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2016.10.28

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿㉗「インターネット告発の適正な取扱い」
【中国】陳弁護士の法律事件簿㉗
インターネット告発の適正な取扱い

王さんは国内の複数の自動車メーカーに部品を提供するA社に勤めている。仕事において王さんは、「A社はコストを削減するために粗悪な原料を仕入れ、業界基準に合致していない」と判断し、A社の仕入れた原料の写真を撮り、原料写真及び書面告発資料を当地の市場監督管理部門に提出してクレームをつけた。又、王さんはそれらの原料写真及び書面告発資料をミニブログに投稿し、「リツイートを求める」や「関心を求める」などのコメントを入れた。その後、王さんのミニブログに投稿された関連内容は複数の人にリツイートされ、A社の一部の取引先は王さんのミニブログを閲覧した後、それぞれA社に対し経緯を尋ねた。

A社は、王さんのミニブログに投稿された内容が取引先を混乱させたことを知った後、「王さんのミニブログに投稿された写真や文章がA社の名誉を著しく侵害し、これによって取引先及び大衆がA社に対して悪い印象を持った」と判断し、王さんに対しミニブログの投稿内容を削除するよう要求したが、王さんはそれに取り合わなかった。A社は、王さんの行為がA社の名誉を侵害したことを理由に、裁判所に対し王さんを訴えた。



『分析』


インターネットによる情報伝達はスピードが速く、情報受領者の範囲が広いため、インターネット告発は大衆が告発するための重要な方法となっている。但し、不当なインターネット告発は、当事者の名誉を侵害する可能性がある。その理由を以下の通り分析している。

1、『治安処罰法』の規定によると、デマを流した場合は、治安管理処罰を行うことができる。『権利侵害責任法』の規定によると、他人の名誉を侵害した場合は、権利侵害責任を負うものとする。従って、インターネット告発は合法でなければならず、真実性の原則に合致しなければならない。

つまり、告発内容は写真や文字などを含み、客観的事実に基づいたものでなければならず、事実を歪曲、誇張、又は虚構してはならない。告発行為が違法と疑われ、関係官庁(法に従い調査権限を有する機関を指す)の調査を受けているので、いまだに明確な結論が出ていない場合は、告発行為が違法であるか否かは不確定で、インターネットにより告発したり、情報を拡散するべきではない。


2、通常、関係官庁に対し告発を行う。その理由は、関係官庁が法的手続に従い告発内容について調査・処理を行う権利と義務を有するからである。インターネット告発は、インターネット利用者が情報受領者である。インターネット利用者は告発内容について調査・処理を行う法的権利を有しないが、基本的人権の一種である言論の自由を有するため、告発内容について評論を行うことができる。

従って、インターネット告発の内容が真実ではない場合は、インターネット利用者の誤解を招き、これによってインターネット利用者が当事者に対し否定的な評価を与え、客観的に大衆の当事者に対する評価が低くなってしまい、当事者の名誉を侵害することとなる。

本件において、王さんのミニブログによる告発内容が市場監督管理部門の調査を受けているため、A社の仕入れた原料が関連基準に合致するか否かはまだ確定していない。この場合に、王さんが関連内容をインターネットに投稿し、これによって大衆のA社に対する評価が低くなり、A社の正常な経営に影響を及ぼした。従って、裁判所は王さんがA社の名誉を侵害したと判断した。

通常、司法機関は、「公民は法に従い関係官庁に対しクレーム、告発を行うべきである。関係官庁の認定を受けずに、軽率にインターネット告発を行う場合は、当事者の名誉を侵害し、関連の法的責任を負う可能性がある。」と判断している。以上のことから、インターネット告発は慎重に行い、「権利侵害」になるリスクを回避すべきである。

以上


※「陳先生の法律事件簿」の過去記事は、 「国別情報一覧」 よりご確認ください。

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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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