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2018.11.28

その他のアジア【サウジアラビア】第1回「サウジアラビアの外資規制について」
【サウジアラビア】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/《サウジアラビア編》第1回「サウジアラビアの外資規制について」
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。
 
《サウジアラビア編》では、我が国にとって最大の原油供給国であるサウジアラビアの投資環境について取り上げます。

※現在、日本から同国への主要輸出品目は、自動車を中心とする機械機器であり、日系企業の進出企業数(拠点数)は115、在留邦人は1,362人となっています(外務省「海外在留邦人数調査統計」2017年10月1日時点)。


《サウジアラビア編》第1回:「サウジアラビアの外資規制について」

概要
従前から外資規制が比較的緩やかだったサウジアラビア。日・サウジ・ビジョン2030の策定により、今後、より一層の規制緩和の兆しを見せつつあります。本稿ではサウジアラビアの外資規制制度について概説します。
 
1 背景事情
2005年のWTO加盟以来、サウジアラビアの外資規制は順次緩和の方向で進んできました。
さらに、石油依存経済に対する危機感を募らせるサウジアラビア政権は、ムハンマド副皇太子(現皇太子)の指揮のもと、2016年4月、石油依存体質から脱却し包括的発展を実現するための総合政策「ビジョン2030」を発表しました。
2017年3月13日には、サルマン国王以下1200名以上のサウジアラビア要人が我が国に来日し、「日・サウジ・ビジョン2030」を策定、①競争力ある産業、②エネルギー、③エンターテイメント・メディア、④健康・医療、⑤農業・食料、⑥質の高いインフラ、⑦中小企業・能力開発、⑧文化・スポーツ・教育、⑨投資・ファイナンスの9分野にまたがる広範な協力分野が設定され、規制の見直し等を行う方向性が合意されました。
その後、官公庁だけでなく民間企業も積極的に参画したプロジェクトが展開されており、両国の企業が36もの覚書を結び、ビジネスプロジェクトを開始しています。
このように、サウジアラビアでは、我が国からの投資の好環境が整いつつあります。
以下では、個別の項目について、現状の外資規制制度を説明します。
 
2 規制業種・禁止業種(ネガティブリスト)
サウジアラビア総合投資院(Saudi Arabian General Investment Authority:SAGIA)理事会によって、外国投資が原則として禁止される事業分野のリスト(いわゆるネガティブリスト)が公表されています。2017年4月28日時点でSAGIAが公表しているネガティブリストの主な内容は以下のとおりです。なお、同リストでは、国連中央生産物分類(Central Products Classification:CPC)が参照されているため、同番号も付記します。
 
 a 石油の探鉱、採掘及び生産。ただし、鉱業部門に関連する役務を除く(CPC5115+883)
 b 軍事機器、装置及び軍服の製造
 c 民間用の爆発物の製造
 d 軍隊における配食、ケータリング
 e 警備業、探偵業
 f メッカ又はマディーナにおける不動産投資業
 g 巡礼関係観光業
 h人材斡旋、採用関係事業
 i 不動産仲介業
 j 以下の事業活動を除く印刷出版業
  ・ 前刷り(CPC 88442)
  ・ 印刷機器関連業(CPC 88442)
  ・ 絵画、書道(CPC 87501)
  ・ 写真関連事業(CPC 875)
  ・ ラジオ放送、テレビ放送(CPC 96114)
  ・ 外国メディアの事務所設置(CPC 962)
  ・ 広告宣伝業(CPC 871)
  ・ 広報(CPC 86506)
  ・ 出版(CPC 88442)
  ・ プレスサービス(CPC 88442)
  ・ コンピュータソフトウェアの製造、販売及び貸出(CPC 88)
  ・ メディアコンサルタント、メディア研究(CPC 853)
  ・ タイピング、コピー(CPC 87505+87904)
  ・ 映画及びビデオテープの配給(CPC 96113)
 k 代理店(CPC 621)
 l 視聴覚媒体に関するサービス
 m陸上輸送。ただし鉄道による都市間旅客輸送を除く
 n 助産師、看護婦、理学療法、準医療行為(CPC 93191)
 o 漁業
 
