2016.01.19
- その他のアジア【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第16回「イスラム市場への参入を急ぐ隣国韓国に迫る!-後編-」
- 【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第16回
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特集・イスラム市場への参入を急ぐ隣国韓国に迫る!-後編-
今回は、最終章として、ハラル教育とイスラム金融市場への韓国の取り組みを紹介する。
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韓国のハラル教育
大韓貿易振興公社 (the Korean Trade Promotion Corporation: KOTRA) は、2015年7月22-24日に、イスラム市場への参入を目指す韓国企業に向けた「ハラル・インサイト・プログラム (Halal Insight Program) 」を開催した。
企業向けのハラル教育のイベントは、韓国初の試みとなった。
イベントでは、イスラム市場へ参入する上でのハラル認証取得の重要性が中心に講義され、近郊のインドネシアやマレーシアに進出する際の留意点等も紹介された。
目下のところ「ハラル」に関する基本的な知識不足に悩む韓国企業は、急速に発展を遂げるイスラム市場に対応しきれずにいる。
大韓貿易振興公社はイベント後、イスラム市場での展開を視野に入れつつも知識不足に悩む企業に向けて、一対一の個別コンサルティングも行っている。
韓国のイスラム金融市場への参入
韓国は近年、国際的なイスラム金融市場に参入しようとする動きを見せており、ムスリムを受け入れる為の研修や協議会へ積極的に参加している。
また、イスラム金融規制機関にも複数加盟し、イスラム債であるスクークの発行や※ムダラバ取引を開始する準備を着実に進めている。 ※ムダラバ: イスラム金融の代表的なスキームの一つ。出資者から集められた資金を事業家がプロジェクト等に投資、その見返りとなる配当を金利のように扱い出資者に配当する。預金などに用いられる。
韓国はイスラム諸国への主要輸出国の1つであり、韓国経済を多角化し活性化させる重要な市場セグメントとしてハラル市場とイスラム金融が注目されはじめている。
香港やシンガポール、日本もイスラム金融市場への参入を試みており、韓国の首都ソウルは東アジアにおけるイスラム金融のハブとなるべく、自国のイスラム市場での競争力を高めようとしている。
韓国の金融規制機関である金融監督院の金鍾昶氏は、国際金融市場におけるイスラム金融の重要性を認識しており、政府も率先してイスラム金融を促進する意向を示した。
2007年に発生した世界金融危機を通じて、金融サービスと実体経済を切り離した従来型のデリバティブが国際金融システムの不安定化に繋がるとし、巨大なイスラム金融市場にこれらの不安定化の解決の鍵を握る可能性を見出している。
2014年3月には、中央銀行である韓国銀行が、イスラム金融の基準設定団体であり金融規制機関のイスラム金融サービス委員会 (the Islamic Financial Services Board: IFSB) に加盟した。
マレーシアに拠点を置くイスラム金融サービス委員会によって発行される指針は、ムスリムが多数派を占める国の多くの金融機関で用いられており、今後更に新しい市場においても取り入れられることが考えられる。
また、韓国輸出入銀行 (South Korea’s Export-Import Bank of Korea) は、未だ市場参入には至らないものの、マレーシアでイスラム債を発行できる証券事業を既に始めている。
韓国財閥 (チェボル) であるLG グループ (Lucky Goldstar) 、サムスン、韓進グループ (Hanjin Group) はロンドンのムラバハを過去に利用したことがあり、GS カルテックス (GS Caltex) 、大韓航空 (Korean Air) 、ヒュンダイ (Hyundai) 、サムスン (Samsung) 等の韓国企業はスクークによる資金調達を視野に入れている。
一方で、スクークの奨励につながる租税特別措置法 (Special Tax Treatment Control Act: STTCA) が未だ承認されていないことが、韓国国内におけるイスラム金融の発展の妨げとなっており、韓国のイスラム金融従事者の間では一日も早い導入が望まれている。
-編集後記-
韓国は、他国で広く受け入れられる自国のハラル認証制度を持っていない点で、日本と類似していると考えられる。
しかしながら、韓国は政府主体でアラブ首長国連邦のエミレーツのハラル認証制度を取り入れる等、政府が積極的にイスラム市場へ自国を参入させようとしている動きが見られる。
日本では、複数の企業が既にイスラム市場へ目を向けてハラル認証の取得等を行っているものの、それに対する政府の支援が殆ど見られないのが現状だ。
また、韓国はイスラム市場の台頭を受けて、イスラム金融市場にも大きな可能性を見いだしているが、日本の金融業界では未だイスラム金融に目を向けているものは少ない。
韓国が東アジアにおけるイスラム金融のハブとして確立する前に、日本の金融業界もイスラム金融市場をマーケットとして取り入れる対策が必要となってくるだろう。
以上
※本レポートは、Hopewill Group (Holdings)Ltdのメールマガジン「イスラム&MENASA市場」より一部修正のうえ、転載しています。
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