2016.09.07
- その他のアジア【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第13回『タイ 土壌・地下水汚染に関する新規制の導入』
- 【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第13回
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本レポートは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター「MHM Asian Legal Insights 第61号(2016年8月号)」より、その内容の一部を転載しています。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助じます。となれば幸いに存じます。
◇タイ: 土壌・地下水汚染に関する新規制の導入
2016年4月29日付で工業省令が公布され、同年10月26日より、工場における土壌・地下水汚染に関し新たな規制(「新規制」)が導入されることとなりました。新規制の導入により、Enhancement and Conservation of National Environmental Quality Act(国家環境推進保全法)により従来から要求されていた工場操業開始時の土壌・地下水調査に加えて、継続的な土壌・地下水調査の実施が義務付けられることになります。なお、新規制は、新規制導入以降に操業開始となる新設工場のみならず、操業中の既存工場についても適用される点に注意が必要です。以下では、新規制の概要をご紹介いたします。
(1)対象業種
新規制には12の対象業種が記載されており(繊維、紙・パルプ、化学製品、塗料、化学物質、石油精製、非鉄金属、電気製品、塗装作業、廃棄物処理、廃棄物分別・埋立、廃棄物リサイクル)、上記各事業を行っている工場が新規制の対象となります。
(2)環境調査の実施頻度
新規制導入後に操業開始となる新設工場については、操業開始前に土壌・地下水調査を実施し(「第1回調査」)、調査報告書をDepartment of lndustrial Works(工業省工場局。「DIW」)に対して提出します。また、操業開始後180日以内に、2回目の土壌・地下水調査を実施し(「第2回調査」)、調査後120日以内に調査報告書をDIWに対して提出します。第2回調査終了後は、3年に1回の土壌調査及び1年に1回の地下水調査を実施しなければならず、いずれの調査についても実施後120日以内に調査報告書をDIWに対し提出することになります。他方、既存工場については、新規制導入から180日以内に第1回調査を、第1回調査から180日以内に第2回調査を実施しなければならず、それぞれ調査後120日以内に調査報告書をDIWに対し提出することになります。なお、第2回調査終了後の土壌・地下水調査については上記新設工場の場合と同様の実施頻度となっています。
(3)汚染の測定方法及び基準値
汚染の測定方法及び基準値については工業大臣が別途公表することとされていますが、現時点において工業大臣による公表は行われていません。また、土壌・地下水調査で採取した試料の分析は、DIWが承認した分析機関で行われなければならないとされていますが、分析機関の承認についても現時点では行われていません。
(4)基準値超過の汚染が確認された場合の対応策
土壌・地下水調査の結果、汚染が基準値を超過している場合には、事業者は、汚染除去作業の完了予定時期を記載した対策案を作成し、基準値超過が確認された日から180日以内にDIWに対して提出しなければならないとされています。DIWは、対策案が提出されなかった場合、又は対策案に完了予定時期の記載がなかった場合、当該事業者に対して、一定期間内に汚染を改善するよう命令を下すことが可能とされていますが、DIWが指定した期間内に汚染を改善することができなかった場合にどのような制裁が課せられるかについては規定が存在しません。新規制が施行されるまでの間に工業省より新たな省令が公表される可能性もあり、今後の動向について注視が必要です。
以上
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- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 作成