2012.11.30
- その他のアジア【アジア】アジア通信/第8回 -アジアの地下鉄事情-その1
- 【アジア】アジア通信/第8回
-
今、日本では「市場としてのアジア」が注目されていますが、アジア各地の地下鉄には、「市場としてのアジア」を考えるための様々なヒントがあると感じます。例えば、地下鉄の乗客は、その地域の「普通の人々」をイメージする手掛かりになると思います。貧富の差が日本よりもはるかに大きいアジアで、「普通の人々」を論じること自体ナンセンスかもしれませんが、強いてイメージするためには、地下鉄の乗客が最適な素材になると思います。
乗客のファッションや使っているスマホや携帯には、その地域の人々の嗜好や購買力が反映されています。また、マナーの水準・生活パターン・治安の良し悪しから都市のインフラ整備状況など様々な情報が地下鉄に凝縮されています。
では、筆者とともにアジア各国の地下鉄の旅に出掛けてみましょう。
1. 上海
上海の地下鉄というと、多くの日本人はマナーの悪さを想像すると思います。確かに、日本よりも悪い面もありますが、良い面もあり、トータルでは日本より少し悪いぐらいと筆者は感じます。車内で激しい椅子取りゲームが繰り広げられることもありますが、猛ダッシュで椅子を奪った人が、奪った次の瞬間にはお年寄りに席を譲ったりしています。「それなら最初から猛ダッシュするなよ」、なんて思うのは野暮なのでしょう。お年寄りに席を譲る文化は東京・大阪よりもはるかに浸透しています。これは儒教の影響でしょうか。上海地下鉄では車内での携帯通話はマナー上OKです。ちなみにエレベーター内での通話もOKです。車内・エレベーター内でもちゃんと電波が通っています。
上海の地下鉄に乗っている人の多くの身なりは、日本人のそれと大差はありません(洋服の色使いは違いますが)。結構おしゃれです(ちなみに北京の地下鉄は野暮ったいです)。若者がスマホをいじくっている風景も日本と同じです。
また、地下鉄に乗っていると、上海の人は、親切で人懐っこいと感じることがあります。車内で立っている筆者に、空いている席を指差し「ここに座んなさいよ」みたいな中国語で話しかけてくるおばちゃんがいたり、日本語を話している筆者に「あなたは何語を話しているの?」と英語で話しかけてくる女子中学生がいたり、日本のマスコミで報道される、凶暴で傲慢な中国人のイメージとはずいぶん違います。
また、希ではありますが、車両の中に物乞いが現れ集金して回ることがあります。小学生の女の子を連れた母親風の物乞いや、ギターで歌うフォークデュオ風物乞いなどのバリエーションがあります。
上海では、現在11本の地下鉄が走っており、建設中のものが1本あります。これ以外にも今後の建設予定が沢山あるようです。現在の11本のうちの多くが、ここ10年以内に作られたそうで、スピードの速さに驚くばかりです。また、地下鉄がカバーしているエリアは、上海の中心地だけでなく、松江(上海の工業地帯&大学が集まっている場所)、外高橋(上海市東側。輸出入の基地)、安停(江蘇省昆山の近く)といった結構辺鄙な場所にも及びます。
ところで、ジャカルタには地下鉄がないということをアジア通信第四回で紹介いたしましたが、ここに、中国政府とインドネシア政府の政策実行力の違いを見ることができます。中国政府の政策実行力の高さは桁違いです。
料金は、概ね40円~70円で、支払いにはICカードの切符を使います。このICカードは、地下鉄の外、バス、タクシー、リニアモーターカーの料金の支払にも使える万能・便利カードです。
2. 台北
台北の地下鉄は、駅も車両も新しくとても綺麗です。乗客のマナーも良く、服装もおしゃれです。良くも悪くも意外性はありません。日本とほとんど変わらないという印象です。日本との違いは、地下鉄内で飲食が禁止されていること(ガムも禁止されています)、車内でも携帯電話の通話はOKということぐらいでしょうか。ちなみに、シンガポールでも車内での携帯電話の通話はOKです。ひょっとしたら、車内での携帯電話の通話がNGなのは日本だけかもしれません。
料金はだいたい数十円程度、切符はICカードまたはトークンというICチップが内蔵されたコインのようなものを使います。ICカードは、バスはもちろん大部分のコンビニ(セブンイレブン、ファミリーマートなど)、一部タクシーで使用可能です。
その2に続く

- 【掲載元情報】
- 山田ビジネスコンサルティング株式会社 専務取締役シンガポール支店長 東 聡司
- [略歴]
山田ビジネスコンサルティング(株)創業以来、日本国内の中堅中小企業の再生支援業務に携わる。
2012年1月~2月にかけて中国進出日系企業の経営状況を調査。
2012年4月のシンガポール支店長就任後はタイ・インドネシア・ベトナム等ASEAN各国に進出している日系企業の経営状況を調査。
経営の観点から日本企業のアジア進出をサポートする。