2018.06.26
- その他のアジア【アジア】弁護士法人ブリッジルーツ「外国人雇用時の法的留意点と労務管理実務」 第3回/全3回
- 【アジア】弁護士法人ブリッジルーツ「外国人雇用時の法的留意点と労務管理実務」 第3回
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第3回目は、外国人雇用を成功に導く3つのポイントのうち、在留資格の管理、生活支援及び異文化への配慮について解説する。
4.在留資格の管理
外国人労働者が日本で長期就労する場合、適法な在留資格を有しなければならないため、企業は、外国人を採用する際、適法に就労できる在留資格があるか否かを確認する必要がある。「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」等在留資格を有する外国人は、制限なく就労することができる。しかし、「留学」、「短期滞在」、「研修」、「家族滞在」、「文化活動」の在留資格を有する外国人は就労できないため、これら外国人を採用したい場合、その所持している在留資格を就労できる在留資格へと変更させる必要がある。この在留資格の変更手続きについて、使用者である企業は、申請書類の準備に協力する必要がある。
また、労働力不足の問題を解消するため、スーパーや工場等は、留学生をアルバイトとして採用することが多い。但し、留学生がアルバイトをする場合、2つの法的制限が課されている。1つ目は、資格外活動許可を取得することである。資格外活動許可を取得していない留学生を採用する際は、当該許可を取得させる必要がある。2つ目は、アルバイトの可能な時間に対し制限が課されている。例えば、大学生の場合、1週間の労働時間は28時間を超えてはならない。企業が、留学生を制限時間以上働かせた場合、不法就労助長罪に問われる可能性がある。
最後に、外国人労働者を雇用したすべての事業主は、ハローワークへ外国人雇用の状況を届け出なければならない。この届出手続きを行わない場合、30万円以下の罰金を科される可能性があるため、忘れないように留意する必要がある。
5.生活支援のポイント及び異文化への配慮
外国人労働者に安心できる労働環境を提供するために、労務上の配慮のみならず、生活や異文化等の面にも配慮し、支援を提供した方が良いだろう。
生活の支援について、いくつかの例を簡単に紹介したい。まず、外国人に対する不動産の賃貸条件は厳しいため、外国人労働者にとっては、住居の確保は大きな問題となる。企業は、①寮の用意又は企業名義で不動産を賃借する、②保証会社を紹介し、保証料を負担する、③連帯保証人になる等の方法を通して、外国人労働者のために住居を準備することが重要である。また、年末調整の際に、外国人労働者から、外国にいる家族を被扶養者に入れたいという要望を受ける可能性がある。法律により、被扶養者は外国にいる場合でも、必要書類(親族関係に関する証明資料、海外送金会計書類等)を提出すれば、扶養控除に関する規定を適用することができるため、企業が手続きに協力すれば、外国人労働者のモチベーションを高めることが可能となる。
生活の支援以外に、仕事上の衝突を回避し、仕事の効率を高めるために、互いの文化を理解し、配慮しながら仕事することが推奨される。例えば、仕事のやり方について、日本の文化では、計画及びリスク回避を重視する傾向が見られる一方、外国の文化(特に中国や韓国)では、結果又はスビードを重視する傾向がある。このような異なる考えを持っている労働者が共同で仕事をする場合、たびたび衝突が生じることが予想される。この場合、互いの長所を吸収しつつ、妥当な解決方法を探るように努力することが望ましい。また、各国の労働者は、自国の特殊な事情により、特別な要求があることに留意する必要がある。例えば、中国の労働者は旧正月の際に長期休暇を取りたいこと、イスラム教の労働者は豚肉を食べられないこと、韓国の男性は兵役義務を履行するため休職したいこと等である。
企業は、採用した外国人材を確保するために、外国人労働者それぞれの国の文化や事情に配慮し、良好な労働環境を整えることが何よりも肝要である。
【関連情報】
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- 【掲載元情報】
- 弁護士法人ブリッジルーツ 中国人弁護士 厳逸文