2018.08.28
シンガポール【シンガポール】シンガポール政府による糖尿病対策と日系企業のビジネスチャンス 第2回/全2回
- 【シンガポール】シンガポール政府による糖尿病対策と日系企業のビジネスチャンス 第2回
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第1回は、シンガポールにおける糖尿病の現状、シンガポール政府及び現地企業の取組みについて解説致しました。第2回は、糖尿病対策に伴う日系企業にとってのビジネスチャンスについて紹介致します。
4.糖尿病対策に伴うビジネスチャンス
現地医療関係者へのヒアリングによると、政府は糖尿病対策として今後さらに食習慣の改善に注力する見込みで、医療関係者の間では日本の「安心かつ健康的な食品」や「食育」が注目されているようです。
■「Healthier Choice Symbol」を活用した療養食
「Healthier Choice Symbol」とは、シンガポール健康促進庁が1998年に定めた認証で、他の食品に比べて糖質・脂肪・ナトリウムなどの含有率が低いことを示し、健康志向の食品の目安とされています。現在、約2,600品目の食品がこの認証を取得しており、日系企業では、東洋ライス(東京)の「金芽(きんめ)ロウカット玄米」、ヤクルトの「ヤクルトエースライト」、キッコーマンの「減塩しょうゆ」などがあります。
特に「金芽ロウカット玄米」は、小売店や飲食店だけではなく、糖尿病などの慢性疾患に対する高品質な療養食として、現地の大手医療機関にも採用されています。
このように、日本企業が、「Healthier Choice Symbol」の取得と同時に、療養食への採用を見据えた展開を行うことも一考に値すると思われます。
■「食育」の普及
最近では、サラダなどのヘルシー料理専門店や、仕事帰りにランニングする人が増加するなど、シンガポールでの健康志向の高まりを確かに感じ取ることができる一方で、食習慣改善がうまくいかず、挫折してしまう例も多いようです。そもそも、1日のカロリー摂取量の目安や健康的な食事法(例:食べる順番)など、食育に関する具体的な教育や食品表示制度が確立されていないのが現状です。例えば、日本の飲食店ではカロリー表示がされているメニューが多い一方で、シンガポールではほとんど見かけることはありません。
この現状をビジネスチャンスと捉え、食育の啓蒙活動と並行した食品・サービスの提供を通じて、シンガポールでの新たなニーズを開拓できる可能性があります。例えば、低カロリーのローカルフードの開発など、既存の食習慣を変えなくて済む、継続しやすい仕組みを作ることも検討する価値があるかもしれません。
おわりに
シンガポールでは日本の商品・サービスが多く提供されていますが、どの分野においても競合が激しく、差別化が非常に難しくなっています。
今後は、日本で提供しているものをそのまま輸出するのではなく、現地のニーズに合った商品・サービスを開発することで、新たなビジネスチャンスが生まれてくるはずです。
本稿では、シンガポールでの糖尿病対策について述べましたが、食習慣が似ている他のASEAN諸国も同様の問題を抱えていると言えます。ビジネス環境の整っているシンガポールを足がかりに糖尿病対策ビジネスを展開し、将来的には他のASEAN諸国へも展開していくといったビジネスプランも、十分検討の余地があるのではないでしょうか。
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- 【掲載元情報】
- 西日本シティ銀行 シンガポール駐在員事務所 稲場 久隆