2017.03.27
ベトナム【ベトナム】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第17回『ベトナム 労働法の改正草案』
- 【ベトナム】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第17回
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このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights第70号(2017年3月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
◇ ベトナム 労働法の改正草案
ベトナムでは、2016年12月、現行の労働法(2013年5月1日施行)(「現行法」)を全面的に改正する内容の改正草案(「改正草案」)が公開されました。この草案は、順調にいけば、2017年4月頃に国会に提出され、同年10月頃に可決される見込みです。
本レターでは、改正草案において提案されている内容のうち、日系企業の皆様の関心が強いと思われる改正項目をご紹介します。
(1) 雇用契約の更新についての改正
現行法の下では、雇用契約の形態として、①期間の定めのない雇用契約(無期雇用契約)、②12ヶ月以上36ヶ月までの期間の定めのある雇用契約(有期雇用契約)、③12ヶ月未満の期間の定めのある季節的な業務又は特定の業務を履行するための契約の3種類が定められています。そして、現行法上、上記②及び③の期間の定めのある雇用契約については、契約の期限が満了した後に被雇用者が引き続き就労する場合において、新たな雇用契約を締結しないときは、上記②の有期雇用契約は①の無期雇用契約となり、上記③の契約は24ヶ月間の有期雇用契約となると規定されています。
これに対し、改正草案では、上記②及び③の期間の定めのある雇用契約の期限が満了した後に被雇用者が引き続き就労する場合において、新たな雇用契約を締結しない場合には、自動的に既存の雇用契約と同様の条件で更新されることが提案されています。
したがって、この点に関する改正草案の内容は、現行法と比較すると、雇用者の立場である日系企業側にとっては有利な改正案と思われます。
(2) 時間外労働の上限に関する規制緩和
現行法の下では、時間外労働について、1日に4時間、1ヶ月に30時間、1年に200時間(一定の許可を得た場合にのみ300時間)が上限として規定されています。
これに対し、改正草案は、通常の業務時間と時間外の労働時間を合わせた労働時間の合計の上限について、以下の2つの案を提案しています。
第1案:1日12時間以内、かつ、1年に600時間以内
第2案:1日12時間以内
したがって、いずれの案であっても、時間外労働の上限に関する規制が大幅に緩和される(第2案に至っては年間の上限が撤廃される)ことになりますので、この改正案の内容は、雇用者の立場である日系企業側にとっては非常に有利なものと思われます。しかし、全国的な労働組合指導機関であるベトナム労働総連盟は残業時間の大幅増加に反対しており、最終的に上記の改正提案が採用されるかについては予断を許さない状況と言われています。
(3) その他
上記(1)及び(2)のほか、雇用契約の締結に際して被雇用者から雇用者に対して提供される情報が虚偽の情報である場合について、現行法の下では雇用契約の解除事由として明記されていないのに対し、改正草案では、虚偽の情報の提供が雇用契約の解除事由になりうる旨を明記することを提案しています。また、定年退職の年齢を、男性については60歳から62歳、女性については55歳から60歳に引き上げることを提案すると同時に、上記年齢に達した場合には、雇用契約の解除事由になりうることを提案しています。
改正草案は現時点ではまだ草案の段階であり、最終的にどのような内容の改正となるかは今後の国会における議論次第ですが、以上のとおり、日系企業の皆様にとっても影響の大きい改正を含む可能性があるため、今後の動向に注視が必要です。
※本稿は法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。
- 【掲載元情報】
- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 制作