2016.02.10
- その他のアジア【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第18回「東南アジアの非ムスリム国・フィリピンのハラル市場に向けた取り組みに迫る!-中編-」
- 【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第18回
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特集・東南アジアの非ムスリム国・フィリピンのハラル市場に向けた取り組みに迫る!-中編-
今回は中編として、フィリピンにおけるハラル認証への取り組みを紹介する。
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イスラム宣教会議
イスラム宣教会議 (The Islamic Da’wah Council of the Philippines: IDCP)は、フィリピン安全為替委員会の下で1982年に設立された、イスラム教布教の為の連盟であり、設立当時は9団体のみ加盟していた。
創立者の多くは、1953年に初めてイスラム教団体として認定されたフィリピン・イスラム改宗者協会 (the Converts to Islam Society of the Philippines: CONVISLAM) の出身である。
設立から10年間で加盟団体は72団体へ急増し、現在ではフィリピン国内全域から90以上の団体が加盟している。
イスラム宣教会議は現在、世界ハラル協議会 (the World Halal Council: WCH)、東南アジア・太平洋地域イスラム評議会(Regional Islamic Da’wah Council of Southeast Asia and Pacific: RISEAP)、世界ムスリム青年連盟 (the World Assembly of Muslim Youth: WAMY) の各団体の一員となっている。
また、イスラム宣教会議は、マレーシア・インドネシア・シンガポール・タイ・アラブ首長国連邦を含めたイスラム諸国各国とムスリム・コミュニティから認められた、認証機関でもある。
1980年代には既にハラル認証を統一する為の研究を始めており、フィリピンにおけるハラル市場の先駆者である。
一方、イスラム諸国以外においては、ハラル認証がマーケティングツールの一つとして用いられることが多い。
故に、ムスリムからの信頼が高くなくとも、認証を容易に取得できる認証機関を好む傾向があり、当初イスラム宣教会議によって発行されるハラル認証を取得しようとする企業は多くなかった。
しかし、1995年頃になり、マレーシアやインドネシア等の東南アジア諸国の輸出を視野に入れる為、イスラム宣教会議による認証を取得しようとする企業が現れ始めた。
現在、イスラム宣教会議は加盟団体に向けてハラル規格を提示しているが、あくまでも規格は任意のものであり、加盟団体は独自の基準を定めている。
イスラム宣教会議のハラル認証制度はフィリピン国内で信頼される認証機関の一つであるが、同ハラル認証制度の導入を各団体に求めることは困難になっている。
フィリピンにおけるハラル認証
フィリピン製の商品や食品の殆どは、非ムスリムのフィリピン国民によって製造・販売されているため、同国のムスリムは、手に取る商品がハラル認証を取得しているかどうかを慎重に確認する。
しかしながら、フィリピンはイスラム教国ではないため、ハラル規格の導入を食品メーカーに求めることが難しくなっている。
フィリピンは憲法に政教分離が明記されており、政府はハラル規格の策定は権限外であるとしていた。
しかし、フィリピンの製造業者の競争力強化や品質・安全性の確保の為、貿易工業省製品標準局 (Bureau of Philippine Standards Department of Trade and Industry: BPS) によって「ハラル食品に関するガイドライン (Philippines General Guideline on Halal Food) 」が定められた。
ガイドラインはあくまでも指針であるため、法的拘束力がなく、未だフィリピン国内のハラル認証機関にも信用が低い認証機関が複数存在する。
信頼度の低いハラル認証を取得している製品は、取引先国に不信感を与えてしまう可能性があるため、フィリピン上院農業食品委員会 (the Senate Committee on Agriculture and Food) の議長は、「取引先国の信頼を得る為には、ハラル製品の輸出に対して法的枠組みを設けるべきであり、政府はフィリピンから輸出されるハラル製品は国際的なハラル規格に則っていることを保証する為の対策が必要である。」と語っている。
フィリピン上院農業食品委員会は、ムスリムからの信頼を得る為、原材料や農水産物、食品加工行程、製造に至る、生産から販売までの全ての行程におけるハラルの規定を定める方針である。
この取り組みを推進する為、フィリピン・ハラル貿易開発推進委員会 (the Philippine Halal Export Development and Promotion Board: Halal Board) が今後設立される予定である。
同委員会では貿易産業省 (the Department of Trade and Industry: DTI) 大臣が委員長に、国家ムスリム委員会 (the National Commission on Muslim Filipinos:NCMF) 委員長が副委員長に任命される。
委員会のメンバーには、農政省 (the Department of Agriculture: DA) 大臣、保健省 (the Department of Health: DOH)大臣、科学技術省 (the Department of Science and Technology: DOST)、外務省(the Department of Foreign Affairs: DFA) 大臣、観光省 (the Department of Tourism: DOT) 大臣、フィリピン中央銀行 (Bangko Sentral ng Pilipinas) 総裁、ミンダナオ開発庁 (Mindanao Development Authority: MinDA) 大臣が加わる計画である。
以上
※本レポートは、Hopewill Group (Holdings)Ltdのメールマガジン「イスラム&MENASA市場」より一部修正のうえ、転載しています。
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