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2015.09.01

その他のアジア【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第2回 『ベトナム:公開会社に対する外資出資割合規制が原則撤廃へ』
【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第2回
本レポートは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター「MHM Asian Legal Insights 第44号(2015年8月号)」より、その内容の一部を転載しています。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。


ベトナム:公開会社に対する外資出資割合規制が原則撤廃へ

現在、ベトナムでは、「ベトナム証券市場における外国投資家の出資比率に関する決定」により、公開会社※1に対する外資出資割合は49%が上限(「49%ルール」)とされています。
このたび、証券法の施行細則を変更する新たな施行細則(Decree 60/2015/ND-CP、以下「Decree 60」といい、それによる変更後の証券法施行細則を、以下「本 Decree」といいます。)が公布され、これにより49%ルールは廃止され、原則として、公開会社に対する100%外資の出資も可能となりました。Decree 60は2015年9月1日から施行される予定です。
ただし、以下の例外もあるため留意が必要です。

1 条約及び関連法規による例外

ベトナムが加盟国である条約の中で外資出資割合(その定義については後述します。)に関する規制がある場合又は投資法若しくは関連法規の中で外資出資割合に関する規制がある場合、当該規制が優先します。
したがって、例えば、WTO加盟文書※2によれば、道路輸送サービスのうち貨物運送については51%が外資出資割合の上限とされているため、貨物運送業を営む公開会社に対する外資出資割合の上限も51%となります。
なお、公開会社が複数のビジネスを行っている場合には、外資出資割合規制がもっとも厳格なビジネスが当該規制の基準となります。
したがって、例えば、WTO加盟文書によれば、道路輸送サービスのうち貨物運送についての外資出資割合の上限は上記のとおり51%とされ、他方で旅客運送についての上限は49%とされているため、貨物運送業及び旅客運送業のいずれも行う公開会社に対する外資出資割合の上限は49%となります。

2 条件付投資分野に属する業種に関する例外

条件付投資分野に属するビジネスを行う公開会社に出資する場合であり、かつ、当該ビジネスへの外資出資割合に関する明確な規制が存在しない場合には、外資出資割合の上限は49%になるとされています。
もっとも、現時点では、外資出資割合に関する明確な規制が存在しない業種としてどのような業種が含まれるかについては必ずしも明確ではありません。
この点、Decree 60の作成に携わった国家証券取引委員会(The State Securities Commission)の担当官によれば、現在、計画投資省(The Ministry of Planning and lnvestment)が外資出資割合に関する規制が適用される条件付投資分野の業種リストを作成しているとのことであり、このリストにおいて外資出資割合に関する明確な規制がある業種及び明確な規制がない業種が明らかにされることが期待されます。

3 外国投資家の定義

本 Decreeでは、「外国投資家」を①外国籍を有する個人及び②外国の法律に基づいて設立され、ベトナムにおいて投資及び/又は事業を行う企業と定義した上で、「外資出資割合」を、外国投資家及び外国投資家が51%以上の定款資本を有する企業の保有する議決権の合計と定義しています。したがって、外国投資家が51%以上出資するベトナム企業が公開会社に出資する場合においては、当該出資部分は「外資出資割合」に算入されることになります。また、外資出資割合の算定は議決権を基準とすることが明確にされたため、無議決権株式であれば本 Decreeに基づく外資出資割合規制は適用されないことになるものと思われます。

なお、新投資法(2015年7月1日施行)によれば、外国投資家が51%以上の出資を行うベトナム企業が51%以上出資する子会社(外国投資家から見れば孫会社に相当)であっても、いわゆる外国投資企業(FIE:Foreign lnvested Enterprise)に該当し、新投資法に基づく投資手続を行う必要があります。しかしながら、本 Decreeでは、当該子会社(外国投資家から見れば孫会社)による出資が「外資出資割合」に算入されるかについては必ずしも明らかではありません。この点については、新投資法との整合性も踏まえ更なる細則の制定が待たれます。

以上のとおり、49%ルールが原則として撤廃されたものの、条件付投資分野に属する業種に関する外資出資割合や外資出資割合の計算方法等についてはいまだ不透明な部分もあるため、今後の動向を注視する必要があります。

以上

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※1 ここでいう公開会社とは、以下の①~③のいずれかに該当する株式会社を指します。
① 株式の公募(Public Offer)を行った会社
② 株式を証券取引所(Stock Exchange)又は証券取引センター(Securities Trading Center)に上場している会社
③ 100名以上の株主(ただし、機関投資家を除きます。)が存在し、かつ、払込済設立資本が100億ベトナムドン(現在の為替レートで約5,600万円)以上の会社

※2 ベトナムではWTO加盟文書がそのまま国内法としての効力を有する扱いになっています。

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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  作成

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