 従前、UAE本土で設立されたLLCについては最低資本金額が15万ディルハム(1ディルハム28円とした場合約420万円)(ドバイでは30万ディルハム(約840万円))とされていました。しかしながら、2015年の改正会社法により、最低資本金額の制限については、例えばLLCにつき、「当該法人の目的を達成するに十分な資本金を有する必要がある」と定めるのみで、具体的な金額を規定されなくなりました。
 もっとも、現在も、実務上は、上記の従来の最低資本金の拠出が、ライセンス取得の際等に求められる可能性がある点には、十分な留意が必要です。
 
2.フリーゾーン会社の特徴と規制
 フリーゾーン会社は、外国資本100%での設立・設置が認められています。また、フリーゾーン内に設置された外国企業の支店及び駐在員事務所は、「Service Agent」の任命が免除されます。
 このフリーゾーン会社に対しては、法人税及び所得税の設立後最低50年間の免除、関税の免除、資本及び利益の本国送金の自由等の手厚い投資優遇措置が採られています。
 もっとも、フリーゾーン会社は、原則として、それぞれ設立が認められたフリーゾーン内での取引及びUAE国外との国際取引のみが許され、UAE本土において活動することはできません。この点、前記1.⑴のポジティブリストに記載された分野、業種については、100%外資によるオンショア法人の設立が認められたことで、一定の規制緩和が図られることとなりました。
 
3.オンショア法人における支配権の確保
 UAE本土での事業展開を検討する場合には、上記のとおり現在のところフリーゾーン制度を利用することはできませんので、支店設置等で間に合う場合を除けば、オンショア法人を設立することになります。この場合、前述のとおり、ポジティブリストに掲載されている分野及び事業を除き、UAEのローカルパートナーに51%以上の持分を与えなければなりません。
 このようにローカルパートナーが過半数の持分を有する現地法人を設立した場合に、いかにして、少数派である外資側のコントロールを及ぼすかという点が、現地法人運営上の重要な課題となります。
 その具体策としては、①定款において株主総会の決議要件を厳しくするスーパー・マジョリティ条項を規定する手法や、②本国の社員(持分権者)とUAE国民の社員との間で別途合意を交わし、UAE国民の社員の利益配当受給権の全てまたは大部分を本国の社員に付与する手法などが考えられます。
 また、2015年の会社法改正によって、LLCにおいては、定款に定めることで持分の譲渡制限が可能となったほか、株式会社形態においても、種類株式の発行が可能になり、少数株主の保護制度も導入されたことから、これらの改正規定を活用して、様々な工夫を凝らすことにより、これまでよりも実効的なコントロールの維持が検討できます。
 
以上
 
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。
 
第5回に続きます。

【関連記事】
第1回「UAEにおけるM&Aについて」
第2回「UAEにおける汚職防止関連法について」
第3回「UAEにおける知的財産権について」
第5回「アラブ首長国連邦(UAE)における拠点設置について」
第6回「UAEの紛争解決について」
【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  作成

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