2012.12.05
- その他のアジア【アジア】アジア通信/第9回 -アジアの地下鉄事情-その2
- 【アジア】アジア通信/第9回
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今、日本では「市場としてのアジア」が注目されていますが、アジア各地の地下鉄には、「市場としてのアジア」を考えるための様々なヒントがあると感じます。
今回は、前回に引き続きバンコクとシンガポールの地下鉄事情を報告します。
3. バンコク
バンコク市街地内には、スカイトレイン(高架式の鉄道)、地下鉄の二つが通っています(これらとは別に空港とバンコク中心部を結ぶ鉄道「エアポート・レール・リンク」もあります)。
スカイトレインなどに乗って、まず感じることはバンコク女性のおしゃれさです。バンコクは、おしゃれ先進地域をはるかに通り越し、おしゃれ前衛地域といった感じです。車両内では、歯の矯正をしている若い女性を沢山見かけますが、実はこれは矯正ではなく、ファッションなのです。矯正金具自体がファッションアイテムになっているのです。バンコクの若い女性には、髪の毛を金髪に染め、美白し、目の縁を黒くして、ほとんど白人女性みたいな風貌になっている人もいます。上海人・台湾人・日本人は、同じファッション感覚を共有出来ていると思うのですが、バンコク女性は全く別の進化を遂げているようです。強いて比較出来るとすれば日本のギャル系ファッションでしょうか。筆者には、いずれもサイボーグに見えてしまいます。
女性のファッションだけでなく、激辛の料理、走り屋風に改造されたタクシー(アジア通信第四回ご参照)など、タイ人の嗜好・文化にはエッジが利いています。
ところで、スカイトレインと地下鉄は、別々のシステムとして運用されています。例えば、地下鉄にはボディチェックと手荷物検査があるのに対して、スカイトレインには検査がありません。また、切符は、スカイトレインではICチップ内蔵のトークンを使いますが、地下鉄は磁気カードを使います。料金はどちらも、数十円程度ですが、スカイトレインと地下鉄の乗り換え時には初乗り料金が取られてしまいます。トークン・磁気カードを地下鉄・スカイトレインで相互に共用することはできません。何故、別々のシステムで運用されているのか分かりませんが、不便で不効率と感じます。
4. シンガポール
シンガポールはマナーに対して厳しい国として知られています。実際に、地下鉄で二人分の座席を一人で占拠していた中年女性が”singaporeseen.stomp.(シンガポールのネット上の夕刊誌のようなもの)”に顔写真付きで糾弾されている記事が掲載されていることがありました。駅のベンチで寝ている若い女性、バスで歌って踊っている若い男性など、日本ではニュースにならないようなことが、”singaporeseen.stomp.”では写真付きのニュースになってしまいます。いかにも平和で微笑ましいともいえますが、四六時中監視されているような気もします。
シンガポールの女性のファッション感覚も特徴的です。こちらではボディコンが健在です。バブル期の日本でもそうでしたが、やはり日本とは違います。ボディコンに、ぺったんこの靴(ときには草履履きも)・ノーメーク、これが一つのパターンです。暑いせいもあるのでしょうが、ストッキングを履いている女性はほとんどいません。日本女性のファッション感覚とはかけ離れた何かがシンガポールにあります。日本のアパレル企業のシンガポール市場進出は相当苦戦し、浸透までかなりの期間を要することになるのではないでしょうか。
地下鉄の切符は、一律ICカードです。バス・タクシーにも使える便利なカードです。料金は、近距離なら約70円前後です。シンガポール人の所得水準 と比べるととても安いといえます。シンガポールの物価水準は、二極化していると感じます。地下鉄料金の他、ホーカーセンターといわれる屋台風フードコートでの食事は1食200円~400円ぐらいと、生活必需品がとても安い反面、贅沢品は、タバコは1箱800円ぐらい、クルマは安くても700万円ぐらい、等です。普通の日本人の生活レベルは、こちらでは贅沢となり、かなり高くついてしまいます。
シンガポールには、相続税・贈与税が存在せず、個人所得税率は最大20%です。日本と比べると、格差是正・富の再分配という思想が希薄と感じる反面、生活必需品の安さや手厚い住宅取得補助制度(シンガポールの持家率は2011年で88.6% )など最低限の生活保障はむしろ日本よりも手厚いと感じることがあります。
以上中国・アジア各地の地下鉄を見てきましたが、読者の皆様も現地で地下鉄を楽しまれてみては如何でしょうか。観光バスでは見ることの出来ないアジアの日常・真実がそこにあります。

- 【掲載元情報】
- 山田ビジネスコンサルティング株式会社 専務取締役シンガポール支店長 東 聡司
- [略歴]
山田ビジネスコンサルティング(株)創業以来、日本国内の中堅中小企業の再生支援業務に携わる。
2012年1月~2月にかけて中国進出日系企業の経営状況を調査。
2012年4月のシンガポール支店長就任後はタイ・インドネシア・ベトナム等ASEAN各国に進出している日系企業の経営状況を調査。
経営の観点から日本企業のアジア進出をサポートする。