2017.03.08
中国【中国】陳弁護士の法律事件簿㉚「外国側株主の持分を譲り受ける場合も財産権取引センターにて手続を行うべきか?」
- 【中国】陳弁護士の法律事件簿㉚
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外国側株主の持分を譲り受ける場合も財産権取引センターにて手続を行うべきか?
上海に登録されたA社は中国のある国有企業と米国側出資者が共同で出資して設立した中外合弁企業である。5年後、外国側株主の投資戦略の変更により、米国側出資者はその保有している合弁企業の持分を全て中国側株主に譲渡することを決定した。持分譲渡手続を確認する過程において、中国側株主が外国側株主の持分を譲り受ける場合も財産権取引センターにて手続を行う必要があるか否かについて、合弁企業内部では意見が一致しない。
『分析』
一つの意見は、外国側株主の持分を譲り受ける場合は、財産権取引センターにて手続を行う必要がないというものである。
その理由は、企業国有資産管理の関連法律規定では、国有企業が持分を譲渡する場合は、法に従い設立された財産権取引センターにて手続を行う必要があると定められているだけで、中国側株主が外国側株主の持分を譲り受ける場合は財産権取引センターにて手続を行わなければならないか否かについて具体的に定められていない。
もう一つの意見は、外国側株主の持分を譲り受ける場合も、財産権取引センターにて手続を行う必要があるというものである。
その理由は、企業国有資産管理の関連法律規定では、中国側株主が外国側株主の持分を譲り受ける場合は財産権取引センターにて手続を行わなければならないか否かを明確にしていないが、国有資産に対して有効な監督を行い、国有資産の価値の保証と価値の増加を実現させるためには、「中国側株主が外国側株主の持分を譲り受ける場合も財産権取引センターにて手続を行うべきである」と拡大解釈することができる。
『中華人民共和国企業国有資産法』第54条によると、国の規定に従い、協議により直接譲渡できる場合を除き、国有資産の譲渡は、法により設立される財産権取引センターにおいて公開して行わなければならない。同法第51条によると、国有資産の譲渡とは、国から企業への出資によって形成される権益を法により、その他の団体或いは個人に移転させる行為を指す。
上海市発展・改革委員会、市国有資産監督管理委員会、市外国投資工作委員会、市工商行政管理局発行の『上海市の中外合資、合作企業の国有財産権取引の更なる規範化に関する問題についての通知』(滬発改委〔2005〕001号)によると、出資を監督管理する各組織、各区(県)国有資産管理部門は国及び上海市の関連規定に照らして、企業の国有財産権取引に対する監督
管理を一層強化するとともに、中外合資、合作企業の国有持分が法に従い外国側株主に譲渡され、又は中国側株主が外国側株主の持分を譲り受ける場合は、上海連合財産権取引センターにて財産権譲渡手続を行い、取引を規範化させることを要求している。
上述の文書において、上海市の各部門は、中国側株主が外国側株主の持分を譲り受ける場合は財産権取引センターにて手続を行うか否かについて規定を明確にしている。最終的にA社は上海連合財産権取引センターにて持分譲渡手続を行った。
実務において、企業は持分譲渡において同様の問題が生じた場合、持分譲渡に係る地区で、財産権取引センターにて手続を行うなど明文規定の有無を確認すべきである。明文規定がない場合は、弁護士及び国有資産監督委員会などの監督管理部門に相談、確認を行い、その指導の下で、持分譲渡手続を行うべきである。
以上
※「陳弁護士の法律事件簿」の過去記事は、 「国別情報一覧」 よりご確認ください。
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- 【掲載元情報】
- GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
- [略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員