2017.11.27
- その他のアジア【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第25回『マレーシア 消費者保護法の改正』
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このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights第78号(2017年11月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
◇ 消費者保護法の改正
マレーシアでは、2017年4月に、The Consumer Protection (Amendment) Bill(「改正法案」)が上院と下院をそれぞれ通過しました。改正法案は多数の条項に改正を加えるものですが、とりわけ大きな変更として、割賦販売に対する新たな規制の導入が挙げられます。そして、改正法案のうち上記の割賦販売規制に関し、別途規則により定めるとされていた部分について、10月にConsumer Protection (Credit Sale) Regulations 2017(「2017年規則」)が制定され、2018年1月から効力を生じるものとされました。ただし、改正法案自体が、卸売・小売業を広く監督する政府機関であるMinister of Domestic Trade Co-operatives and Consumerism (MDTCC) が指定した日をもって効力を生じるものとされており、改正法案の効力発生が2018年1月以降となる場合は、2017年規則についても改正法案と同時に効力を生じることとなると考えられます。
これまで、割賦販売についてはConsumer Protection (Credit Sale) Regulations 2012(「2012年規則」)により規制されていましたが、改正法案及び2017年規則は2012年規則の規制よりもより詳細な規定を定めるものとなっています。上記のとおり、改正法案及び2017年規則の効力発生日は未定ではあるものの、マレーシアにおいてBtoCビジネスを展開するにあたり留意すべき改正と考えられるため、改正法案の要点をご紹介します。
(1) 規制対象
改正法案上規制の対象となる割賦販売は、消費者が商品を購入するに際し分割払いを行わせることにより、信用供与を行うこととなるものを指し、クレジットカードを用いての購入はこれには該当しないとされています。2012年規則では、消費者保護法の対象となる物全てが規制対象となっていましたが、2017年規則は規制対象となる商品を家電・家庭用品、携帯電話、乗用車・バイクなどの10品目に限定しており、規制対象となる品目はやや限定的になったといえます。
(2) 事前手続
改正法案上、割賦販売契約の締結に先立ち様々な手続を行うことが必要とされています。こうした事前手続としては以下のようなものが挙げられます。
- 買い手となる消費者が割賦販売契約上どのような債務を負うこととなるかの概要を説明した書面(2017年規則の書式による)を消費者に交付しなければならない
- 上記の書面交付後、消費者が割賦販売の申込みを行う前に、信用供与を行う者から、信用供与に対する同意を取得し、同意にかかる書面(2017年規則の書式による)を消費者に交付しなければならない
- これらの書面は消費者本人又は代理人に対して直接交付しなければならず、受取確認がなされなければならない
- これらの書面の交付から10営業日以内に割賦販売契約を締結してはならない
(3) 割賦販売契約の内容
改正法案は2012年規則と同様、割賦販売契約は買主である消費者の選択により、英語又はマレー語で作成されなければならないものとしています。2017年規則は契約書の用紙サイズ・文字サイズ・フォントについても規定を設けています。また記載事項は法定されており、法定の記載事項を欠いた割賦販売契約は無効とされています。法定の記載事項は以下のものをはじめ多岐にわたります。
- 契約の効力発生日
- 割賦払いの回数、各回の支払額、各回の支払期日並びに支払いの場所及び受取人
- 割賦販売の対象となる商品
- 割賦販売手数料その他割賦販売に必要となる手数料及びその内訳
- 買主である消費者及び信用供与を行う者それぞれの権利義務
- その他法令上指定されている事項(保管料、保険料、輸送費等)
(4) 罰則
これらの規制に反した場合、契約が無効になるほか、信用供与者が個人の場合には2年以下の懲役及び5万リンギット(現在の為替レートで約135万円)以下の罰金(2度目以降の違反の場合には5年以下の懲役及び10万リンギット(現在の為替レートで約270万円)以下の罰金)、法人の場合には10万リンギット以下(現在の為替レートで約270万円)の罰金(2度目以降の違反の場合には20万リンギット(現在の為替レートで約540万円)以下の罰金)が科せられうるものとされています。
改正法案により導入される規制は、上記のとおり多岐にわたり、違反の場合には刑事責任も問われうるという内容となっていることから、割賦販売契約の締結を検討するにあたっては、現地弁護士等に事前相談を行うことが好ましいと考えられます。
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- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 作成