2016.02.02
- その他のアジア【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第6回 『ベトナム:TPP協定~サービス業投資規制の緩和~』
- 【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第6回
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本レポートは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター「MHM Asian Legal Insights 第50号(2016年1月号)」より、その内容の一部を転載しています。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
ベトナム:TPP協定~サービス業投資規制の緩和~
日本もベトナムも参加している環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement:「TPP協定」)に関して、現在様々な議論が行われています。
今回は、TPP協定が発効された場合、日本企業によるベトナム投資に対して影響を与え得る重要なポイントを紹介したいと思います。
1 ネガティブリスト化
ベトナムにおけるサービス業に対する外資規制の緩和に関するロードマップは、WTOコミットメントに記載されています。
WTOコミットメントはポジティブリストの形式で記載されているため、記載のない業種に対する外資規制については当局の裁量に委ねられており、2015年12月27日に施行された投資法施行細則(Decree No.118-2015-ND-CP)においても、これらの業種については関連省庁の意見照会が求められているなど、投資が可能かどうか事前に判断するのが困難な場合が多くあります。
これに対し、TPP協定は、ネガティブリストの形式で記載されています。
したがって、リストに記載のない業種については外資規制に服さないことを意味するため、TPP協定が発効された場合、ベトナム投資を検討する日本企業にとって、外資規制の有無を判断し易く、投資を行うに際して予見可能性が高まると考えられます。
2 小売業規制の大幅緩和~ENTテストによる規制の撤廃~
ベトナムにおける小売業に対する外資規制に関しては、WTOコミットメントによって、段階的に外資規制が緩和され、2009年1月1日より、100%外資企業も一部の物品を除いて小売業に従事することが可能となっています。
しかしながら、WTOコミットメント及び国内法令に基づき、外資企業による2店舗目以降の小売店舗開設の可否については経済需要に応じて個別に判断されるという、経済需要テスト(Economic Needs Test-いわゆるENT)をクリアする必要がありました。
このENTについては、その判断基準が抽象的・不明確であり、実務上、当局の広範な裁量によって個別に判断され、外資企業にとっては2店舗目以降の小売店舗の開設が事実上困難であったため、商工業省(Ministry of lndustry and Trade)は、2013年4月22日付で、2店舗目以降の小売店舗の開設に関する規制を緩和する内容の通達(Circular No.08/2013/TT-BCT)を公表し、インフラが整備されている地域において、面積500平方メートル未満の規模の小売店舗を開設する場合には、当該小売店舗の開設については、ENTを経る必要がないという例外を設けました。
TPP協定は、このような規制の撤廃を推し進め、TPP協定発効後5年間の猶予期間を経て、条件なしに2店舗目以降の小売店舗の開設の可否についてのENTを免除すると規定しています。
これによって、日本企業による複数店舗に跨る小売業の展開が拡大することが期待されます。
TPP協定の発効までまだしばらく時間がかかりそうですが、TPP協定では、上記のほか様々な外資規制が緩和される見込みであるため日本企業によるベトナムへの投資の増加が期待される一方、当局による実際の運用に関しては今後の動向に注視する必要があります。
以上
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- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 作成