2016.02.03
- その他のアジア【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第17回「東南アジアの非ムスリム国・フィリピンのハラル市場に向けた取り組みに迫る!-前編-」
- 【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第17回
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特集・東南アジアの非ムスリム国・フィリピンのハラル市場に向けた取り組みに迫る!-前編-
フィリピンは世界有数のリゾート地として、毎年多くの観光客を様々な国から迎え入れている。
フィリピンは、イスラム教を主流とする国の多い東南アジアに位置しており、古くからムスリムとの交流も盛んであった。
しかし、他の東南アジア諸国と比較して、イスラム市場への参入が大幅に遅れており、現在イスラム市場を自国の観光市場へ取り入れようと足早に対策を練っている段階である。
今回より、イスラム市場への参入を急ぐフィリピンの取り組みを3回に渡ってお届けする。
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フィリピンにおけるイスラム教徒
カトリック宣教師やスペイン人入植者がフィリピンを訪れる前より、フィリピンにはイスラム教が伝播していた。
イスラム教はムスリムの商人により、14世紀にフィリピン南部へ伝えられ、北部のマニラまで伝わった。
1521年にスペイン人がフィリピン南部へ到達した際は、ムスリムが支配する島が多く存在した。
15世紀より16世紀初頭にかけてムスリムのサルタンが現れ、スールー王国 (the Sultanates of Sulu)、マギンダナオ王国 (the Sultanates of Maguindanao)、マラナオ (the Maranao) を支配していた。
18-19世紀には、スールー諸島が東南アジアと西洋諸国を結ぶ海上貿易の主要拠点として発達していった。
18世紀にはスペインがフィリピンの殆どを植民地としたが、スールー王国は植民地とされることなく、他国との交易を続けていた。
西洋諸国による支配を受けなかった為、ミンダナオ諸島は独自の文化と伝統を受け継ぎ、今日でも伝統的な生活がみられている。
2015年現在、フィリピンの人口は1億180万2706人と推定されており、人口の84%がカトリック教徒である。
8%がプロテスタントを信仰しており、5%がイスラム教を信仰している。
イスラム教徒の人口は、キリスト教徒に続いて2番目に多く、2000年から2010年の10年間で32.7%の増加が見られた。
ムスリムの多くはミンダナオ群島に多く居住し、フィリピン人のムスリムの約94%がその島で暮していることとなる。
ミンダナオ群島には、イスラム教徒ミンダナオ自治地域 (the Autonomous Region in Muslim Mindanao: ARMM) が設けられ、バジラン州 、南ラナオ州、マギンダナオ州、スールー州、タウイタウイ州がその地域に属している。
フィリピンがスペインの統治下にあった際にミンダナオ群島は独立を保っていた為、他のフィリピンとは異なる文化を形成している。
イスラム教徒ミンダナオ自治地域はフィリピンで最も貧しい地域の一つであり、GDPはフィリピンにある17の地域で最も低くなっている。
また、インフラが十分に整備されておらず、医療や教育といった社会サービスも不足しているのが現状だ。
それ故、2,000コミュニティに渡る75万5656人の住民の生活環境の向上を目指し、イスラム教徒ミンダナオ自治地域 社会基金事業 (the ARMM Social Fund Project) が施行された。
この政策により、13のインフラ事業が施行され、住民の自給自足経済が促進された。
ハラル・ハブを目指すイスラム教徒ミンダナオ自治地域
ASEANにおける経済統合の動きは、ASEAN諸国間でのハラル貿易の増加を促す為、フィリピンも他国に遅れを取らず、ハラル市場に参入する体制を整えることが求められている。
ドバイ商工会議所 (the Dubai Chamber of Commerce) の報告書では、フィリピンは、イスラム教を主流とする国が多く存在する東南アジアに位置する為、国際的なハラル市場の恩恵を受けるのに、地理的に非常に良い位置にあるといわれている。
一方で、フィリピンは農業国であるが、他国への輸出力がオーストラリアやニュージーランドと比較すると低く、フィリピン政府は自国の輸出競争力の向上を目指している。
国際的なハラル市場の高まりを受け、フィリピンは「2015年度フィリピン・ハラル法案 (Philippine Halal Act of 2015)」を打ち出しており、可決されればイスラム教徒ミンダナオ自治地域がハラル関連製造業のハブとなる可能性が考えられる。
同地域は既にフィリピン国内のハラル関連製造業の中心地となるのみではなく、近隣のインドネシア・マレーシア・ブルネイへのゲートウェイへと発展していくことが期待されている。
ハラル食品産業開発計画 (the Halal Food Industry Development Plan) には、既にイスラム教徒ミンダナオ自治地域をフィリピンにおけるハラル関連製造業のハブとする、ということが提示されている。
特にハラル食品製造業の発展に力を入れる方針であり、ハラル規格について研究する為の研究所も既に設立されている。
政府によるハラル産業の支援は、同地域における農水産業や製造業の発展に大きく繋がると予想されている。
ASEANの経済統合に伴ってイスラム教徒ミンダナオ自治地域への投資が増加し、今後住民への巨大な雇用機会が創出されるだろう。
以上
※本レポートは、Hopewill Group (Holdings)Ltdのメールマガジン「イスラム&MENASA市場」より一部修正のうえ、転載しています。
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