2015.10.01
- その他のアジア【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第3回 『ミャンマー:労働法制の近時の動向』
- 【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第3回
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本レポートは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター「MHM Asian Legal Insights 第45号(2015年9月号)」より、その内容の一部を転載しています。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
ミャンマー:労働法制の近時の動向
~最低賃金額の決定、店舗及び商業施設法・工場法改正案の公表、給与支払記録の作成~
ミャンマーにおいては、当局による労働法関係の新たな規制の整備や、現行法の改正の動きが近時活発に見られるところです。そのうち、以下、特に重要と思われる事項についてご紹介いたします。
1 最低賃金額の決定
労働者の最低賃金については、最低賃金の決定に関する国家委員会が最低賃金額の提案を公表していましたが、同委員会は、2015年8月28日付の通知において、当初提案のとおり、1時間450チャット(現在の為替レートで約42円)、日給(8時間労働の場合)3,600チャット(現在の為替レートで約338円)と決定したことを公表しました。
上記最低賃金の定めの適用対象についても、当初提案どおりの決定がなされており、業種や勤務地域、職種を問わず同様に適用があるとする一方で、雇用する労働者が15人以下の場合及び家族経営事業の場合は適用対象外とされています。
2 店舗及び商業施設法・工場法改正案の公表
2015年8月24日、店舗及び商業施設法(Shops and Establishments Act)及び工場法(Factories Act)の改正案が公表されました。
一般的なオフィスワーカーについては前者、工場労働者については後者がそれぞれ適用されることが想定されています。
これらの法律の改正は労務管理に大きな影響を与えることが予想されることから、その動向には留意が必要です。
今般公表された主な改正提案は以下のとおりです。
(1)店舗及び商業施設法
時間外労働に関する規制として、現行法上は、年間60時間までとの制限が置かれていましたが、改正案では、週12時間まで(特別な事情がある場合には週16時間まで)と変更することが提案されています。
(2)工場法
女性保護の観点に基づく規定として、現行法における一定の危険な業務への従事禁止等に加え、改正案では、妊娠中の女性労働者について、軽作業のみを割り当てることとし、時間外労働を行わせることを禁止する等、女性労働者の権利をより手厚くする手当が提案されています。
3 給与支払記録の作成
労働雇用社会保障省(The Ministry of Labour,Employment and Social Security)は、2015年8月28日付通知において、各雇用者に、同年9月1日以降、給与支払記録(salary registration book)の作成を義務付ける旨を公表しました。
同通知によれば、給与支払記録のサンプルは各労務事務所において入手可能とされています。
弊職らが入手したサンプルによりますと、給与支払記録に記載すべき事項として、各労働者の氏名や雇用開始日、役職等の他、基本賃金額、当月における時間外労働時間並びに時間外労働賃金額、各種手当の金額、控除額(社会保障保険料等)、総支給額及び給与支払日が挙げられており、毎月の記録には雇用者と各労働者がサインすることが予定されています。
この点、労働者への給与の支払に当たって給与明細を発行している場合、ほぼ同様の事項が給与明細上に記載されていることが一般的であるかと思われます。
その場合、給与明細の写しを保管することで足りるのか、それとも上記サンプルに則った記録を別途作成する必要があるのか、については引き続き確認が必要です。
なお、労務事務所に確認したところによれば、この給与支払記録は特に当局に対して提出が求められるものではないものの、各事業所において作成・保管が求められるものであるとのことです。
以上
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- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 作成