2015.10.07
- その他のアジア【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第9回 「中国のハラル市場に向けた取り組み」
- 【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第9回
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中国のハラル市場に向けた取り組み
イスラム教は中国で1400年以上もの歴史を持つ宗教であり、特に中国北西地域で広く信仰されている。
国家宗教事務局によると、中国には現在2300万人ものムスリムが生活しており、人口の1.5~2%を占めている。
中国北西部の寧夏回族自治区・甘粛省・新疆ウイグル自治区・青海省に多く暮らし、その数は1800万人以上であり、中国全体のムスリム人口の80%にあたる。
中国のムスリムの間では厳格な宗教的慣習が実行されており、ムスリム市場、特にハラル認証取得食品へは大きな需要がある。
今回は、自国のハラル製品を国外で展開するための中国の取り組みを紹介する。
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中国政府の取り組み
中国の食肉業界がハラルミートをグローバルに展開しようとしていることを受けて、中国政府は寧夏省の首都である銀川市において、様々な取り組みを実施している。
ハラル食品工業団地を備えるとともに、ハラル専用の貿易・流通センターやイスラム金融センターも設ける予定である。
将来的には現地の大学においてアラビア語習得のためのプログラムを開講し、国際的なハラル認証機関を銀川市に設置することが決定されており、現地ハラル食品生産者の海外進出を後押しすることになるだろう。
中国のハラル貿易
中国は現在、中東地域との貿易関係を強めている。
日用品や小物で有名な浙江省義鳥市には多くのアラブ諸国からのバイヤーが訪れる。
義鳥市の輸出額の50%は中東地域向けの輸出が占めており、青海省と連携して、ハラルミートとともに日用品や小物も中東へ輸出する取り組みも行っている。
また、北京市は毎年9月に中阿博覧会 (中国・アラブEXPO) を開催しており、昨年度寧夏回族自治区で行われた博覧会には、ヨルダン国王のアブドゥッラー2世 (Abdullah at-Tani bin al Husayn) やバーレーンのハマド・ビン・イーサー・ハリーファ国王 (King Hamad bin Isa Al Khalifa) といった中東地域の要人が訪れている。
ASEANとの自由貿易協定も中国のハラル製品の輸出を促進しており、インドネシア、マレーシア、ブルネイにおける巨大なハラル市場への参入を手助けしている。
また、中国のハラル認証はクアラルンプールとの相互認証を獲得していることから、マレーシアへの輸出を積極的に行っている。
マレーシアとの連携
マレーシアは、ムスリムの間で広く認知される世界的なハラル認証機関であるJAKIMを有するとともに、ハラル商品の開発を政府が支援している唯一の国である。
また、国内には23のハラル工業団地を設けており、ハラル市場の成長に大きく貢献している。
巨大なハラル市場に対しての体制をより一層強化するため、マレーシアのハラル産業開発公社本部長のSyaifuZafni Aziz氏は、中国と共同で取り組みを行うことを強調している。
農林水産物の巨大な生産者である中国と、ハラル市場に関するノウハウを備えるマレーシアが協力して、中国を2020年までに国際的なハラルのハブとすることを目標にしている。
また、両国は80%まで拡大したハラル市場における需給ギャップの解決にも取り組む意向である。
現在、ハラルフードや飲料の需給ギャップは3570億米ドルの83%、ハラル化粧品は460億米ドルの82%であることに対し、ハラル医薬製品の需給ギャップは800億米ドルの98%と大きな需給の格差が見られている。
編集後記
中国は、国内のムスリムや中東のムスリムに向けたハラルフードの提供に積極的に取り組んでおり、現在ハラル市場におけるグローバルシェア獲得を目指している。
しかしながら、中国のハラル認証はムスリムの間での認知度が高くなく、現時点における国際的なハラル市場への参入の妨げとなっている。
これを受け、中国政府は中東を中心とした地域へのハラル製品の輸出を活発化させるため、ハラル食品工業団地やハラル専用の貿易・流通センター、イスラム金融センターを設ける姿勢を示した。
また、ムスリムから高く信頼されるマレーシアとの連携は、未だハラル市場におけるプレゼンスの確立に至らない中国の立場からすると、自国のハラル製品の信頼性を向上させる大きな機会にもなるだろう。
今後益々中国製のハラル商品の展開が期待されることとなる。
日本も中国と同様に、ハラル認証がムスリムの間であまり受け入れられていないことが、自国ハラル製品の海外展開の妨げとなっている。
一方、マレーシアのJAKIMやインドネシアのMUIといったハラル認証の取得には高いコストを要し、一企業で対応することは困難なことから、政府や行政機関からの支援が今後の日本製ハラル商品の海外展開において重要となる。
中国は既に日本に先駆けて国際的なハラルに向けた取り組みを開始しており、日本がこのまま出遅れるとすれば、ハラル市場におけるグローバルシェアは中国に先取りされることになるだろう。
以上
※本レポートは、Hopewill Group (Holdings)Ltdのメールマガジン「イスラム&MENASA市場」より一部修正のうえ、転載しています。
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