3 資本金規制、出資比率規制
⑴ 各業種ごとに、以下のとおり、外資進出の際の最低資本金、サウジアラビア側の最低持分比率が定められています。
 
業種 最低資本金(SR) サウジアラビア側の最低持分比率
サービス業 後述(3(2))参照 後述(3(2))参照
 
製造業 1,000,000 -
商業 26,666,667 25%
農業 25,000,000 -
情報通信業 - 40%
付加価値通信業 - 30%
保険業 100,000,000 40%
再保険業 200,000,000 40%
不動産金融業 200,000,000 40%
不動産開発業 プロジェクト毎に30,000,000 -
建設施工管理業等 - 25%
 
なお、SAGIA理事会の裁量により、理事会が指定する地域への進出や、高度な技術・知識を必要とする事業等については、最低投資額が減額されることがあります。
 
 
⑵ 小売・流通・輸入分野(Trading Sector)の規制緩和
2016年6月、サウジアラビア政府は、前述のビジョン2030政策実現の第一歩として、3か国以上に既に進出している国際企業を対象に、以下の一定の条件下で、サービス業のうち、小売・流通・輸入分野(Trading Sector)における100%外資進出を認める旨の閣議決定を行いました。
 
進出パターン1 進出後当初5年間で3億SAR以上をサウジアラビアに投資すること(資本金はこの3億SARの中に含まれていてもよいが、資本金は3,000万SAR以上であること)
 
進出パターン2 進出後当初5年間で2億SAR以上をサウジアラビアに投資し(資本金条件はパターン1と同じ)、かつ、同期間に以下の項目を1つ以上を満たし、サウジアラビアの発展に貢献すること
 a.サウジアラビアで販売する製品の30%以上を現地製造すること
 b.サウジアラビアにおける売上高の5%以上を研究開発に充てること
 c.サウジアラビアに販売及びアフターケアサービスを行う地域拠点を開設すること
 
進出パターン1、2のいずれの場合であっても、以下の条件が必須となります。
 a 労働省が定めるサウジアラビア人の雇用比率(サウダイゼーション)を順守すること。サウジアラビア人の管理職登用に向けた研修を雇用から5年間実施し、その後も継続すること
 bサウジアラビア人従業員の30%に対して、毎年、研修を実施すること
 
以上の条件を充足することは、現状では一定規模以上の企業でなければハードルが高いと考えられますが、ビジョン2030の方向性に照らし、今後の更なる規制緩和の可能性に要注目です。
 
4 不動産所有
外国人投資家は、自然人であるか法人であるかにかかわらず、当局の承諾を得れば、不動産を賃借することは勿論、当局に届け出た活動に必要な不動産を自己所有することもできます。従業員の居住に必要な不動産も同様に取得可能です。
外国人投資家が、事業用の工場などの建物を新築するために土地を購入する場合、その設備投資額は3,000万SAR以上でなければなりません。また、不動産の取得後5年以内に投資を実行する必要があります。
その他、適法な滞在許可証を有する外国人投資家(自然人)は、内務省の許可を条件として、居住用不動産を自己所有することもできます。
このように、サウジアラビアでは外国人による不動産所有を広く認めており、進出を容易にしています。
ただし、以上に関わらず、外国人投資家は、メッカ及びマディーナ内においては、不動産を自己所有することは原則として許されませんので、注意が必要です。
 
5 ライセンス取得手続
外国投資ライセンスの申請手続については、SAGIAが一括して対外的な窓口になっています。
SAGIAのホームページは大変充実しており、同ホームページ上から、各種の電子申請をすることが可能になっています。
SAGIAは、投資家からライセンス申請を受けると、30日以内に、ライセンスを付与するか否かの決定をすることと定められています。
申請が却下された場合、外国投資家は、却下決定通知を受領した日から30日以内であれば、SAGIA理事会に対して、却下決定に対する異議を申し立てることができます。
ライセンスを取得した外国投資家は、申請時にSAGIAに提出したスケジュールに従い、現地法人の設立などの手続きを行わなければなりません。正当な理由に基づいてスケジュールが遅延する場合は、1年を超えない範囲で延長申請を行うことができます。
加えて、2017年1月からは、インスタント・ライセンス・サービスが開始され、一定の要件を満たす外国投資家については、インターネット経由の申請の受理から10分以内にライセンスを発行するもので、SAGIAの外国投資誘致の1つの目玉になっています。

 ※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。

第2回に続きます。

【関連記事】
第2回「サウジアラビアの新会社法について」
第3回「サウジアラビアにおける拠点設置について」
第4回「サウジアラビアにおける会社運営について」
第5回「サウジアラビアの紛争解決について」
第6回「サウジアラビアにおける汚職防止関連法について」


 
【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  作成

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