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2016.06.01

その他のアジア【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第10回 『ベトナム:民法改正(表見代理規定の新設)』
【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第10回
本レポートは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター「MHM Asian Legal Insights 第56号(2016年5月号)」より、その内容の一部を転載しています。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。


ベトナム:民法改正(表見代理規定の新設)

ベトナムでは、2005年に公布された民法(No.33/2005/QH11)(「旧民法」)が10年ぶりに改正され、2015年11月に新しい民法(No.91/2015/QH13)が成立しました(「新民法」)。
新民法は、2017年1月1日より施行されます。
今回は、新民法における重要な改正点の一つである表見代理について、簡単にご紹介したいと思います。


1 無権代理・越権代理

旧民法では、(i)代理権限を有しない者(「無権代理人」)と取引を行った場合、取引の効果帰属先とされた本人が承認する場合を除き、当該取引は無効と規定されていました。
また、(ii)代理人が代理権の範囲を超えて取引を行った場合(「越権代理」)、①本人が承認する場合、又は②本人が当該取引を知ったものの反対しない場合を除き、越権代理による取引については無効と規定されていました。
つまり、日本法とは異なり、「代理人が代理権を有すると信じたことについて正当な理由があれば、取引をした相手方が保護される」という、いわゆる表見法理の規定は存在していませんでした。

この点について、新民法では、無権代理あるいは越権代理が無効とされる事由が限定され(言い換えれば、これらが有効とされる事由が拡張され)、(i)無権代理人との取引であっても、①本人が承認する場合に加えて、②本人が当該取引を知ったものの合理的期間内に反対しなかった場合、又は③無権代理人が代理権を有するという外観について本人に過失があった場合には、当該取引は有効とされました。
また、(ⅱ)越権代理についても、同様に、上記①~③に該当する場合には、当該取引は有効とされています。

特に、上記③の例外事由は、表見代理を一定の範囲で明文化したものであり、この改正は、より取引の安全を保護する姿勢への変化を示すものとして評価されています。


2 企業法との関係

2015年7月1日に施行された企業法(No.68/2014/QH13)では、複数の法定代表者を設置することが認められましたが、複数の法定代表者を設置した場合には、定款において、一定の事項の決裁にすべての法定代表者の共同署名を必要とする等、法定代表者の権限を制限する規定が設けられる場合もあると考えられます。
この場合、取引の相手方としては、法定代表者の権限に制限が加えられているか否かを事前に知ることは必ずしも容易ではないにもかかわらず、旧民法においてはそのような取引は保護されないという帰結になります。
しかしながら、新民法の下では、同様の場面において、取引の相手方が法定代表者の権限に加えられた制限を知ることができなかったことに正当な理由があると評価される場合には、当該取引が有効とされる可能性が広がるものと思われます。

上記の場面において、どのような事情があれば法定代表者の権限に加えられた制限を知ることができなかったことが正当化されるか(例えば、定款の開示まで要求する必要があるかどうか等)については、今後の実務運用を待つ必要がありますが、このように会社の代表権との関係を考えても、新民法において表見代理が規定されたことは注目に値するものと思われます。

以上

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  作成

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