2015.08.20
- その他のアジア【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第1回 『インドネシア:外国人雇用手続に関する新規則の制定』
- 【アジア】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第1回
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本レポートは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター「MHM Asian Legal Insights 第43号(2015年7月号)」より、その内容の一部を転載しています。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。
インドネシア:外国人雇用手続に関する新規則の制定
~外国人雇用に関する新たな要件が追加に~
2015年6月29日、従前の規則(労働移住大臣規則2013年第12号(本レター第26号参照))を廃止する形で、外国人雇用の手続に関する新たな規則(労働移住大臣規則2015年第16号、以下「新規則」)が制定され、同日から施行されています。
新規則により、外国人雇用に関する厳しい要件がいくつか導入されましたが、その中でもとりわけ重要と思われる以下の3点をご紹介いたします。
1 外国人労働者1名当たりのインドネシア人労働者雇用比率の明文化
新規則において、雇用主は、外国人労働者を1名雇用するにつき最低10名のインドネシア人労働者を雇用しなければならないものとされています。
従来は当局の裁量により、インドネシア人労働者の雇用比率がケースバイケースで定められていたところ、新規則により、雇用比率が明文化されたことになります。
もっとも、当該外国人労働者が取締役・コミサリスの地位にある場合、緊急性を有する業務のための雇用の場合、一時的な業務のための雇用の場合等は、上記比率要件は適用されないものとされています。
2 非居住外国人取締役・コミサリスについてのIMTA取得
新規則では、インドネシア非居住の外国人取締役・コミサリスのために雇用主が就労許可(IMTA)を取得することを義務付けているとも解釈され得る規定が設けられています。
近時、労働当局がこのような指導をしている事例は、しばしば見受けられており、新規則は、そのような実務の運用を明文化したものと推測されます。
一方で、規定が必ずしも明確ではない点もあることから、労働当局による今後の運用を注視する必要があります。
3 一時的業務のためのRPTKAびIMTAの範囲の拡大
外国人雇用のためには、雇用主はRPTKA(外国人雇用計画書)を作成し、IMTAを取得する必要がありますが、新規則の下では、一時的業務のためのRPTKA及びIMTAが必要となる業務の範囲が拡大しました。
具体的には、外国人がインドネシアでセミナーを行う場合や、インドネシアに所在する駐在員事務所等における会議に出席する場合にも、雇用主は一時的業務のためのRPTKAを作成し、IMTAを取得する義務を課されていると解釈され得る規定が設けられています。
従前は、外国人がこれらの活動を行うためには、到着ビザ又はビジネスビザを取得すれば足りるものと一般的には考えられていたところ(別途RPTKAの作成・IMTAの取得は不要)、新規則による上記制約は、従来からの実務に変更をもたらす可能性のあるものとして懸念されています。
新規則は、外国人の雇用に関する重要な規則である一方で、施行からまだ日が浅く、解釈上疑義のある規定が散見されるように思われることから、今後の議論の進展や当局の運用・執行の実例を注視する必要があり、新たに外国人労働者をインドネシアに派遣する場合には、専門家にも相談することが望ましいと思われます。
以上
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- 森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ 作成