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2015.12.25

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿⑳「警察は『ぼったくり』行為の取締りができるか?」
【中国】陳弁護士の法律事件簿⑳
警察は「ぼったくり」行為の取締りができるか?


国慶節の連休中に観光客のZさん一家は、青島の大衆食堂で食事をした際、ぼったくり被害に遭った。
Zさんは1皿38元(約722円)の小エビ料理を注文したが、会計の際に小エビ1匹38元で計算され、40匹分の1,520元(約28,880円)を支払うよう要求された。
Zさんは警察に通報したが、商品価格に関する紛争は警察の職責範囲に属さないことを告げられた。次に物価局に電話をしたが、連休後に改めて対応すると言われ、警察に解決してもらうよう提案された。
食堂経営者から脅迫を受けたZさんは、その場では要求通りの金額を支払い、大衆食堂を後にしたが、後日、インターネット上で被害を公表した。
果して中国の警察は、ぼったくり被害を処理する権限を有するのであろうか?


『分析』

警察がぼったくり行為を処理する権限を有するか否かについては、異なる二つの意見がある。

一つは、法律では、警察はある程度の取締権限を有しているというものである。
「ぼったくり」とは、顧客に対し、本来の価値をはるかに上回る価格で商品又はサービスを押し売りすることを指す。当該取引は明らかに不当であり、かつ暴力又は脅迫を伴い、市場秩序を乱すだけではなく、顧客の人身及び財産権を侵害する嫌疑もあるため、主観的にも客観的にも、違法取引の要件に合致する。
『刑法』では、取引金額が2,000元以上の場合、第274条の規定に従い刑事案件として立件調査を行うものとされ、2,000元以下の場合は『治安管理処罰法』第49条の規定に従い、行政処分の対象となるとされている。

もう一つの意見は、ぼったくり行為の管轄は物価局及び工商当局に帰属し、警察による処理は越権行為に該当するというものである。
『中華人民共和国価格法』の関連規定によると、「経営者はサービスを提供する際に、政府の価格主管部門の規定により、適正な価格を表示し、サービスの項目及び費用徴収基準などを明記しなければならない」とされている。
また、「経営者は虚偽の、又は誤解を招く手段により、消費者又は他の経営者を誘引して不正価格による取引をしてはならない」とされており、虚偽の、又は誤解を招く手段により詐欺行為を行った場合、罰金・営業停止・営業許可証の取り上げ等、物価局及び工商当局による処罰措置があると定められている。

本件については、当該事件をマスコミが取り上げたことにより、大衆食堂は当地の物価局から9万元(約171万円)の罰金を科され、更に工商当局から営業停止を命じられるとともに営業許可証を取り上げられた。

当地の行政機関の処理は、警察が価格詐欺行為を直接処理するより、適切であったといえる。
しかし、本件では騒ぎが起きた際、食堂経営者がZさんを威嚇し店から出させなかったため、警察は不法行為を制止し、取り調べと証拠収集を行うことができたはずである。関係者の連絡先を確保した上で、先ずZさんに対し38元の支払のみを要求し、事後に物価局及び工商当局に処理を委託することが好ましい処置であったと考えられる。

警察は、職責の範囲外を口実にして、人民の自由を制限する不法行為を無視すべきではない。

※「陳先生の法律事件簿」の過去記事は、 「国別情報一覧」 よりご確認ください。


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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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