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2019.08.28

その他のアジア【カタール】第3回「カタールにおけるМ&Aについて」
【カタール】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/《カタール編》第3回「カタールにおけるМ&Aについて」
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。

《カタール編》第3回「カタールにおけるМ&Aについて」

1.はじめに
 2017年3月、カタールのアブドッラー・ビン・ナーセル・ビン・ハリーファ・アール=サーニー首相と、イギリスのテリーザ・メイ首相は、カタール投資庁(QIA)が、イギリスのガス会社であるナショナル・グリッド社の約61%の株式を買収する旨、合意に至ったと発表しました。
 また、カタール航空は、2017年、キャセイパシフィック航空の株式の約9.61%(6億6100万ドル相当)を取得するなど、複数の買収を実施しました。
 2018年7月には、カタールの国有企業が、ニューヨークの老舗ホテルであるプラザホテルを総額約6億ドルで買収し、全株式を取得する旨の合意に至ったとの報道もなされています。
 このように、カタールにおいては、近年、国有又は民間、国内外を問わず、広くM&Aが行われており、その動向に注目が集まっています。
 そこで、本稿では、カタールにおける主なM&Aの手法のうち①株式取得、②合併、③会社分割の3種類について、カタール会社法(2015年法律第15号)の規定を中心に、その内容を通覧することに致します。
 なお、本稿は、非公開会社を対象会社とするM&Aを前提として検討致しますので、カタールにおけるM&A規則(Merger Acquisition Rules)やカタール証券取引所ルールブック(The QE Rulebook)等、公開会社又は上場会社を対象とする法令につきましては、今回は解説を割愛致します。
 
2.株式取得(Acquisition of Companies
(1)買収の意義
 カタール会社法によれば、以下に該当する場合、取得の対象となる会社(対象会社)を買収したものとされます。
 
 ①直接又は間接を問わず、対象会社の議決権の過半数を取得する場合。
 ②対象会社の利益及び目的に反せず、他の株主又はパートナーとの合意により議決権の過半数を支配する場合。
 ③対象会社の総会における決定を実質的に支配する議決権を保有する場合。
 ④対象会社の取締役会、監査役会等の構成員の過半数を選任し及び解任する権限を持つ議決権を保有する場合。
 
(2)要件
 買収を有効に行うためには、以下の要件を満たす必要があります。

 ①買収を行おうとする会社(買収会社)と対象会社、双方の臨時総会において、買収を承認し、既存株主の新株優先引受権を放棄する旨の決議が可決され、かつ、両会社におけるかかる決議が経済通商省(Ministry of Economy and Commerce)の管轄行政部門において承認されていること。
 ②定款の定めに従って、買収会社において、資本を増額する旨の決議と当該増加資本を株主又はパートナーに対し、その持分比率に応じて配分する旨の決議がそれぞれ可決されていること。
 ③取得対象となる株式等の所有権の移転に関する手続きが完了していること。
 ④株式等を購入することにより取得する場合、買収会社は、対象会社に対し、取得対象となる株式等の価値に相当する対価を支払い、かつ、対象会社における株式等の売却を承認する臨時総会の日に登録されている株主又はパートナーの間で配分を行うため、当該買収対価を口座に預託していること。
株式又は社債を対価として交付することにより対象会社の株式等を取得する場合、買収会社は、対象会社における買収承認決議の日に登録されている株主又はパートナーに対し買収対価となる株式又は社債を配分するため、対象会社に対し、当該株式又は社債を交付していること。
 ⑤対象会社は、その定款を変更し、新たな取締役会を選任するために必要な措置を講じていること。
 ⑥買収会社は、30日以上、取得対象となる株式の価値又は選任された専門家により決定された価値を下回らない金額で株式等を購入する申し出を行う権利を含む少数株主の権利を保護するために必要な措置を講じていること。
 
(3)買収決議の公表
 買収を承認する臨時総会決議は、買収会社の費用負担において、日刊地方新聞2紙(最低1紙の言語はアラビア語)において掲載される必要があり、かつ、可能であれば、2社のウェブサイトにおいても公表される必要があります。
 
3.合併(Merger of Companies
(1)概要及び種類
 日本と同様に、①既存の会社のうち1社が合併後に存続し、合併により消滅する1社以上の他の会社からその権利義務の一切を承継するもの(吸収合併)と、②2社以上の会社が合併により消滅し、それらの権利義務の一切を合併により新たに設立する会社が承継するもの(新設合併)の2種類が定められています。
 なお、カタール会社法においては、会社は、清算中であっても、同種又は異なる種類の他の会社との間で合併をすることができると定められています。
 
(2)合併契約の締結
 合併契約においては、合併の諸条件、特に、合併により消滅する会社の債務の算定評価、及び、合併後存続する既存の会社(存続会社)又は合併により新設される会社(新設会社)の資本における保有株式等の数が定められる必要があります。
 
(3)合併の手続
ア 吸収合併
 吸収合併は、概要、以下の手順で行われます。

 ①吸収合併により消滅する会社(消滅会社)は、解散決議を行います。
 ②カタール会社法の現物株式の評価に関する定めに従い、消滅会社の純資産価値を評価・算定します。
 ③存続会社は、上記②の消滅会社の純資産価値の評価に基づいて、その資本を増加する決議を行います。
 ④増加資本は、消滅会社の株主又はパートナーに対し、その持分割合に応じて配分されます。
 
イ 新設合併
 新設合併は、概要、以下の手順で行われます。

 ①合併を行う全ての消滅会社で解散の決議を行います。
 ②カタール会社法所定の方法により新会社を設立します。
 ③新会社の資本における各消滅会社の持分割合に応じて新会社の株式等が割り当てられ、これらの株式等は、各消滅会社の株主又はパートナーに対して、その持分割合に応じて配分されます。
 
(4)合併の公表
 合併の決定は、買収決議と同様に、日刊地方新聞2紙(最低1紙の言語はアラビア語)において掲載される必要があり、可能であれば、2社のウェブサイトにおいても公表される必要があります。
 
(5)合併の法的効果
 合併により消滅する会社の権利義務の一切は、これらの手続きを完了し、かつ、登記を行った後、吸収合併の場合には存続会社、新設合併の場合には新設会社において、それぞれ承継されます。すなわち、存続会社又は新設会社は、消滅会社の権利義務に関して適法な承継人であるとみなされます。
 
4.会社分割(Division of Companies
(1)概要
 会社分割を行う会社(分割会社)は、それぞれ独立の法人格を有する2社以上の会社に自身を分割し(承継会社)、分割会社の権利義務を承継会社に承継させることができます。分割会社は承継会社として引き続き存続することも、消滅することも可能です。なお、会社分割により生ずる承継会社は、法規に従うかぎり、あらゆる組織形態を採ることができます。
 
(2)決議内容及び決議要件
 分割会社は、会社分割の決議において、承継会社の株主又はパートナーの数及び氏名、当該株主又はパートナーの承継会社において保有する株式等、各承継会社の権利義務、並びにこれらの者の間における資産及び負債の配分について定めなければなりません。
 また、会社分割の決議は、分割会社の臨時総会において、その資本の4分の3を保有する株主又はパートナーらの議決権の過半数をもって決議される必要があります。
 
(3)会社分割の法的効果
 承継会社は、会社分割の決議の内容に従い、債権者の権利を害することなく、分割会社から承継を受ける限度で、分割会社の権利義務を適法に承継します。

以上
 
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。
 
第4回に続きます。

【関連記事】
第1回「カタールにおける新仲裁法について」
第2回「カタールにおける汚職関連防止規制について」
第4回「カタールにおける知的財産権について」
【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  作成

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