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2017.07.14

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿㉜「盗品と知らずに購入した場合は善意取得に該当するか」
【中国】陳弁護士の法律事件簿㉜
盗品と知らずに購入した場合は善意取得に該当するか
 
 
大学で写真を専攻する李さんは撮影が大好きで、ずっとAブランドのカメラを買いたいと思っている。大学生である李さんはお金に余裕がなく、又、新品の価格が高すぎるため、ネットで中古品を買うつもりである。ある日、李さんはネットで張さんが発信した「Aブランドの中古カメラを譲渡する」というメッセージに気づき、ネット上の連絡先を通じて張さんと連絡を取った。面会前に李さんは専門家から、張さんが譲渡するAブランドの中古カメラの市場価格が2000元くらいであることを教えられた。値段をかけ合ったところ、最終的に1800元で取引が成立した。
しかし、まもなく公安局の警察官は李さんに対し、「当該カメラは張さんが窃盗したもので、法に従い返還されるべきである。貴方は盗品を購入した疑いがある。」と告知した。李さんは、自分は当該カメラが盗品のことを知らずに合理的な価格で購入したため、善意取得に該当すると判断し、カメラを返還する意思はない。

 
『分析』
 
 
まず、中国『刑法』第312条には、「犯罪取得物及び犯罪による収益と知りながらも、隠匿、移転、買収、販売代行を行い、又はその他の方法により粉飾、隠蔽した場合は、3年以下の有期懲役、拘留又は保護観察に処し、罰金を併科又は単科する。情状が深刻な場合は、3年以上7年以下の有期懲役に処し、罰金を併科する。」と規定している。従って、犯罪取得物の粉飾・隠蔽罪が成立するには、主観的に「知っていながら」という要素を備えなければならない。本件の李さんはカメラが盗品であることを知らず、かつ合理的な価格で購入したため、犯罪取得物の粉飾・隠蔽罪にならない。
 
次に、善意取得については、他人の財産に対する処分権を有しない保有者が、当該財産を違法に第三者に譲渡し、譲受者が善意で当該財産を取得した場合は、譲受者は法に従い当該財産に対する所有権を取得することができる。譲受者が所有権を取得した後、元保有者は譲受者に対し財産返還を要求してはならず、損害賠償のみを要求することができる。
 
但し、中国の法律及び司法実務から見て、社会秩序と市場取引の安全を保障するために、善意取得は盗品に適用しない。法律では、盗品を販売、購入することを厳禁している。仮に購入者が善意で盗品を購入しても、当該物品に対する所有権を取得することができない。
従って、所有者が窃盗によりその財産に対する占有を喪失した後、当該財産の転売回数を問わず、所有者は最後の保有者に対し返還を要求することができる。本件のAブランドのカメラは、張さんが違法に窃盗した他人の財物であるため、李さんが当該盗品を購入する行為には善意取得は適用せず、李さんは法に従い財物を返還すべきである。
 
最後に、盗品返還後の処置については、実務において通常、「盗品と知りながらも購入した」ことを証明できる場合は、購入者の損失は法律による保護を受けず、購入者が自ら損失を負担するとともに、刑事責任を追及される可能性がある。盗品と知らずに購入した場合は、購入者は犯罪者又は盗品販売者に対し賠償を主張することができる。
 
以上のことから、中古品を購入する場合は、まず、事前に購入対象となる中古品の出所を確認しておく。次に、販売者に対し領収書など、合法的な出所を証明できる証拠書類の提出を要求する、第三に、取引の際に支払書類を保留し、販売者の連絡先及び身分情報などを保存する。最後に、市価を明らかに下回っている物品を購入する場合は、出所が違法な物品を購入しないように用心するべきである。  
 
以上


※「陳弁護士の法律事件簿」の過去記事は、 「国別情報一覧」 よりご確認ください。

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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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