2017.08.14
中国【中国】陳弁護士の法律事件簿㉝「OEMは商標権侵害か?」
- 【中国】陳弁護士の法律事件簿㉝
-
OEMは商標権侵害か?
2011年、ある著名な玩具の商標権者であるA社は、B社のある玩具がA社の登録商標を使用し、かつ中国甲地区の税関を通じてメキシコに輸出されていることに気づき、B社は直ちに甲地区の税関に対し、上述の商標権侵害製品について差し押さえ措置を講じるよう申請した。差し押さえ措置が講じられた後、A社は、B社が許可を得ることなく、A社の登録商標マークを付けた玩具を無断で製造し、A社の登録商標の専用権を侵害したことを理由に、裁判所に対し、「B社が商標権侵害を停止し、賠償金を支払う」判決を下すよう請求した。
B社は、本件に係る商品はメキシコのC社の委託を受けて製造したOEM商品(注:他社によって作られた製品を自社ブランドとして売る商品を指す)であり、C社はメキシコ等多くの国と地区で商標登録を行い、B社が製造した商品は全てメキシコに輸出され、実際に中国の市場で販売されることなく、中国消費者の誤解を招かず、商標権侵害にならないと主張した。
『分析』
本件の審理において、B社のOEM生産が商標権者の商標使用権を侵害する商標使用行為か否かについては、裁判所の意見が異なる。
一番目の意見は、『商標法』第52条第(一)項によると、商標登録権者の許諾なしに、同一の商品又は類似の商品にその登録商標と同様又は類似する商標を使用している場合は、登録商標専用権の侵害となる。B社はA社の許可を得ることなく、玩具のパッケージにおいてA社の登録商標を使用し、玩具及び付帯の製品説明書においてA社の登録商標と類似するマークを使用している。『商標法実施条例』第3条の規定によると、上述の行為は全て商標の使用に該当するというものである。
二番目の意見は、法律規定の文面のみから商標の使用を理解するべきではない。
商標は商品又はサービスの出所を区分するためのマークであり、その基本的な機能は商標の識別性にある。B社がC社から権限を授けられ、関連商標マークを使用する行為は中国国内においては単なる商標マークの貼付に過ぎず、C社が商標専用権を有するメキシコ国内において商標を使用するために必要な作業を行っただけで、中国国内において商品出所を識別する意図を有しない。
従って、B社がOEM商品に貼付したマークは、OEM商品の出所を区分する意図がなく、OEM商品の出所を識別する機能も果たせないため、貼付されたマークは商標の属性を有せず、商品にマークを貼付した行為は商標の使用と認定されるべきではないというものである。
一審、二審、再審手続が行われた後、最高人民法院は最終的に二番目の意見を認めた。OEM生産が商標権侵害となるか否かについては論争が激しい。本件を通じて、最高人民法院は貼付行為が商標の使用にならないという判断基準を確立した。従って、実務において関連企業はOEM生産業務を引き受ける際に、事前に商標権の帰属を審査し、委託者に対し授権証明書などの文書の提出を要求すべきである。商標権の帰属を把握することができない場合は、国内販売などにより商標を使用してはならない。
以上
※「陳弁護士の法律事件簿」の過去記事は、 「国別情報一覧」 よりご確認ください。
GPパートナーズ法律事務所 (japanese_group@gaopenglaw.com)まで
会社名(屋号)、担当者様お名前、電話番号、メールアドレスに、問い合わせ内容を添えてメール願います。
- 【掲載元情報】
- GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
- [略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員